2022.12.26 12:30
2022.12.26 12:30
みんなの道しるべになるようなエンタメを
映像内の漫才が終わるや否や高らかな演奏が響き渡り、スパンコールのブルゾン姿の宮野がステージに登場。歌謡曲とラテンが融合した「行こう!」でさらに場を盛り上げると、「Dream On」など4曲をメドレーで届ける披露する。メドレーのうち「Question」はダンスに徹するなど緩急をつけるというギミックも効いていた。その後も勢いを落とさず突き進み、「EXCITING!」ではダンサーとともにサブステージへ移動し、振り付けを用いて観客と時間を掛けてコール&レスポンスに興じた。
宮野が次で最後の曲である旨を告げようとすると、観客は即座に両手に持ったペンライトを真っ赤に光らせて「×印」を作る。「やめてよ~ それ向けられるのほんと怖いんだよ!(笑) みんなバツやめる!」と呼び掛けると観客は一斉にその手を下ろすといったやり取りも微笑ましい。声が出せない状況でどうにか自分たちの思いを伝えようと知恵を絞る観客たちの姿に、ファンはアーティストを映す鏡であることを実感する。
彼はコロナ禍でのエンターテインメントについて「今まで通りにいかないことをマイナスと捉える必要はないと思う。ピンチのときに芸術やエンタメは進化してきたと思うし、歩みを止めなければそのときならではのハッピーを最大限に届けられる。その幸せな気持ちに間違いはないし、それをみんなに感じてもらえるようにライブを作った」と胸中を明かす。彼が本編最後に選んだのは、「いつかみんなと一緒に歌いたい」「みんなの声はここに届いていると伝えたい」という思いを込め、チームマモのメンバーとレコーディングをした合唱曲「TEAM」。曲中で宮野はステージ裏で支える大勢のスタッフにも歌ってほしいと呼びかけると、ステージの裏からたくさんの歌声が湧いた。観客も声にならない声を彼らの声に重ねる。歌を通じてこの場にいた大勢が心を通わせた瞬間は、とても清らかであたたかかった。
アンコールではトロッコに乗り「Kiss×Kiss」を披露しながらアリーナ席の外枠を1周。曲中で何度も濃厚な投げキスをし、それを直接くらった観客はもれなく次から次へと膝から崩れ落ちる。なんともキュートな光景だ。
ステージに戻った宮野は「今回のライブは“俺のエンタメを見てくれ!”と身体で示すように、全力でパフォーマンスした」と話す。確かにこの日のステージは華やかなレーザーなどが取り入れていたとはいえ、宮野自身や音楽そのものにフォーカスするかなりシンプルなライブだった。さいたまスーパーアリーナという大勢を収容できる広大な会場でそれを実現するのは、長い時間を掛けて己の技術と感性を磨き続けてきた人間でなければ難しい。天性の才能だけでなく経験により培われた実力があり、協力者へのリスペクトを持ち、さらに好奇心を失わないからこそ、彼の理想とするエンターテインメントは出来上がるのだ。「これからもみんなの道しるべになるようなエンタメを目指していく」と晴れやかに告げると、ラストに「MILESTONE」を披露。観客も振り付けとともに身体を揺らしたり、クラップをするなどしてその瞬間を全身で楽しみ、2時間以上にわたるステージは大団円を迎えた。
声優、俳優、アーティストという枠にとらわれることなく、自分自身の可能性を広げ続ける彼は、やはり存在こそがエンターテインメントであるとあらためて痛感する一夜だった。常に上を見て、前を見て、歩みを進めていく──そんな宮野真守の表現者としての矜持は、彼がステージから立ち去る瞬間まで誇り高く瞬いていた。
セットリスト
MAMORU MIYANO ARENA LIVE 2022 ~ENTERTAINING!~ supported by JOYSOUND
2022年12月3日(土) さいたまスーパーアリーナ
1. THE ENTERTAINMENT
2. 光射す方へ
3. Butterfly
4. ZERO to INFINITY
5. LAST DANCE
6. EVERLASTING
7. 透明
8. Never Friends
9. innocence
10. 行こう!
11. メドレー
12. ジャーニー
13. オルフェ
14. EXCITING!
15. TEAM
ENCORE
16. Kiss×Kiss
17. MILESTONE