UK最高峰ロックバンドの9年ぶり来日公演を独自レポート
ただ“ロックンロール”だけが在る奇跡──アークティック・モンキーズが巻き起こした次元違いの狂騒
2023.03.16 17:30
アレックス・ターナー(アークティック・モンキーズ)2023年3月12日東京ガーデンシアター公演より
2023.03.16 17:30
デビュー曲から最新作までキャリアを総決算
そして本編終盤、再び4人のみの編成に戻ってプレイされたのは衝撃のデビュー曲「I Bet You Look Good on the Dancefloor」であり、そこからの本編ラストは最新作より「Body Paint」とまさにキャリア総決算とも言えるセットリストを締めるに相応しい2曲をセレクト。特に「Body Paint」はこれまた原曲から大きくアレンジが加えられており、冒頭の霞がかったような音色のリフはストレートなピアノの音に置き換わり、アウトロは爆音の長尺ジャムセッションが追加されていた。マットは激しくドラムを打ち鳴らし、終始ほぼ不動のニックもピッキングに熱を込めているように見える。対照的に激しく髪を振り乱すジェイミー、そしてアレックスは大きなストロークでジャムを興奮気味に扇動している。気付けばセットした前髪が崩れてしまっているが、今宵を思う存分楽しんでくれている何よりの証拠であろうと思うと、何だか嬉しくなってしまった。
アンコールを切望するオーディエンスに応え、程なくしてステージに舞い戻るメンバー。アンコールはこちらも最新作より「Big Ideas」が演奏される。筆者が『THE CAR』でもっとも好きな楽曲であり、本記事の冒頭で“静謐であり耽美的な匂いも感じられた”と表現したのも実はこの曲の存在が大きい。しっとりとした歌声に心酔するオーディエンス。いつまでもこの時が続けばいいのにと思っていたのは筆者だけでは無いはずだ。
しかしライブはもう終盤。近年はアンコールでのプレイが定番となっている「505」は常にセットリストの重要な位置を担ってきた楽曲である。後半のエモーショナルさを増していく展開がもうすぐ終わってしまうであろう今宵のステージと相まって、たまらなく切ない。曲終わりの余韻もそこそこにアレックスが“Tokyo! Are You Mine?”と一言。力強いドラムのフィルインから強烈な単音リフが鳴らされる。そう、この曲が来てしまったら、もうライブは終わりだ。「R U Mine?」である。ヘヴィなリフのうねりにただ身を任せるしかないオーディエンスの狂騒は正に「R U Mine?」に対して「I Wanna Be Yours」と応えているように思えた(アルバム『AM』ラストナンバーのタイトル)。タイトな演奏とルーズな歌唱が織り成すロックンロールの黄金比を完膚なきまでに叩き付け、ライブは終了。そのロックンロールは全編に渡ってMCらしいMCをしなかったどころか、最後の最後まで“We Are Arctic Monkeys”と自らを名乗ることすらなくステージを降りていった。
同期や映像(サイドスクリーンはあくまでライブ中のメンバーを映す事に終始していた)や照明、そしてMCに至るまで徹底的なシンプル化が成されたステージで繰り広げられていたのは、ただひたすらにヒリヒリとした”ロックンロール”そのものであったのだ。
随所でスティック回しなども見せていたマット。「I Bet You Look Good on the Dancefloor」での甲高い”You’re Dynamite!”のコーラスが聴けたのは皆嬉しかったのでは?
そして本当に不動だったニック。ではあるもののその丸くて深いベース音がどれだけの場面で効果的に鳴らされていたか。ラストに演奏された「R U Mine?」も実はアレックスとの連名で制作クレジットに名を連ねていたりもする。
ギターの弾き方やステージアクションも然りだが、曲によってはキーボードを担当するなど逆に動きまくりだったジェイミー。ギタリストらしい奔放な振る舞いが実に華やかであった。
そしてアレックスは基本ビザールギター(昔作られていた変わった形状のギター)ばかり使っていたが、「Do I Wanna Know」で使用していた卵形の12弦ギターはアンプで有名なVOX社のもの。
余談ではあるが上記、どうしても書き添えておきたいメンバー個人に対するメモである。本当に最高の体験であった。ロックンロールが好きで本当に良かった。名乗ることさえしなかったロックンロールバンドに、心からの感謝と「I Wanna Be Yours」を──。
セットリスト
ARCTIC MONKEYS JAPAN TOUR 2023
2023年3月12日(日) 東京ガーデンシアター
1. Sculptures Of Anything Goes
2. Brianstorm
3. Snap Out Of It
4. Crying Lightning
5. Don’t Sit Down ‘Cause I’ve Moved Your Chair
6. Why’d You Only Call Me When You’re High?
7. Four Out Of Five
8. Arabella
9. From The Ritz To The Rubble
10. Cornerstone
11. There’d Better Be A Mirrorball
12. Do I Wanna Know?
13. Do Me A Favour
14. One Point Perspective
15. Teddy Picker
16. Pretty Visitors
17. I Bet You Look Good On The Dancefloor
18. Body Paint
EN1. Big Ideas
EN2. 505
EN3. R U Mine?