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ヒップホップで社会を生き抜く! 第19回

韓国系アメリカンラッパーのパイオニア、ダムファウンデッドがアジアの子供たちに与えた“自信”

2023.05.20 17:30

出典:https://www.facebook.com/dumbfoundead/

2023.05.20 17:30

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ロサンゼルスを拠点に活動する韓国系アメリカンのラッパーDumbfoundead(ダムファウンデッド)。ラッパーとして以外にも俳優、コメディアン、ポッドキャストのホストなど、多岐にわたって活躍する彼だが、アジア人が極めて少なかったヒップホップ業界で、道を切り開いたパイオニア的な存在としても知られている。「ヒップホップで社会を生き抜く!」第19回では、ダムファウンデッドと彼の功績を紹介したい。

DFD – ARE WE THERE YET

ダムファウンデッドは1986年にアルゼンチンで生まれ、3歳のときに母親に連れられ不法移民としてアメリカに入国した。1歳の妹と共にメキシコの国境を乗り越え、ロサンゼルスのコリアタウンに移住した彼は14歳のときにラップを始める。彼はロサンゼルスのオープンマイクシーンに頻繁に顔を出すようになり、特に数々の凄腕MCを輩出したオープンマイクワークショップ「Project Blowed」にて頭角を表す。その後、ロサンゼルスだけではなく全国のバトル・ラップ大会に参加をし、コミカルなパンチラインでバトル・ラップファンの間で人気を博した。

彼の功績の一つとして、今では世界的スターのアンダーソン・パークを活動初期にサポートし、メンタリングをしたというものもある。アンダーソン・パークは、バトルラッパーとして人気を博していたダムファウンデッドとコリアタウンで出会い、インタビューでは「ダムファウンデッドは、最初に俺を信じてくれた人だ。息子も家族もいる状態で、スタジオ機材も、車も、何も持っていなかったとき、彼はコリアタウンのキングとして俺を迎え入れてくれたツアーにも連れて行ってくれたし、インディペンデントアーティストとして活動する方法も教えてくれた」と語っている。

Anderson .Paak – Fun With Dumb – Ep. 51

ダムファウンデッドは今ではアジア系ヒップホップを語る上では欠かせないレーベル〈88rising〉でも一役を買っている。彼は楽曲「It G Ma」で大ヒットしたキース・エイプを〈88rising〉に紹介しており、それがきっかけとなり、レーベルの創設者ショーン・ミヤシロによってワカ・フロッカ・フレイム、エイサップ・ファーグ、ファーザー、ダムファウンデッドが参加した「It G Ma」のリミックスが実現した。

また、エミネムがプロデュースしたバトル・ラップについての映画『Bodied』にも出演し、インディペンデントに道を切り開いてきたダムファウンデッドだが、アメリカで活動するアジア人ラッパーに多大な影響を与えている。彼は楽曲「Safe」のMVでもアジア人が映画の主演に起用されないことについて風刺しており、その表現方法は大きな話題になった。

Dumbfoundead − Safe

今では『Everything Everywhere All at Once』や『Crazy Rich Asians』など、アジア人による映画が評価をされているが、彼は米国のエンターテインメント業界においてアジア人が少ないことに対して度々語ってきた。彼は、エンターテインメント業界における有色人種の少なさは、多くの子供たちの「自信」にも影響していると2017年のインタビューでは語っていた。

現代に生きる移民としては、変な感情がある。俺は韓国人とメキシコ人が半々という、ロサンゼルスのコリア・タウンで育っているから、小さい頃はコミュニティからの心理的影響やプレッシャーを感じなかった。俺は育った環境のおかげで、“コリアン・アメリカン”として自信を持てるようになった。でもアメリカ全国をツアーするなかで、“自分はコミュニティの部外者だ”と感じているアジア人の子供たちも多く見てきた。俺がライブをすると、“こんなにステージで自信を持って最高のパフォーマンスをするアジア人は初めて見た!ありがとう!”って言われたりするんだ。

ツアーをしているうちに、“声なき人”がどれだけいるかを知った。中西部とかに行くと、街にアジア人の子供が1人しかいなかったりするんだけど、そのような子供たちには、ロールモデルになるヒーローがいないんだ。もちろんテレビも映画も、音楽業界も徐々に変わってきている。徐々に色んな人たちがエンターテイメント業界で活躍できるようになっている。その変化は見えてきているけど、少し前までは有色人種がエンタメ業界で活躍できないという現実があった。だからテレビとかで、そういう人たちが活躍しているのを見ると嬉しいんだ。

アメリカ国内のメディアでエンターテインメントの分野で活躍しているアジア人が少ないため、“憧れ”となるヒーローを見つけることができないアジア人の子供たちが多いと語るダムファウンデッド。1990年代後半〜2000年代にロサンゼルスで育った筆者の個人的な経験としても、当時は映画の主演やポピュラー音楽でアジア人を見ることは滅多になかったため、子供の頃は格闘技を取得するか、裏方としてでないとエンターテインメントに関われないと“勘違い”をしていた。あまりにもアワード賞などでアジア人を見ることがなかったので、表に出るのは難しいと勝手に信じ込んでしまっていたのだ。

Dumbfoundead – Every Last Drop [OFFICIAL MUSIC VIDEO]
Dumbfoundead – Harambe (Prod By: Getter)

また、彼はヒップホップにおいてそのような内容をラップし、ポジティブな影響を与えることが重要だとも語る。

「全てのアーティストにとって、“作品”としてのヒップホップが“音楽”より大きな意味を持つ瞬間がある。多くの人たちに作品が聴かれたとき、自分がやっている音楽が、単に“上手いラップ”をすることよりも重要だと気がつく。俺はそれを感じたとき、自分のルーツやカルチャーから逃げ出すことはやめた。昔はアジア人であることを口にしたくないときもあったけど、自分が本当に何者なのか、気がついたんだ」

作品として意味を込めたヒップホップが、音楽そのものよりも大きくなる瞬間があると語っているが、彼は2017年の楽曲「Every Last Drop」でも「俺はいつの間にか世代の声となっていた。最初は有名になって女にモテればいいと思ってた」とラップしている。

ダムファウンデッドは最近ではあまり音楽をリリースしていないものの、アメリカで活躍するアジア人にフィーチャーを当てていくポッドキャスト「Fun With Dumb」を更新しており、ヒップホップという形ではなくともルーツを世に紹介している。

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ダムファウンデッド

アーティスト情報

ロサンゼルスを拠点に活動する韓国系アメリカンのラッパーDumbfoundead(ダムファウンデッド)。ラッパーとして以外にも俳優、コメディアン、ポッドキャストのホストなど、多岐にわたって活躍する。アジア人が極めて少なかったヒップホップ業界で、道を切り開いたパイオニア的な存在としても知られている。

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