世界で支持される人気作曲家が語る、活動で最も大事なこと
澤野弘之が「自分だからこそ」の道で目指す地点 20周年を迎えなお走り続ける原動力とは
2025.05.27 18:30
2025.05.27 18:30
どの名義でもその時表現したい曲をぶつけていくことに変わりはない
──プロデューサーという形で関わっているエンディングのSennaRinさんが歌う「KONTINUUM」はどんなイメージだったんでしょう?
この曲も「JEOPARDY」や他の楽曲と同じで大枠としてはエピックなサウンドで、前半はダークで怪しい部分があって、サビになった瞬間に広がるけど、明るく広がるのではなく、ダークな部分を保ったまま力強いものにできたらいいなと思って作っていきました。歌声のアプローチに関しては、サビ以外のところはちょっと怪しさやトリッキーになるように歌ってもらうことで、サウンドのコントラストを最大限に引き出してもらえたと思っています。ボーカルのアプローチとサウンドのアプローチ、どちらも極端なものを詰め込んで表現することができた気がしますね。
──SennaRinさんのボーカリストの魅力をどう感じていますか?
僕がボーカリストに一番求めるものは、やはり声なんですよね。SennaRinの場合はハスキーなところや、がなった時の声の響き方に魅力を感じています。あと、いろいろなことを楽しんで挑戦していく精神も面白くて、例えばちょっとふざけたように聞こえるかもしれないけどやってみようっていうアプローチにも前向きに取り組んでくれるので、どんどん振り幅が広がっていくタイプのボーカリストだと思っています。進化の過程を見られるのが楽しいですね。
──SennaRinさんをプロデュースすることで澤野さんの引き出しが増えていくような影響があるんですかね。
確かにそうですね。彼女をプロデュースする中で「今後自分はどういうサウンドを吸収していくのがいいのかな」って考えているとアンテナの張り方も変わってきます。いろいろな刺激をもらっていますね。

──3曲とも英語詞なのは作品サイドからリクエストがあったんですか?
そうですね。中国や日本の視聴者の方はもちろん、全世界に向けられた作品なので英詞が良いということなんでしょうね。僕も普段から英詞のグルーヴ感を意識して作っているところがあるので、その点ではやりやすかったです。
──サウンドも洋楽のテイストが強いハイブリッドなアプローチで、澤野さんの王道という感じがしました。
僕は歌ものでもサウンドトラックでも海外のサウンドから強い影響を受けていて、それをどう自分なりにアウトプットするのかっていうことが音楽を追求する上でのテーマのひとつですね。
──『TO BE HERO X』というひとつのアニメ作品の音楽の中で作家名義とnZk名義とプロデューサー名義の楽曲が混在しているのも澤野さんならではですよね。
ややこしいですよね(笑)。劇伴で関わる場合は作家の澤野弘之名義になりますし、オープニング曲の場合はボーカルプロジェクトのnZk名義になることが多いですね。劇伴だけではなく、オープニングやエンディングもプロデュースさせていただくことによって、作品を通して自分の表現したい音楽をとことんぶつけられるのはとてもやりがいがありますし楽しいです。

──名義が変わることで向き合い方は違ってくるものなんでしょうか?
そこまで大きな違いはないんですが、例えばSennaRinの曲を書く時はプロデューサーとして関わっているという気持ちの上での違いはあります。でも、基本的には劇伴もボーカル曲もプロデュース曲もその時の自分が表現したい曲をぶつけていくことに変わりはありません。
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