リーディングミュージカル初挑戦に込める“演じる意味”とは
「学んだことを私立恵比寿中学に持ち帰って報告したい」真山りかが語る、アイドル業への感謝
2025.10.01 19:30
2025.10.01 19:30
9月28日より「Reading Musical『BEASTARS』episode 1」が上演中。10月2日に東京公演を終えると、10月11日からは大阪公演がスタートする。本作は板垣巴留による漫画『BEASTARS』を原作に、「歌と朗読」「生演奏」「パフォーマンスとダンス」を展開する新感覚のリーディングミュージカル。肉食獣と草食獣が共存する世界で、人間社会ともシンクロする“葛藤・苦しみ・悲しみ”を描く。
そこでヒロインのドワーフ種のウサギ・ハル役をを務めるのが、私立恵比寿中学のメンバーである真山りか(※梅田彩佳とWキャスト)。2023年より着実に舞台役者としてのキャリアを積んでいる彼女は、『BEASTARS』という作品や、リーディングミュージカルというフォーマット、ハルという少女とどう向き合っているのだろうか。その回答から、真山りかの人生や生き方が浮かび上がってきた。

ジャンルレスな活動がグループに還元できる
──真山さんが私立恵比寿中学を飛び出して、初めて舞台に出演したのは2023年。この「Reading Musical『BEASTARS』episode 1」で舞台は5作品目ですね。
そうですね。わたし自身がジャンルレスにお仕事をしてきたのもあってか、これまで出演させていただいた朗読劇やコントは、いろんなジャンルの方が集まっていることが多くて。今回の『BEASTARS』はミュージカルをメインに活動されている方が多いので、その文化を学ばせていただいていますね。舞台はカンパニーごとにまったく雰囲気などが違うので、毎回が勉強です。
──様々なフィールドで活動している真山さんは、どんな現場でも比較的素早く適応できるタイプですか? それとも時間を掛けて馴染んでいくタイプでしょうか。
ジャンルレスに活動するうえで一番大事にしているのが、一生懸命取り組むことなんです。いろんなことに挑戦できるチャンスがあるのは、アイドルという職業の一番いいところだと思っていて。だからといって、どんな現場でも自分が自分の理想どおりに動けるかというと、そうではないんですよね。その現場にしっかり入っていくためにはもちろん、家で「またあの現場に呼んでもらえるかなあ……シクシク」と落ち込まないためにも、とにかく最大級の努力をするようにしています。

──どんなものにも果敢にチャレンジできる原動力はどこから湧いてくるのでしょう。
今活動しているグループ、私立恵比寿中学。もうそれが当たり前になっているのかも(笑)。J-POPはもちろん、とびきりのアイドルソングやロックサウンドもあるし、ラップも歌うので、いろんなことにチャレンジさせてもらえる環境なんですよね。だからその感覚で、ジャンルレスにお仕事をさせていただいています。いろんなフィールドで活躍されている方々と出会うことで自分の世界や考え方が広がっていって、それがグループに還元できたりもして。だから自然と、どのお仕事も楽しめるようになっているんですよね。
──今回の『BEASTARS』は、朗読劇とミュージカルが合体した“リーディングミュージカル”です。ミュージカルに馴染みはありましたか?
実はずっと前からすごく憧れていたんです。というのも、もともとすごくアニメが好きで、ディズニー系のアニメも好きだったので、高校を卒業する年に劇団四季の『リトルマーメイド』を観に行ったんですよね。そのときは大学進学をせずに芸能一本で頑張るという決心をしたタイミングで、とにかく何かを掴みたいとは思うものの、どうすればいいかわからなくて。だから「とにかくインプットをしよう。そしたらアイドルとして何か学べることがあるはずだ」と思ったときに観たのもあって、思い入れが強いんです。

──人生の分岐点を迎えたタイミングで出会ったミュージカルという表現が、ようやく真山さんの人生と交わった。
憧れだったミュージカルだけでなく、過去に経験させていただいている朗読劇の要素もあって、おまけに『BEASTARS』は原作やアニメを観ていたので、すごくうれしかったんです。ようやく自分の好きな歌で舞台に立てること、自分が大好きな漫画というジャンルの原作であることも本当に光栄です。
──“リーディングミュージカル”は、“歌い手・読み手”を担う役者さんと、“パフォーマー”に徹する役者さんでステージを作ります。このような形態についてどのような印象を持ちましたか?
まずは視覚的要素がある朗読劇が自分にとって新しい挑戦ですね。最初は“歌い手・読み手”と“パフォーマー”が分かれていることへのイメージが湧かなかったんですが、前作の映像を拝見したうえで歌稽古に入ったときに、演出の元吉庸泰さんが「パフォーマーとひとつにならなくてもいいよ」とおっしゃったんです。それで映像を観返してみたら“歌い手・読み手”の台詞と“パフォーマー”の動きがリンクしていないところ、ちぐはぐなところがあったんです。でも言葉と態度が違うって、結構自然なことというか。
──確かに生きていると、そういう場面の連続ですよね。ぐっと本音を堪えたり、波風立たないように思ってもいないことを口にしたり。でも表情には滲み出てしまっていたり。
『BEASTARS』のキャラクターたちはみんな心の中に、言葉では伝えきれない思いを抱いているんですよね。生きるうえでは建前が大事で、本音を言葉にするのはやっぱり難しい。そういう本音をパフォーマーの皆さんが動きで表現してくださっているし、逆に“歌い手・読み手”はキャラクターたちが心の中で抱いている理想を言葉にするかもしれない。理性と本能という対極なふたつが作る面白さを、パフォーマーの皆さんと一緒にいいも悪いも表現できたらと思ったんです。
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