今の自分の“顔”をどう思う?最新主演映画では孤独な青年役に
「この仕事は、終わりがあるから美しい」青木柚を成長させる一期一会、今年向き合った変化とは
2025.09.07 13:30
2025.09.07 13:30
役者の顔は、財産だ。それは決して造形の美しさだけを指すのではない。思わず胸の内を読み取りたくなるような、ただ遠くを見つめているだけで心をかき乱されるような、役者にしかない「いい顔」というのが間違いなく存在する。
青木柚は、そんな「いい顔」を持った俳優だ。持ち味の繊細さに加え、年齢を重ねるごとに色気と精悍さを帯びてきた。けれど、彼もまた今の自分のままではやっていけないと悩んだ時期があったという。
主演映画『天使の集まる島』では、孤独な青年・聡太郎を演じた。青木柚の顔は、はたして何を語るだろうか。

終わりが来るとわかっているほうが安心する
──本作の舞台はマレーシア・ペナン島。世界遺産に登録されているジョージタウンの美しい景色も見どころの一つです。
すごい不思議な街だなって思いました。撮影ではカラフルな街並みが印象的に使われているんですけど、ちょっと道に入るとヨーロッパっぽかったり、インドっぽかったり、中国っぽかったり、どんどん景色が変わっていく。僕はマレーシア自体初めてで、がっつり海外ロケも『MINAMATA-ミナマタ-』以来だったので、それも含めて楽しい日々でした。
──現地の食事はいかがでしたか。
全部おいしかったですけど、特にナシカンダーがとても美味しくて。あんまり辛いのは食べられない僕でもいける絶妙なスパイシー加減で。食べたのは1回きりなんですけど、マレーシアにいる間、ずっとこれでもいいかもっていうくらい好きでした。
──青木さんが演じるのは、『飛べない天使』同様、闘病生活を送る青年・聡太郎。今回は、空想の旅の中で“天使”と呼ばれるミミと、彼女を愛するダニエルという二人の人物に出会います。聡太郎はモノローグで二人のことを羨ましいと言っていましたが、なぜ羨ましかったんだと思いますか。
聡太郎はずっとベッドの上で生活をしているから、人を好きになるということを知らない。だから単純に恋愛そのものが羨ましかったという気持ちも否定はしきれないですけど、それ以上にきっと一緒に時間を過ごせる人、自分を預けられる人がいることが羨ましかったんじゃないかなという気がします。自分を委ねられるということは、それだけ相手を認めているということ。そういう相手と聡太郎はまだ出会っていなかったんですよね。
──二人はいつか消えてしまうものだとわかっていながら、それでも愛した事実が残るならいいと思っていた。いつか消えてしまうのに愛することって意味があるんだろうかと思わず考えさせられました。
僕は意味があると思います。聡太郎の異国での経験だって、空想の旅だから、結局、聡太郎自身の現実を劇的に変える力はないんですよね。でも、ちょっとだけ現実を鮮やかにしてくれた。たとえ消えてしまったとしても、その瞬間はすごく濃いものだから。それを意味のあるものに変えられるかどうかは、自分の気持ち次第なのかなって。
──終わりが来るものに身を尽くすのってすごくしんどいというか。恋愛がわかりやすいですが、いつか別れが来るなら最初から好きにならなければと思ったりしません?
その感覚はあんまりないなあ。それで言うと、最終的には「どうせ死ぬし」と思ってるタイプで。むしろ終わりが来るとわかっているほうが安心するかもしれない。
──どういう意味か、もう少し詳しく聞かせていただけますか。
仕事で例えると、クランクアップがまさにそうで。この日で全部終わるってわかってるから、撮影期間中も頑張れる。逆に永遠に続くものって、自分はあまり成長できない気がしていて。きっと飽き性なんです。だから終わりがないものは続かない。そう考えると、この仕事は性に合っているのかも。頑張っていればいつか終わるし、終わったらまたご縁が巡ってきて。そのサイクルが、自分を成長させてくれるというか。

──逆に、どんなに愛着を持った作品でもいつか終わってしまうんだと思うと寂しくなったりしませんか。
確かに寂しいな、とはなります。でも同時に、美しいな、とも思う。それに、本当に会いたい人とは、撮影が終わっても会えるように、ちゃんと自分から誘います。絶対に離しちゃいけない!みたいな相手は、意地でもつなぎ止めるタイプ。でも基本は、一期一会というか、その寂しさも楽しんでます。
──人と仲良くなるのが、わりと得意なほうですか。
得意というほどでもないですけど、自分にないものを持っているなと思う人には、撮影中、結構質問攻めにします(笑)。
──青木さんの中で人に対する独自のアンテナがあるんですね。
この人には、他の人には言えないことを言えそうだなとか。同じ悩みを持っていそうだなとか。それを自分とは違う表現の仕方でアウトプットしている人を見ると、どうやって壁を乗り越えたんだろうって、すごく聞きたくなります。
特に僕の場合、映画の仕事が多いので、ドラマの第一線で活躍している人も気になりますね。どんな場所でも、ちゃんと信念を持って表現されている人を見ると、カッコいいなって惹かれます。

──ドラマと映画では、青木さんの中で感覚が違うんですか。
どっちがいいとか悪いとかはなくて、求められることがちょっと違うなっていうのはありますね。
──ドラマの場合、観ている人の数がグッと増えるので、演技にもわかりやすさが求められる傾向がありますね。
ただシンプルにそこにいるだけでは、脚本や演出の要望に応えられない可能性があるな、と思う瞬間はありますね。でも、すごく足腰の鍛えられる場所だなとも思っていて。ドラマももっと頑張っていきたいなって、最近は考えています。
次のページ