イナズマロック フェス 2022 特集 第1回
西川貴教ロングインタビュー【前編】──イナズマの進化がもたらした変化、滋賀に築き上げたもの
2022.09.10 18:00
2022.09.10 18:00
次へ繋げる準備がかなりできた
──お話伺うと、例えるならUnited Kingdomというか。ここはスコットランドでここはロンドン、もうアイルランドは全然違って、みたいな感じですね。
感じるのは、今は廃藩置県で“県”という区切りになってるじゃないですか。もともと藩だったときはきっとひとつひとつが国だったんですよね。それぞれ文化も芸術も、言語さえも違って。だから方言があって、そういう意味では独立してたから、4方向の独立国の影響をもろに受けてるのが滋賀県。そういう意味でもまとめ甲斐があるというか。こんなに地域のことをやるとは思ってもいなかったんですけど、やると概ね、4つのエリアで起きてることはだいたい日本全国で起きてるいろんなことに繋がってて。いっぺんに全国で起きてるいろんな出来事を経験できてる気がしますね。
──地域性に富むところは世界の縮図がそこに集まりやすいっていう話はよく伺いますけど、まさにですね。
うん。そして毎年やるってことは、開催した当日だけで物事が終わるわけじゃなくて。精算もありますし、なんだかんだ年越えて、やっとひと段落したと思ったら残り半年くらいしかない。
──その頃には全出演者へのオファーを終えてて、なんなら二次交渉に進んでないとってタイミングですよね。
うん。そうなってくるとイベントの中身、運営の根幹に関わる部分を開拓するってのがなかなかできない。走りながらいきなりフォーム変えられないですよね。なんとかえっちらおっちらやってきたんですけど、コロナがあったことで、やむを得ず足踏みしたりスピード緩めたりしなきゃいけなくなって、正直参ったな、と。それでなくても、本当に大手ほどたくさんあるわけじゃない売上をちょっとずつ分配して、来年もよろしくお願いしますって、すがりつくようにやってきたイベントだっただけに、これを3年できないって、もうこれは無理かもなって瞬間も正直ありました。
ただ、続けて欲しいって言ってくださる方がいたし、やるんだったらこのタイミングで運営する側の構造改革も着手しようと。あとは、僕自身もJ-POPとかJ-ROCKから入ってきてるんですけど、その中で比較的早くアニメーションとか、日本のポップカルチャーとご縁があったので、全国のロックフェスになかった要素として、日本が誇るポップカルチャーをイベントに取り込めないかと思ってて。今回のメンツにもそういった彩りが増えてきて、もしかしたらお客様にすぐ「わあ!」って感じてもらえるものではないかもしれないけど、運営の構造改革をしたことで、イベント自体の奥行きを次への伸びしろに繋げる準備がかなりできたと思いますね。
──コロナに直面して一度これはちょっと立ち止まらないといけないっていうときに、西川さんご自身で感じられたのは、俺ってこんな大変なことをやっていたんだ、こんな大きなことをやろうとしていたんだっていう感覚か、それともこれ絶対にやんないと駄目だというような、さらに使命感に駆られたのか。どちらが近かったんですか?
どっちかというと後者に近いのかな。本当にスタートからご覧いただいた方からすると、「よくやってるんじゃないの」なんて言っていただけたんですけど、やっぱり蓋を開けてみると、「滋賀県のイベントなんです」なんて言っていても、結局その近隣エリア以外の人たちからすると、自分のところのイベントじゃないんですよね。これはいかん、我が事になってない、と。
で、とりあえず1回いろんな自治体を回ろうと2日くらいかけて滋賀県のほぼ全部の自治体の市長さんに会ったんです。その年のイナズマはオンラインにしたので、アーティストとアーティストのパフォーマンスの間の時間で毎回市町区村のPR動画を紹介させてもらって。それで少し滋賀に訪れる人が増えて、変化を受け入れてくれるようになった。やっぱり遠くで大きい声で言ってても、こっち向いてくれるか分からないわけですよ。でも目の前に行くと聞いてくれる。こういうことだったのかって。改めて感じたし、続けていくしか埋め合わすことができないんだなって。
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