2025.05.08 19:00
2025.05.08 19:00
孔明に説得力を持たせるにはテクニックが必要だった
──フェスのシーンは、もう本当にフェスをされていましたもんね。
1日で撮り切ったので、すごいスピード感でした。裏ではプロデューサーも監督も、なんならフェスに出ない僕まで裏で走り回っていたんで。

──ライブはご覧になれましたか?
裏でもSNS用の撮影などをしていたので、ライブは半分も見られていないんですが、なるべく時間を見つけてステージ袖にはいるようにしていました。いろいろなアーティストの方が出てくださいましたが、せっかく出てもらうのだから、少しでも楽しくパフォーマンスしてもらえたほうがいいなと思って。皆さん、普段だったら完全ホームの中でパフォーマンスできると思うのですが、映画の撮影となると、どうしてもアウェイを感じてしまうでしょうし、いつもとは違う緊張もするでしょうし。なるべくそういう緊張を感じないで楽しんでもらえたらいいなという思いで、これからパフォーマンスする人たちやパフォーマンスを終えた人たちとコミュニケーションを取るようにしていました。そういう意味では、あの孔明の格好が役に立ちましたね。あの格好でステージ袖にいるとみんな驚いてくれるから(笑)。

──映画ではドラマから時間が進み、月見英子をはじめとする登場人物たちとの関係にもドラマとは変化が起きていると思います。孔明として、映画とドラマで変化させたことはありますか?
孔明って、転生してきたときからもう出来上がっているイメージなんですよね。「パリピ孔明」という作品は、孔明が成長するというよりは、周りの人たちが孔明に影響を受けて変化していく話。むしろ孔明がブレると作品自体がブレる。そう思って、ドラマのときから孔明は何一つ変えていないです。
──では、孔明という人物を演じるにあたって意識していること、大切にしていることというと?
あまり焦らないようにはしましたね。それと、難しかったのは、説得力を持たせるということ。そもそも転生してくるという時点でフィクションなんですが、見ている人に「こういう人いるよな」とか「孔明だったらこうするよな」と思ってもらわなくてはいけない。孔明に説得力があるからこそ、英子をはじめ周りの人たちが影響されて転がされていくので。そのために、話し方もそうですし、着物の着方や捌き方も自然になるように意識して。僕は昔、日本舞踊をやっていたので、そのときに習った捌き方を取り入れたりして、あの格好でいることにも意味を持たせるようにしました。あとは先ほども言った大河ドラマのような話し方。ゆっくりしゃべる、表情も読ませないというところは意識しました。実際に僕がやったことが正解なのかはわからないですけど、実際にそれが受け入れてもらえたから映画になったのかなとは思います。

©︎2025 フジテレビジョン 松竹 講談社 FNS27社
──はたからみると、孔明を演じるのは楽しそうだなと思ってしまうのですが、実際に演じているとやはり大変ですか?
大変というより孔明を演じるにはちょっとテクニックが必要なんですよね。本当は感情だけで演じたいんですけど、「ここはテクニックでいったほうがわかりやすいな」とか、逆に「ここはテクニックでいくと何も伝わらないだろうな」というのを感覚で使い分けていて。しかも渋江(修平)監督の演出も、当日になるまでどうなるかわからないんですよ。というか、何を考えているのか全然わからない(笑)。
──映画も作ってもなお?
はい。演出の意図も、その場ではわからないんです。だけど、繋がったものをみると「そういう意味があったんだ」とわかる。だからこそ、見たことのない画になったなと思っていて。それは一視聴者としてもすごく面白かったし、その現場に立ち会えたことが、今となってはすごくありがたかったなと思います。

──お話を伺っていると、感覚と技術、どちらも持ち合わせている向井さんだからこそ孔明のオファーが来たんだろうなと思いますね。
いや〜、どうなんでしょう。まぁ20年くらい、この仕事していますからね(笑)。
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