2022.10.17 12:00
2022.10.17 12:00
ドレスコーズが8枚目のアルバム『戀愛大全』を完成させた。コロナ禍真っ只中に生み落とされた前作『バイエル』からおおよそ1年と4ヵ月を経て10月19日(水)に発売される今作は、1曲1曲に物語が吹き込まれた“10本の《架空の短編映画》のサウンドトラック”をイメージしてつくられた全10曲のフルアルバム。
「疫病」に加え、世界では「戦争」が勃発した2022年──いわば“非日常”に溢れたこの夏をあえて美しく描くことで、聴く者を“非現実”の世界へ誘う快作を誕生させたドレスコーズこと志磨遼平。ある意味達観の境地から名付けられたタイトル『戀愛大全』が象徴するものとは? その制作の裏側や、「拘り」の一言では片付けられない程巧みな仕掛けなど、聞き手が志磨と旧知の中である庄村聡泰だからこそ語ってくれた今作の“中身”について、じっくりと精読してほしい。
──まず自分の話からしちゃって恐縮ですが、実は大学生のときにライター志望だったこともあって。回り回ってこうなるのかと思っているんですけど、志磨さんもライターの仕事ってされたことありますよね?
たまに『ユリイカ』(月刊芸術総合誌)とかに寄稿するくらいですけども。「澁澤龍彦」についてとか「T.Rex」についてとか、あと「パタリロ!」についてとか。
──それって元々志望していたことだったんですか?
うん、評論みたいなものを書くのはずっと好きでした。小学生のときに読書感想文で最優良賞をもらったくらいだから(笑)。それからもROCKIN’ ON JAPANとかを毎月端から端まで熟読するような子供だったから、ポップスについて思想的にこねくり回して考える癖がついちゃって。それが未だに抜けないのかもしれない。
──でも、最近はそういう書き方をする媒体さんはなくなりましたね。
誰かの新譜がすごく酷評されてるのとか見ないもんね(笑)。
──喧嘩腰のインタビュアーとかもいないですし。
ね、みんなやさしい。喧嘩腰だったのはタナソー(田中宗一郎)さんが最後だな(笑)。
──それで言えば、ドレスコーズって今回もそうだと思うんですけど、特に前作の『バイエル』なんか、もっと媒体がこねくり回していい作品だと思っていて。志磨さんはそういうアーティストだし、舌戦を繰り広げられる人でもあるし。今はつかみ合いの喧嘩になったり、「あの媒体は出禁だ!」ってことに多分ならないじゃないですか。
そういうの、ファンからすると最高に面白いのにね。僕らが10代の頃はまだ音楽雑誌でそういうことがよくあったんですよね。誌面上でミュージシャンとインタビュアーがすごい喧嘩して、その次の号で謝罪文が載るみたいな(笑)。某ミュージシャンがインタビュアーをブン殴る事件とか(笑)。
──そうそうそうそうそうそう。
そういう世界にずっと憧れて育ったから、毛皮のマリーズでデビューした頃はインタビュアーの方に名刺をもらうたびに「わーっ!本物の〇〇さんだ!昔ずっと読んでました!」みたいに僕の方がキャーキャー言って(笑)。
──押し付けこじつけから聞き手の耳も広がるし、ミュージシャンのヒントになったりするパターンもあったりするのにな、みたいなことは思いますよね。
今はミュージシャンがプレイリストを作ってそれをファンと共有する、とかなんですかね? 僕らの頃は、好きなミュージシャンのインタビューの中に出てくる知らない洋楽アーティストを全部メモって片っ端から買う、みたいな感じでした。好きな人が影響を受けたっていうから自分も同じ影響を受けたい!みたいな。ああいう音楽的なバックボーンを掘り下げるインタビューとか今あるんですかね?
──いや、全然聞かなくなりました。聴きこんで、自分の中であれはきっとこうでって説をご本人に言ったところ、全部的を射ないみたいなことがあってもいいと思うんです。音楽って作者の手を離れた瞬間、ユーザーのものになるって考え方としては非常に正しいことでもあって。
僕もそう思います。あなたの捉え方は間違ってますよ、なんて思ったこともない。そこまで深読みしてくださってありがとうございます、という気持ち。
──志磨さんの場合だと、それをそのまま曲にできそうな人でもあるし。
自分で言ってたら世話ないですけど、僕が作る音楽はまあまあ批評的な面が強くて。ただのいい曲、泣ける曲、というよりもこねくり回せば回すほどおもしろい音楽が好きなんです。音楽以外のいろんなカルチャーだったり、今のご時勢だったり、そういったいくつものレイヤーが重なってできてるようなものを好きになるし、自分が作る作品もどうしてもそうなる。「いや特に何も考えてないっす」ってインタビューで言える人にも憧れるけどね。
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