舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』で奮闘中の近況を語る
ハプニングさえも一期一会。松井玲奈がロングラン公演への初挑戦で得たものとは
2026.02.20 17:30
2026.02.20 17:30
舞台は“完璧にできない”ことが楽しいと思う
──松井さんは2025年、演劇界を舞台にした長編小説『カット・イン/カット・アウト』も出版されましたね。以前のインタビューで舞台に集中している時は執筆がなかなか難しいとお話されてたのが印象的だったのですが、この作品の執筆中はいかがでしたか?
実は『カット・イン/カット・アウト』を書いていた時は舞台もやっていて、本当にもうあっちにこっちに気持ちが振られてしまって、にっちもさっちもいかないみたいな感じでした。ただ最近、自分のやるべきこと、やりたいことを書き出して整理するようになったら、今までより少しだけスケジュール管理が上手になった気がしますし、締め切りがあるものも早く終わらせるようになりました。

──執筆自体はスムーズだったのでしょうか?
大変でした! 書くことももちろん大変だったのですが、一度原稿が全て消えたことがありまして……それが本当にトラウマでした。しかももうすぐ完成、という状況で。
──そんな大変なことが……!
締め切りも近づいているし、絶望の淵に立たされまして。でも、もう一回その原稿を思い出しながら書いてみたら、ある意味“本当に必要なこと”だけが残った感じがしたんです。逆に「一回消えてよかったんだな」みたいな気持ちにはなりました。ただ、もう二度と起こしたくないので、データ管理をしっかりしようとは思っています(笑)。あとは、これまで書いてきた作品は割とバッドエンドだったり、モヤっと終わるものが多かったのですが、『カット・イン/カット・アウト』は読んだ人が前を向けるような、そういう終わり方にしようと明確に決めることができたんです。それが自分としては一つ大きな前進なのかなと思います。
──『カット・イン/カット・アウト』は演劇をモチーフにした作品ですが、なぜ演劇だったのでしょう?
本当は、舞台の話を書くのはもっとずっと先にしようと思っていたんです。自分が関わる世界のことを書くのって一番楽というか、話の素材がたくさんあるので、いかようにでもできてしまうなと思っていたので。でも、ちょうど元々書いていた原稿が行き詰まったタイミングで、担当編集さんから「何か短い短編を書いてリフレッシュしませんか?」と提案していただいて。「じゃあ今身近にあるもので、書けるような題材って何だろう?」と思った時に、女優さんの話で、「舞台の中でスポットライトが当たらなかった人にもし光が当たったらどうなるんだろう。そういう話を書いたら面白いかも?」 と思ったんです。そうしたら意外と筆が進んでしまって、長編になってしまいました。

──松井さん個人にとって、「舞台」はどんな存在なのでしょう?
大好きです。私の中では“完璧主義の人ほど舞台が苦手”という印象があるんです。実際、お芝居をやっている私の友達も同じことを言うのですが、例えば少し噛んでしまったとか、間が思うようにいかなかったとか、少しでも完璧にできないとお客様に申し訳ない気持ちになる、と。もちろんそれも理解できるのですが、私は逆にそれを楽しいと思うタイプで。たとえばアクシデントがあっても、そのことにより舞台の熱量自体もガッと上がったりするじゃないですか。ちょっとしたハプニングが起きたことで、逆に出演者がぐっと集中する、一致団結していく感じがすごく好きで。それって、その日その時にしか起きないことだったりしますし、お客様の反応も絶対に毎回同じではない。その、一期一会的な感じが楽しいなと。
──ライブ的なものと執筆という“静”の活動の両輪、というのが面白いですよね。ところでいろいろとお忙しい日々だと思うのですが、今やりたいことはありますか?
……牧場に行きたいです。行ったことがなくて、牛の乳搾りをしたいんです。
──乳搾り、ですか?
はい。ずっとそれを夢見ているのですが、なかなか叶わなくて。この間とうとう牧場に行っている夢を見たので、相当行きたいんだなと思いました。
──なぜなんでしょう……?
多分、あの感覚って実際やってみないとわからないですよね。「どのぐらいの柔らかさだろう」とか「あんな簡単に絞って出るのか?」みたいなのとか。とにかく、今はただそれを知りたいんだと思います。知っても何にもならないかもしれないですが。

スタイリスト:船橋翔大(DRAGONFRUIT)




