劇団☆新感線『紅鬼物語』が開幕間近、今の目標と原動力とは
デビュー7年目で念願の初舞台へ 一ノ瀬颯の心を占める「自分磨き」への思い
2025.05.05 18:00
2025.05.05 18:00
もっと上を目指したい、という気持ちはある
──ここ数年の一ノ瀬さんの俳優としての成長は目覚ましいものを感じます。今年で言うと『119 エマージェンシーコール』の第4話のお芝居が素晴らしかったです。
ありがとうございます。
──電話を通して声しか聞こえない中、必死になって心臓マッサージの掛け声をかける。目の前に相手がいないにもかかわらず、あそこまで気持ちを持っていくのは難しかったのではないかなと思います。
4話のゲスト声優をされた井上麻里奈さんと島﨑信長さんが声の収録をされる現場にお邪魔して、お二人がお芝居されるのをマイク越しにお付き合いさせていただきました。おかげで、撮影当日もお二人の様子をリアルに想像しながらお芝居ができたので、個人的にはすごくやりやすかったです。

──臨場感がすごかったです。「1、2」の掛け声だけで想いが伝わってくるというか。
撮ってるときは、あれだけ長回しで使ってもらえるとは思っていなかったんです。8分30秒くらいのシーンだったんですけど、一連(カットをかけずに撮影すること)で撮ったりして。使いどころを編集されるのだろうと思っていたんです。いざ完成したものを観たら、長い時間ずっと僕の顔だけ映っていて。最初は自分でも正直不安でした。「1、2」の掛け声が繰り返されるシーンだったので大丈夫かなって。それを「これがいい」と世に出してくださった監督やプロデューサーに感謝です。そうやって評価していただけるなら光栄ですし、自信にもなります。すごくいい作品に出会わせてもらったと、改めて実感しました。
──長回しというのは、俳優さんにとってはやっぱり独特のものがありますよね。
ちょっと試されている感もあって怖くはあるんですけど、その誤魔化しの効かない感じが僕は好きです。違うテイクの切り貼りだと、自分の意図したものと違うふうに見えてしまっているんじゃないかなという不安もどこかにあって。でも、一連は自分のそのままの芝居を尊重してもらえたようなうれしさがある。お芝居としても心の動きがちゃんとつながっているので、より役としての説得力を観ている人にもわかってもらえるんじゃないかなというやりがいを感じます。

──そう考えると、舞台はまさに編集の効かないお芝居です。
そうなんです。特に物語の順番通りに演じられるのは、舞台ならでは。映像の場合、どうしても物語の流れと撮影の順番が入れ違うときがあって、それも面白いんですけど。今回、心の動きがつながったまま役として生きる経験をすることで、今まで自分がやってきたお芝居がちゃんとつながりを意識してできていたか、確認する作業にもなるんだろうなと思います。
── 一ノ瀬さんは新しい作品を発表するときに、インスタで「#人生×人目の素敵な役」というハッシュタグをつけますよね。個人的にすごく素敵だなと思っています。
やっぱり今までやった役を経験した上で今の役があると思うので、その再確認というか、その気持ちを忘れず、一つひとつの役を大事にしていくために始めたんですけど。気づいたらもうこんな数になったんだって、ちょっと感慨深くなるところもあって。毎回、新しく何人目と打つときに、あのときこういう経験をしたな、こういう人と出会えたなと振り返る機会にもなっているので、やってて良かったなと思っています。

──このお仕事を始めたばかりの頃に思い描いていた場所に立てている実感はありますか。それとも、まだまだ遠く及んでいないという気持ちですか。
どうなんだろうな。全然想像のつかない世界だったので、はじめはどの時点でどの場所にいるとか、目指してはいたけど、実際のところはちゃんとイメージできていなくて。正直、今自分がどの位置にいるのかもわからないんです。ただ、月9に出させてもらって、自分の回までいただいて、こうして劇団☆新感線にも出させていただいて。どれも本当にありがたいことなので、そういう意味では思っていた以上にいい場所にいさせてもらっているんだと思います。
ただ、全然満足はしていなくて。もっと上を目指したい、という気持ちは自分の中にちゃんとあります。でも、結果は後からついてくるものだと思うので、僕にできることはとにかく実力を磨いて、いろんな作品に呼んでもらって、それを評価してもらい次につなげていけるように、ひたすら頑張るのみという心持ちです。
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