映画『トリツカレ男』の登場キャラクターと重ねて語る人間観
「憑依はできなくても、同じ心にはなれる」上白石萌歌が思う、役を理解する過程の面白さ
2025.11.13 18:00
2025.11.13 18:00
andymoriの「1984」が心を救ってくれた
──ちなみに今の萌歌さんはジュゼッペのように誰にも止められないくらい夢中になるものはありますか?
私とジュゼッペに似ているところがあるとすれば、飽き性なところだと思います(笑)。私もつい、いろんなことに手を出したくなるタイプなんですけど、今で言うと、切手を集めるのがすごく好きで。昔からコレクション癖はけっこうあって(笑)。レコードを集めていたりもしますし、お皿を集めていた時期もありました。切手は、とりわけ古切手がすごく好きで。切手ってその時々の時代やその時にあった出来事が、1枚に凝縮されていて。しかもポップに描いているのもいいんですよね。

──ポップアートに触れるような感覚でもある?
そうです。レコードジャケットも一番身近なアートじゃないですか。切手も同様で、その数センチの中にこだわって絵を描いた人がいて、どんなデザインにしようか考えた人たちがいるんだなって想像することもロマンですし、その小さな1枚が人と人とを繋ぐツールになっているのもカッコいいなって思います。古切手だけではなく、現行で売られている切手もすごく好きで。今は切手もシールになってるんですよね。切手を貼りたいがために友達に手紙を送ったりしてます(笑)。日本には切手デザイナーが8人しかいないんですよね。その8人が郵便局員の仕事として切手をデザインしているということも素敵だなと思います。

──ミュージカル映画であるこの『トリツカレ男』は、人が音楽に救われる描写も重要なポイントになっています。萌歌さん自身、リアルに音楽に救われたと感じられる経験をしたことはありますか?
私は特に思春期の頃に音楽に助けられていました。10代の頃って、今思えば大したことないことでも、すごく心を痛めたりするじゃないですか。誰もがそうやって漠然とした不安を抱える時期を過ごすと思うんですけど、私もそういう時期に聴いていた音楽には自分のことを救ってもらえたなと思いますし、このアルバムがなかったらたぶんダメになってたなって思う作品もけっこうあります。
──ちなみに、その中の1枚を教えていただいてもいいですか?
今パッと浮かんだのが、andymoriの『ファンファーレと熱狂』というアルバムに入ってる「1984」という曲。仕事でヘコんだ時にもダイレクトに心を救ってくれました。
──『ファンファーレと熱狂』にはスリーピースバンドのダイナミックな魔法みたいなものが凝縮されているように思います。
私もそう思います。映画や音楽でも、そうやって自分を救ってくれたお守りみたいな作品が、人生を進めていく中でどんどん増えていくので。私自身も、俳優業や音楽業でそういう誰かのよすがになるような作品に参加したり、クリエイトしていけたらいいなと思いますね。それが自分を救ってくれた作品への恩返しだと思ってます。





