本間昭光のMUSIC HOSPITAL 第6回 熊木幸丸(後編)
Lucky Kilimanjaroが提唱する“踊る楽しさ”と“楽しく踊れる”ライブ体験
2022.11.30 12:00
本間昭光×熊木幸丸(Lucky Kilimanjaro)
2022.11.30 12:00
脳が良い音を覚えてることが大事(熊木)
本間 ポール・マッカートニーがSHUREのSM58で歌ってて、それでも全然OKだったって。機材とか全然気にしてないんだろうなって。そういうところまでいってる人は、20代の頃とかはものすごくこだわってたからこそ今そうなってるっていうのはあるかもね。
熊木 そうですね。それって脳の知覚の問題だと思っています。良い音を知った人は安い機材でもなんとなく脳が補完できるように音を作れる知覚がちゃんと育っているというか。この前100万円ぐらいのベースを試奏して、「やっぱり全然エンベロープの描き方違うな」というのがあって、その記憶が自分のキックの作りかたにも出てきたりとかしたので脳が良い音を覚えてるって大事だなと思いましたね。
本間 確かに。あと演者だったら指が覚えてるとかね。上手い人は身体と脳が覚えてる音をコントロールして出しちゃうんだろうね。生楽器はもちろんそれあると思うんだけど、電気系でもクリエイトには欠かせないような気がしてて、良い音を記憶するって大事かもしれないね。
熊木 そうですね。なので僕はやっぱりライブをやる以上はライブに行かないといけないなと思っています。家でどれだけライブ映像観ても、ライブの音は聴けないので。脳の知覚的な部分に関しては積極的に吸収しないといけないなと思っています。
本間 洋楽もものすごく勉強になると思う。5年くらいグラミー賞の授賞式を観に行ってて、PAのモニタリングをずっとしてたんだけど、年によって全然違うの。耳を鍛えるならば海外のPAの基準を覚えておくと、自分のPAの人にもフィードバックたくさんできるかもしれないよね。やっぱりライブにたくさん行くって重要かもね。
熊木 自分が体験しないと絶対に発想が出てこなくなっちゃうので、自分の意外なところを見つけるためにもいろんな体験をちゃんとしたいと思ってます。
本間 いいですね。日本の音楽を引っ張っていってください。
熊木 頑張ります。まあでも、「楽しく踊る」っていうのをもっとマジョリティにしたいというか。ダンスミュージックじゃなくてロックミュージックでも本来的には踊れるじゃないですか。音楽って時間的芸術だと思っていて、流れていく空間に対して自分を乗せるという芸術だと思ってるから、そういう面白さをまずはダンスミュージックという主軸を持って伝えたいなと思います。
本間 音楽ってそもそも踊りとセットだからね。
熊木 そうなんですよ。どんな音楽でも、自分の心は時間に合わせて変化していって、それが気持ちいいってなれる文化だと思うので、ソウルフルな質感ももっとみんなが楽しめるように音楽を作りたいなと思います。