本間昭光のMUSIC HOSPITAL 第2回 キタニタツヤ(後編)
キタニタツヤが日本で見据える未来、大切にしたい“響き”と世界観
2022.07.12 17:00
2022.07.12 17:00
日本を代表する音楽プロデューサーである本間昭光が、現代のセルフプロデュースに長けた若手アーティストを自身のスタジオに招き、楽曲制作論を中心とした音楽談義を繰り広げる連載コラム「本間昭光のMUSIC HOSPITAL」。
記念すべき第1回は、若手シンガー・ソングライターの筆頭にして、今まさにさらなる進化の真っ只中にいるキタニタツヤ。キタニが持つさまざまな疑問や憧れについて、本間が丁寧に持論を語った前編に続き、後編では本間が思う楽曲アレンジのポイントや、キタニの音楽的展望に迫った。
編曲はコラージュに近い(キタニ)
本間 編曲する時って何を一番意識する?
キタニ メロディや歌詞とは逆で、編曲はコラージュしようという感覚に近くて、サンプル素材を並べて「ここにこれを入れよう」みたいなことをしてます。
本間 DAWのソフトは何を使ってるの?
キタニ Logic Proです。サビで盛り上がることが基本的に多いので、まずはサビで一番多い音数を決めて、そこから減らしてAメロとBメロを考えることが多いです。あとは歌がない瞬間、そこでどんな印象的なフレーズを入れようか考えたり。歌がいない時に聴こえるフレーズって鼻歌で歌えたりするじゃないですか。
本間 歌がいない時に隙間を空ける勇気っていうのもそのうち身につくと思うよ……。
キタニ ああ…、今不安でいっぱいだから入れちゃう……(笑)
本間 俺も入れちゃうんだけどね(笑)。隙間が空いてるけどスネアのフレーズがちょうど良いハマり具合だとか、そういうこととかも出てくる。俺は、キタニくんとちょうど同じぐらいの年齢で松任谷正隆さんと会って話した時に、「アレンジのポイントってなんですか?」って聞いたら「周波数帯の整理だよ」って言われて、その頃は全然その意味合いが分かんなかったの。でもずっと心の中に残ってて、いろいろ作業を進めていく中で、周波数帯っていうのはキーに応じたもので、例えばコードがAの曲だったら、440Hzを基本とした2倍音の880Hzとか3倍音の1760Hzとか、それをいかに整理していくかっていう話だった。
キタニ 気が遠くなるような話ですね。
本間 そのキーの音階周波数表みたいなものがあるのね。それを見たらEQのポイントのどこを削れば良いかっていうのが分かってくる。ミックスしている時とかに「この『ド』の音がちょっと出っ張ってるから引っ込ませたい」とか、そういうことを音階周波数表を見ながらやると結構面白い。
キタニ うわー、もう物理学ですよね、「倍音の仕組み」みたいな。めちゃくちゃマニアック。
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