アイドル卒業後、数々の出演作品を経て初ミュージカルに挑む
「今はもっとお芝居を勉強したい」矢吹奈子が悔しさから逃げない理由、自分に願う成長とは
2025.07.03 17:00
2025.07.03 17:00
最近出会った天才は、松坂桃李さんです
──矢吹さん自身はお医者さんのお世話になることってありますか。
私、結構健康で。今も周りで喉風邪が流行っていますけど、私だけ大丈夫でした(笑)。だから「強いね」と言ってもらうことのほうが多いんですけど。あ、そういえば、小学1年生のときに転んで右腕を骨折したことはありました。

──大怪我じゃないですか。
利き手だったからお箸も持てなくて、給食のときに私だけスプーンを用意されるみたいな。小学生の頃って人と違うのが恥ずかしかったりするじゃないですか。自分だけスプーンで食べるのが恥ずかしくて、ちょっと学校に行くのが嫌になったのは覚えています。
──逆に小学生の頃って自分だけ怪我してるとテンション上がりません? 松葉杖カッコいいみたいな。
松葉杖はめっちゃ憧れました!(笑) 眼帯とかも憧れがあったんですけど、私の場合、骨折といっても三角巾を吊り下げるほどでもなく、ギプスだけだったのもあって、なんか恥ずかしかったんですよね。字も上手く書けないし。
でも周りの子たちがすごく優しく接してくれて。先生も私が困ってないか近くで見守ってくれて。怪我をしたからこそ感じる周りの優しさというのはありましたね。
──ブラック・ジャックといえば天才外科医ですが、矢吹さんがこれまでの芸能生活の中で出会った天才といえば?
本当にすごい方たちばかり見てきたので一人に絞り切れないのですが、最近お会いした天才は松坂桃李さんです。私が天才なんて言うのもおこがましいですけど。
──ドラマ『御上先生』で、矢吹さんは松坂さん演じる御上先生が受け持つクラスの生徒の一人でしたね。
6話で御上先生が自分のお兄さんについて生徒に話すシーンがあって、そのシーンを丸1日かけて撮影したんですね。私は席が真ん中のいちばん後ろだったから、教壇にいる御上先生の顔が直接はあまり見えなくて。だから、最初は下を向いたりしてたんですけど、パッと前を見たら、教卓に乗せている御上先生の手だけ見えて。その手を見ただけで泣けてきちゃったんです。

──手だけで伝わるものがあったんですね。
たぶん松坂さんは別に何か手に力を込めようとか、そんなことを考えていらっしゃったわけではないと思うんです。ただ、手にまで感情が行き渡っているのを見て、私のほうで勝手に涙が出てしまった。こんなことあるんだって衝撃でした。
そのあと、別のアングルからもう一度同じシーンを撮ることになって。私のほうにカメラが向いていなかったので、ちょっと席をずらして、松坂さんのお芝居を表情までじっくり見させてもらいました。そしたらもう涙が止まらなくなってしまって。
松坂さんのお芝居は、何回も同じシーンをやっているはずなのに、まるで初めてやるみたいに新鮮に感情が溢れ出てくる。もうすごすぎて、ただただ感動でした。たぶんあのシーンのことは一生忘れないと思う。それくらいずっと心に残っているシーンですね。
──2023年4月にHKT48を卒業。その後、着々とお芝居の経験を積んでいます。特に今年は年末にもう1本ミュージカルを控えるなど、舞台にも力を入れている印象です。
今までお芝居は映像が多かったので、すごく新鮮です。稽古って何度も同じシーンをやるので、いかに新鮮な気持ちで演じるかが大事なんですけど、ちょっとずつできるようになってきたのかなって。
私はノート(ダメ出しのこと)をもらうと、ついそこばかり考えてしまうところがあって。もちろん考えることは大事です。でも、あまり気をとられすぎてもダメ。だから、そのシーンをもう一度やるときは自分の中で1回リセットすることを今は意識するようにしています。

──頭で考えるだけではなく、その場で起こったことにちゃんと反応するのが大事ですからね。
まさに昨日の稽古でそういう話をしていて。周りのお芝居が変わっているのに、自分のお芝居が変わらないと、やっぱり変になる。ちゃんとみなさんのお芝居を受けて、それに対して自然とリアクションできるよう、もっとお芝居を学んでいきたいですし、きっと本番が始まってからも、どんどん変わっていくところが出てくると思うので、そこも今から楽しみです。
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