生き方を見つめ直すきっかけをくれた映画『雪風』を語る
奥平大兼が受け継いだ救いのバトン 21歳俳優として思う、戦後80年を生きる“僕らの役割”とは
2025.08.19 18:00
2025.08.19 18:00
みんなタメ口だから先輩感がないんだと思います(笑)
──ではもう一つ。この物語は、井上が「雪風」に助けられるところから始まります。奥平さんにも、人から助けられた思い出はありますか。
デビューして1年目ぐらいで、ありがたいことにいろんな賞をいただいて。でも、僕自身はまだ経験も何もないから、自分のやってることが合ってるのか合ってないのか全然わかっていないんですよ。だけど、現場に行くと「自由にやっていいよ」と言われる。その正しい自由がわからなくて、ちょっとしんどかった時期があったんですね。
そんなとき、『ヴィレッジ』という映画で藤井(道人)さんとご一緒して。藤井さんが「大兼はここができていなくて、こういうことをできるようになったらいいよ」と言語化してくれたんです。あの言葉は、僕にとって救いでした。そう言ってもらえると、自分のできていないことが客観視できるようになるし、じゃあ次はこれができるようになろうという目標ができる。
たぶん藤井さんのあの言葉がなかったら、僕は今も意味がわからないまま芝居を続けていた可能性があると思うんですよ。あそこで1回、自分のできていないことを理解できたことが良かったし、その上でそれをやるかやらないか選択できたことも大きかった。
その1年半後くらいに『パレード』という作品で藤井さんとまたご一緒させてもらったんですけど、そこで「大兼、芝居良くなったね」と言ってもらえて、すごくうれしかったです。

──この映画は、助けられた人が今度は助ける側にまわるお話でもあります。そうやって藤井さんに救われた奥平さんが、いつか自分も同じことができるようになったらいいなと思うことはありますか。
芝居に関してはまだまだ人に言えることなんてないですけど、でも僕自身が大人に囲まれて、いきなり映画デビューさせてもらって。そこでもたくさんの人に助けられたので、いつか同じように「この現場が初映画なんです」という若い子がいたら、少しでも芝居がしやすいように力になってあげたいです。
──そろそろ先輩ヅラをかませる場面も増えてきたんじゃないですか(笑)。
僕、なぜか年下からもタメ口で来られるんですよ。マジで全員です(笑)。別に敬語を使ってほしいわけじゃないんでいいんですけどね。気づいたら、みんなタメ口だなって。たぶん先輩感がないんだと思います(笑)。
──じゃあ、もっと先輩感を出していきましょう。
マジで難しいです。何からすればいいのか……。
──わかりやいところで言うと、ごはんをおごるとか。あと、着なくなった洋服を後輩に譲るみたいな話もよく聞きます。
それはよく聞きますね。でも自分にできる気がしないな(笑)。学生時代にめちゃくちゃ慕ってくれる後輩が一人いたんですよ。ちょっと生意気なところもあるんですけど、そこも含めて可愛くてしょうがなくて、誕プレとかめっちゃあげてました。

──なるほど。じゃあ、奥平さんを先輩として慕ってついていけば、誕プレがもらえるかもしれない。
もしかしたらあげることもあるかもしれないです(笑)。
──最後にもう一つしょうもないことを聞きます。映画で潜水のシーンがありましたけど、奥平さんって潜水ってどれくらいできますか。
何秒いけるか、みたいなことですよね。わかんない。1分はキツいんじゃないかなあ。生ぬるいこと言いますけど、苦しいのが嫌いなので(笑)。
──現代っ子〜(笑)。
仕事とかだったら気合い入れて頑張るんですけど、潜るのは別にできなくてもいいじゃないですか。そういうのに対して、苦しくてもやったるぞみたいなのが……できないですね(笑)。
──その理論で言うと、サウナ頑張れない人ですね。
めっちゃ苦手です。なんで頑張ってるのかがわからなくなる(笑)。だから1回しか行ったことないし、たぶん今後行くこともないと思います。
──逆になぜその1回は行ったのかが気になります。
別の作品で菅田将暉さんとご一緒したときに、「ちょっと行かね?」と誘っていただきまして。こういう機会じゃないと行くこともないかなと思って行ってみたんです。で、やってみたらやっぱり苦しいなと。サウナ、水風呂、外気浴というセットを3回くらいやって。最後の外気浴は確かに気持ちいいなとは思いましたけど、リピートするほどではないかなと……。
──ととのわなかったんですね。
ちょっとわからなかったですね(笑)。しかも、ミストサウナだったんですよ。本当にサウナが好きな人からしたらめっちゃ優しいやつらしいんですけど、僕にとっては結構キツかったです。
