2025.08.29 18:00
2025.08.29 18:00
日常を旅先だと思うだけで、いつもの景色が違って見える
──光石研さん演じる所長の保坂の「(刑務所は)罪と向き合って自分で歩いていく方法を見つけるための場所なんだよ。その過程には無駄がいっぱいある。それでいいと思うんだよ」という台詞が印象的でした。奈緒さんは、無駄と呼ばれるものに対してどんな考えをお持ちですか。
私は、人には無駄が必要だと思っています。すごく究極なことを言うと、ドラマや映画って、それでお腹いっぱいになるわけでもないし、栄養素をとれるわけでもないから、生きていくことだけを考えれば無駄じゃないですか。でも映画やドラマを観ることで、心が動く。そしてその感動が、人生の栄養になる。だから、私はなるべく無駄なものにいっぱい出会いたい。
特に今って効率重視で物事が進んでいて。失敗したり間違ったりすることを無駄だったってマイナスに受け取ることが増えている気がするんですけど、私は失敗してもいいと思うんです。大切なのはその失敗や遠回りの中から何か気づきを見つけること。失敗=人生の終わりじゃない、というふうに感じてほしいなと思っています。

──奈緒さんは、最近何かいとおしい無駄に出会いましたか。
なんだろうな……。あ、この間、フィンランドに行ってきたんです。お仕事でトナカイの散歩をさせてもらって、そのときにトナカイがタンポポを食べてることに気づいたんですね。めっちゃタンポポ好きじゃんと思って、私もタンポポを摘んでトナカイにあげたんです。そしたら、フンッて鼻息で飛ばされちゃって(笑)。
──せっかくの厚意が(笑)。
「君からもらったタンポポじゃなくて、俺は自分でちぎったタンポポを食べたいんだ!」と言わんばかりに吹き飛ばされました(笑)。でもそのときに気づいたんです、そうかこのトナカイは他人から与えられたものじゃなくて、自分の力で手に入れたものがいいんだなって。最初はショックでしたけど、それは確かにそうだよなって学びになりましたし、自分はなんて単純だったんだろうと反省もしました。
──そのトナカイの気持ち、ちょっとわかる気がします。結局、幸せって自分の手で掴み取るからいいんですよね。
そう思いました。はたから見れば、せっかく与えてもらってるものを無視して、わざわざ自分で探し直すなんて無駄かもしれない。だけど、本人にとっては必要な無駄なんですよね。なんでも与えすぎることが、その人の幸せになるわけじゃないんだなって。本当に動物はいい学びをくれます(笑)。
──葉留の働く美容室は壁から天井まで青空が描かれています。空はこの作品の重要なモチーフの一つですが、奈緒さんはどんな空が好きですか。
私は朝焼けが大好きです。朝焼けを眺めるためにわざわざ早起きするくらい、私の中で朝焼けの時間はすごく特別なものですね。
──自分も旅先では必ず早起きして朝焼けを見るんですけど、それを日常からできていることがすごいなと思いました。
私も旅が好きで。だからこそ、普段の日常を「ここを旅先だと思って1日過ごしてみよう」ということをたまにやります。ちょうど今日も出発するときに、自分の家を滞在先のホテルだと思って出てみたんですよ。そしたら、外の景色がすっごく良く見えて。マンションに飾ってある花でさえ、「こんな立派な花だったんだ」って全く違って見えたりする。ちょっとした意識の話なんですけど、たまにそういうことをやってみると楽しくなります。
──いい心がけですね。なんせ思うだけだから、タダですし(笑)。
そうなんです。タダでできるのでオススメです(笑)。
──奈緒さんのそういう日常や人生に対する考え方って天性のものなんでしょうか。それとも奈緒さんがご自身の人生を生きていく中で獲得してきたものなんでしょうか。
失敗することは悪いことじゃないというお話をさっきしましたけど、その一方で、私、落ち込むことがすごく苦手なんです。とはいえ、生きていれば落ち込むことはたくさんある。だから、そのゾーンからなるべく早く抜け出す方法を見つけたくて、気持ちの立て直し術としてそういう思考の変換を身につけていったんだと思います。もうずっと昔から癖づいているものですね。

──旅といえば、以前『ララLIFE』で台湾に行かれてましたよね。そのときに蒸篭(せいろ)料理を召し上がっていて、すごく幸せそうなお顔をされていて(笑)。
(笑)おいしかったです。今でも蒸籠は家でよく使っていて。それこそあの旅から帰ってきてすぐ友達を呼んで、三段重ねで蒸籠料理をしました。
──蒸籠、めっちゃ便利ですよね。ヘルシーだし。
そうなんですよ。お湯を沸かして、その上に置いておくだけでいいし、その間にいろいろできるから、はかどりますよね。洗い物も少ないし。忙しい朝とか、蒸籠があるとすごく楽です。
──そういう旅の思い出を感じられるアイテムを家に持ち帰るのが好きなんですか。
好きですね、日常の中に旅を連れて帰るのが。旅を特別なものとして終わらせたくないんです。そこで見たものや経験したことが、自分の日常に続いてほしいなという想いがあって。つい旅先では自分の生活に馴染みそうなものを探して、自分へのお土産として買って帰ります。
