実現困難な“ループもの”がウォーリー木下演出で見事舞台化
これぞ演劇ならではのライブ感!薮宏太主演の音楽劇『MONDAYS』で体感する“気持ちよさ”とは
2025.10.08 17:00
2025.10.08 17:00
ファンならずとも惹かれてしまう薮の魅力
そして舞台の前半で重要なのは、これが「ループしている」ということ。同じフレーズを少しずつ移相しながら繰り返し高揚していくミニマルテクノのごとく、また同じ1週間がステージ上では繰り返される。この「微妙に違っている部分もありながら基本的には同じことを繰り返す」という、演劇ではまずあまり見ないタイプのシーンが続くのだが、実はこの何気ない日常が“ループを抜け出すカギ”にも絶妙に絡む伏線となっている。これから観る人は、ある意味抑制されたこの場面、よーく観察しておくとより楽しめることは間違いない。

この楽しくも難しい舞台の成功は、メインの登場人物たちにいろいろな意味で“スキルが高い”キャストが揃ったところにあるだろう。まず、今回の舞台版で主人公の村田を演じたHey! Say! JUMPの薮 宏太。忙しい毎日の中、人生の節目に差し掛かりちょっと思うところがあって……というリアリティを持った等身大の役柄が想像以上にハマっている。それでいて今回最も重要な“音ハメ”のスキルに関しては、長年のアイドル業で培ったものがあるので言わずもがな! 舞台映えする長身といい、憎めないキャラクターといい、ついつい目で追ってしまう存在だ。
……というか言葉を選ばずにミーハーなことを言ってしまえば、「メガネ+サスペンダー+ストライプシャツ」というスタイリング。彼の抜群のスタイルをより引き立てていて(脚が長い!)、控えめに言っても“最高”なのだ。これは彼のファンならずとも、舞台上の“村田”に惹かれてしまう人は続出するのでは!?
プランナー見習いであり、村田とコンビのような存在である遠藤を演じる平間壮一は、もともと抜群の身体能力とダンススキルで数多の舞台で活躍する存在。キレのいい動きで、舞台のテンポを牽引する。遠藤は最初にループに気づき、持ち前のエネルギッシュさとコミュニケーション能力でいろいろなことを試していく存在だが、平間の持つ明るさ、屈託のなさにこの役柄もピッタリだ。

キャリアアップへの意欲を隠さず、仕事に対する一途さゆえに自分を追い込みがちなプランナー・吉川を演じたのは南沢奈央。彼女のキャラクターのリアルさと、端々で見せるキュートさがとてもいい。このループ生活から抜け出すためのキーマンとなる、大空ゆうひ演じる神田川とのやりとりにも注目だ。ベテランクリエイティブディレクターの平役の岡田義徳、アイドルオタクのデザイナー・守山役の森田甘路はさすがのバイプレーヤーぶり。バイプレーヤーといえば職場を統括する永久役の梶原善! 憎めないキャラと「こういう上司、いるいる」という造形で、舞台を和ませてくれる存在だ。




記者会見で藪は「この音楽劇『MONDAYS』は、映画版とはちょっと違う結末が待っています。オフィスの中という狭い空間での話なんですけど、話自体はすごく広がりがあるというギャップも面白いです。毎週毎週、月曜日が億劫だなと思っている人が、この作品を観て少しでも次の月曜日が楽しみだなとか、来週は何が起きるのかなとか、そういうささいな変化を楽しめるような気持ちになってもらえるように精一杯頑張りたい」と語った。
物語や構造、コメディとしての面白さはもちろんのこと、中で奮闘する人たちのキャラクター造形、にじみ出るリアリティがこの『MONDAYS』という作品の魅力であるし、元映画のヒットもそこがポイントだったはずだ。それは、映画とは異なる結末を持つ舞台版でも健在! ぜひ、舞台ならではの『MONDAYS』を楽しんでみて欲しい。そして繰り返すが、観終わったあとには必ず「もう一度最初から繰り返して」観たくなっているはずだ。
