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INTERVIEW

いまホットな現代アーティストを訪ねる vol.1

ヒップホップのリズムを彫刻する──アーティスト・小畑多丘インタビュー

2022.09.28 12:30

2022.09.28 12:30

コロナ禍で見つけた「自分にしかできないドローイング」のありかた

ロンドンのスタジオには木彫道具が全部置きっぱなし。アートフェアも開催中止が決まり、ぽっかり穴が空いてしまった時に、このまま滞在制作を続けてもいいと言ってもらえて。木彫の道具がないので、そこでさらにキャンバス作品を描いていくうちに、「ダンサーであり彫刻家でもある、自分にしかできないドローイングのあり方」がさらに展開できたと思います。

このように絵の具を量として捉えると、ドローイングも彫刻的になるけれど、さっき言ったように木彫とドローイングはかかる時間が全然違います。木彫は論理的に考えながら慎重に手を動かすけれど、ドローイングはとにかく何も考えずに、ダンスをする時のように体で思考するような感じ。そうすることで、動きにフォーカスした躍動感を表現するものになっています。

自分が「形のある音」になる事で音を聞かなくても勝手にリズムを作り描いていくというスタイルなので、ノリ重視で描いてはいるけれど、音楽を聴きながら描くのは違うなと思っていて。音楽をかけるとそっちのノリにつられて勝手に体が動いちゃうし、音楽に対する絵になりがちだから。

異なるベクトルのものが再び交わった時、新しいものが生まれる

緻密さ重視の彫刻とノリ重視のドローイングは、真逆の関係。別の人格のようなものだからこそ、それぞれの特質を別々に伸ばしていき、時が来たら交差させてみることも大切にしています。僕にとって思考と現実に制作されるものは連動していて、両者の行き来を増やすほど交差した時に新しいものが生まれやすいと思っています。

例えばこのキャンバス作品も、彫刻の考え方を反映している

これは2枚で1組の作品なんですが、最初、左側のキャンバスにたっぷりとアクリル絵の具を塗って、その決められた量の中で絵の具の一部を削り取り、そのまま右側のキャンバスに移し、この時自分自身の量の移動もこの二枚のキャンバスの間に不可欠になる。その逆もすることで往復しています。彫刻には、粘土で肉付けしていくような「モデリング」と、木や石を削り取っていく「カービング」の2種類があるけれど、この作品はどちらもやっていることになるんですよ。

他にも、キャンバスの縁の部分まで描き、目線の高さより少し上に作品を飾ることで、「下はどうなっているんだろう?」と鑑賞者が動きます。これは以前PARCELで展示をしていた時に気づいたことなんですが、鑑賞者は彫刻の近くに行くと、「この後ろはどうなっているんだろう?」「別の角度からだとどう見えるんだろう?」とたくさん動くのに、遠くから眺めていると全然動かないんです。これはつまり、彫刻はある一定の近さまで近づくと、鑑賞者を動かすものだと言えます。そこでキャンバス作品でも鑑賞者を動かすものにすればそれは彫刻だと言える。そういう考えも組み込まれています。

これから涼しくなったら、このスタジオで大型の木彫作品の制作が始まります。現代アートの世界にいると、何で自分がこれに反応しているのかに向き合い続けることが求められるけれど、なにより僕自身、そういうことを考えることが好きなので、これからも追求し続けていきたいですね。

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イベント情報

小畑多丘 | Taku Obata Solo Exhibition 「ART AND SNEAKERS」

小畑多丘 | Taku Obata Solo Exhibition 「ART AND SNEAKERS」

2022年9月1日(木)- 9月30日(金)
12:00–20:00

会場:A+S
東京都渋谷区神宮前3-34-10-2F
TEL : 03.5414.1320
OPEN : 12:00-20:00

小畑多丘 | Taku Obata Solo Exhibition 「ART AND SNEAKERS」

Têmporas/テンプラ

Têmporas/テンプラ

会期:
2022年9月22日(木)- 10月29日(土)
17:00–19:00

会場:
Sokyo Lisbon(リスボン ポルトガル)

Têmporas/テンプラ

B BOY 彫刻家

自らもB BOYであり、木彫による人体と衣服の関係性や、B BOYと彫刻を端緒に生まれる空間、動き、重力を追求、彫刻以外のメディアでも精力的に表現し続けている。

※ B BOY (ブレイクダンスをする人)

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