2022.10.31 18:00
2022.10.31 18:00
その瞬間思っていることを歌詞にぶつけるスキルがほしいと思った
──今作、ギターとシンセの音色にもこだわりを感じるんですけど、ジャケットのイメージとは遠いくらい都会的なアプローチもありますよね。
KENNY ジャケット感はないかもしれないです(笑)。
AKUN かわいいっすもんね(笑)。
──下支えになっているのがシンセの浮遊感だったり、都会的なアプローチもかなり冴えているなと思ったんですけど、シンセの音の選び方は例えば「Skyscraper」 ではどんな感じでした?
KENNY FX(シンセエフェクト)はAKUNがほぼ作りましたね。
AKUN でもPETEがやったやつもありますね。「Skyscraper」に関しては作曲大詰めの時に作った曲で、僕が結構リードしてトラックを作っていたんですけど、なんかPETEと作りたいなと思ったんです。制作に2人で入った時に、2曲ぐらいPETEがデモで作っていた曲があって、それを僕がデータいただいて調節していった感じですね。
──音が左右に動く感覚はどこで生まれたアイデアなんですか?
AKUN ミックスの時ですね。今まではレコーディングが終わったら後はエンジニアさんに全部任せようって気持ちでいたんです。そうなると、完成形が想像と違う曲もあって。歌録りが終わってからも自分がデータを持ち帰って調整して、ラフ2ミックスを作って、エンジニアさんにこんな感じでというのを渡して、組み立ててもらいました。ゴールが見えているからこそ、シンセの音色を決めやすかったというか、こういうふうに聴こえてほしいというのを自分で作れなかったら、PETEに「こういう音ってどういう風に鳴らしたらいいのかな?」っていう相談ができて、シンセがよく聴こえるようになりました。

──この曲の歌詞はシニカルで皮肉ですよね。
KENNY トラックを聴いてそのままいくと、ポップすぎる曲になるなと思って、メリハリというか、甘辛みたいなイメージで歌詞に着手しました。あと、その時その時思っている気持ちをフルにぶつけたかったんです。Def TechのMicroくんをフィーチャリングした時にレコーディング当日もMicroくんは歌詞を考えていなくて。ラップっぽい曲だったんですけど、本当にその瞬間のよさを垣間見てかっこいいなと思いました。「Skyscraper」はレコーディング当日に歌詞を作ったわけじゃないんですけど、その瞬間の気持ちを入れてみようと思って、富裕層へのアンチテーゼみたいなものがその時のテーマでした。
──紙とペンじゃなくて、肉体的にその場のノリでポンポン出てくるセッションを味わったんですね。
KENNY そうですね。「そのスキルがほしい!」ってちょっと思っちゃったんですよね。
──従来持っているメロウ感と掛け合わせるとより強くなりそうですね。サックスはPETEくんだよね?
PETE そうです。

──マルチプレイヤーがいるのはSPiCYSOLの強みですか?
KENNY いないメンバーの音が鳴ってますってことがないので、音に嘘がなくなりますもんね。
──まさに「いないメンバーも」という点でいじわるな質問になっちゃうけど、「Playback」はスラップのラインがとても印象的ですよね。
KENNY いいベースですよね。
KAZUMA ベースはたしかにいないな、(笑)。ちょっと今の話忘れてもらってもいいですか(笑)。
──ガッツリ書かせていただきます(笑)。その自然体な形も魅力的ですね。このベースラインはどなたが考えてたものですか?
KAZUMA これはみんなで「なんとなくこんな感じ」って言ったのを、サポートベースの方が仕上げた感じですね。
KENNY 基盤はプロデューサーのSUNNY BOYくんが作ってくれました。
KAZUMA ベースラインはKENNYが特に言ってた気がする。
KENNY ディスコっぽくってね。
──循環していくディスコファンクなリズムなんだけど、感じがすごくおもしろいですよね。この曲はBメロの歌詞がいいですよね。スティービー、リアーナ、MJ、スティング。
KENNY 往年のアーティストたちをプレイバックしたいなという。
──これは見事でしたね。ワーナーミュージック勤務の友人がいて、その人がまさに酒を乾杯する時に「俺スピーディー・ワンダーだから」ってよく言っているんですよ(笑)。失笑ですよ(笑)。
KENNY スティービー・ワンダー?
KAZUMA スピーディー・ワンダーだよ(笑)。
──酒をスピーディーに飲んで、カンってやってスピーディー・ワンダーって。
AKUN KENNYがそれ知ってたら、歌詞にしないですよ(笑)。
──ディスコだったり、こういう曲調の背景にあるものなんですけど、《スティービーよりスピーディー》じゃなくて、《スピーディーよりスティービー》だからこそ、ちゃんとクリーンに聴こえる。
KENNY そうですね。そこまでは意識してなかった(笑)。
──想起して聴くのはリスナーの解釈の楽しみだったりしますからね。リズム制作とかKAZUMAくんは楽しかったんじゃないですか?
KAZUMA これはSUNNY BOYくんと一緒にやっていて、打ち込みなんですけど、タムの音を俺が作っているんですよ。タムの素材は1種類で、音程で分けて作って加工してSUNNY BOYくんに渡してフィルを入れてました。基本のキック、スネアはSUNNY BOYくん家に行った時に「こうしましょう」って感じで作っていきましたね。リズム的なギミックはあまりないんですけど、音色にこだわって作りました。
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