2023.01.27 19:00
多くの話題作でメインキャラクターを演じるなど大活躍中の声優・高橋李依が、歌手として2nd EP『青を生きる』をリリースした。前回のインタビューでは歌手デビューを決断するまでの葛藤、新しい挑戦を模索する気持ちを希望とともに届けてくれたが、今作『青を生きる』はその全てが結実したと思える作品だ。
さまざまなジャンルからアプローチされた豊かな楽曲群で構成され、その全ての曲で複雑な心情を抱えた主人公が描かれており、6曲入りながら1枚のフルアルバムを聴いたような充実感に浸ることができる。さらには昨年10月にリリースされたシングル「共感されなくてもいいんじゃない」で巡らせた伏線も回収するなど、人気声優として多忙な日々を過ごしながらも今作の準備に懸けてきた本気ぶりも見事に証明している。そんな快進作を完成させ、2月26日に1stライブを控えた彼女に、歌手活動でのひとつのターニングポイントを迎えている現在の心境、そして今作の魅力をたっぷりと語ってもらった。
あえて歌声を統一させようとしなかった
──1st EPから1年半くらい経過しているんですね。前作と比べて今作はいかがですか?
そうですね。1st EPを録ったころ、キャラソンとしての歌声から「これからもっと高橋李依の歌声を探っていこう」という話をディレクターさんとしていたんですが、今回の2nd EPはそこを特に気にせず歌えていたので、いつの間にか私ってこう歌いたいっていうのがあったんだなと感じました。
──今までは、キャラクターを自分の中に降ろして、という流れだったんですか?
普段のキャラソンでは、そのキャラが声を発しているように感じられるかどうかをメインの判断材料としていたので、1st EPを作りながら「高橋李依らしさって何だろう」と探していたんです。そして今回の2nd EPでは、あえて歌声を統一させようとしませんでした。1曲目の「共感されなくてもいいじゃない」と2曲目の「最つよワタシイズム」の歌声はたぶん違って。アーティストをやるなら声色って変えちゃいけないのかなと思っていたんですけど、変わるなら変わってもいいんじゃないかぐらいの、ちょっとした挑戦? 遊び? みたいな感覚が生まれたのかもしれません。
──その自分なりのやり方を構築するに当たって、レコーディングなどでのルーティーンはありますか? 例えば、そのとき出演している作品のキャラクターを追い払う作業だったり。
実は最近、演じさせていただくキャラクターがあまりにも魅力的で、そういうキャラクターをやらせていただいている自分が、家に帰るとなんでもない人間になっちゃうのが、すごく寂しくて。そういう瞬間があったりするから、逆に「アーティスト高橋李依になりたい」というか、「何でもない自分から逃げたい」はちょっとあるかもしれないです。不思議ですね(笑)。でも今回、自分を凡人だと認める曲をひとつ作っていただいたんです。
──卯花ロクさん提供の楽曲ですよね。
そうです。「0のひと匙」という曲に詰め込んでいただきまして。
──いわば卯花ロクさんとの共作的な側面もあったということですか?
そうですね! 最初にこのメロディーを聞かせていただいてから、「なんていいメロディーなんだろう」って卯花ロクさんが作られた曲だと知らずに口ずさんでいたんですよ。それから1年ぐらい経ったころに、「このメロディーで次の曲、卯花ロクさんにお願いしましょう」ってなって、えー!みたいな(笑)。当時仮のフレーズに「アーメン」っていう言葉が入っていて、曲に対して懺悔という印象が残っていたので、私の中のこの感情を歌ってほしいと思いお手紙を書かせてもらって。「実は私、凡人であることを認めるのが怖いんです、苦しいんです。卯花ロクさんの視点を通してどうか気持ちを掬って、救っていただけませんか」みたいなお手紙を書いたら、「掬う」っていう言葉も「ひと匙」というところで汲んでくださって。小説にも落とし込んで、それをもとに曲にしてくださったんです。
──やっぱり小説だったんですね。
元が声優っていうのもあって、そこにいる登場人物の感情を歌にするっていうのはとてもやりやすく、シナリオを頭に思い浮かべながら歌わせていただきました。
──繰り返しが一切出てこない歌詞なので、大きな物語の抜粋みたいな手法を取られたのか、まさにお聞きしたいと思っていました。
そうなんです。「クラス」っていう言葉があるので学生っていうのはわかってもらえると思うんですけど。どう向き合ったのかっていうところもシナリオになっていたため、それぞれの歌詞が自分の中に浸透していたし、自分も一緒に作らせていただいた感じがありますね。
──世界観の大枠を提供したのは高橋さんご本人ということですよね。
そうですね。感情提供みたいな感じですね(笑)。
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