映画『遺書、公開。』公開記念リレーインタビュー #5
「人生は一歩を踏み出す勇気で変わる」吉野北人が初心を忘れずにいられる理由
2025.02.14 18:00
2025.02.14 18:00
髙石あかりさんの演技を見て「この人売れるわ」と思った
──今回は、並み居る同世代俳優に囲まれて主演を飾っています。このポジションに対するプレッシャーはありましたか。
プレッシャーでしたね。みんな、年齢的には若手ですけど、キャリアを積んでいる方が多くて、とにかく現場の熱量がすごかったんですよ。いい意味でこの作品でのし上がってやるという勢いが伝わってきた。最初の本読みをスタジオの教室でやったんですが、そのときからみんな本気で、台詞も完璧に入っていて。それを見て、ビックリしました。
もちろん作品に臨む姿勢としてはそれが当たり前なんですけど、本気のみんなを見ていたら、僕もちゃんとしなくちゃいけないと気合いが入りましたし、それこそ主演としてこの人数を引っ張っていかなきゃという重圧も最初のうちはありました。
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──最初のうちということは。
撮影を進めていくうちに、あんまり主演だからと意識しなくてもいいかなと思うようになりましたね。役的にも序列はあれど年齢は同い年。お話としても、あんまり主演という感じではなくて、クラスの一人ひとりが主演と言えるくらい、それぞれにストーリーがあったので、僕一人が背負いすぎず、みんなとフラットな関係性で作品をつくっていったという感じです。
──おっしゃる通り、スクリーン越しにみなさんの「爪痕を残してやる」という気迫を感じました。
すごかったですよね。僕的にもガッと出したかったんですけど、池永があまり感情を表に出す役ではなかったので、そこはグッとこらえて。なるべく感情を抑えながら、一歩引いた位置で冷静に状況を見渡すように意識しました。
──じゃあ、もし役が違えば吉野さんもみなさんみたいにドンッとやってみたかったですか。
1回クレイジーにちょっと狂ってみたかったですね(笑)。
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──ここだけの話、いちばん演技が怖かったのは?
髙石あかりさんですね。すごかったです。カットがかかったあとも、みんな喰らっちゃって、しばらくお芝居から抜け出せないような感じではありました。「うわ、この人売れるわ」と思ったら、朝ドラが決まって(笑)。やっぱりすごいなと思いましたね。
──撮影前とか、髙石さんの様子はどんな感じなんですか。
それが意外と普通なんですよ。集中はされていると思うんですけど、一緒にご飯を食べていて、そのときは普通の女の子。さっきまで「次のシーン大変そうだね」みたいな話をしていたのに、急にガラッと変わる。たぶん憑依型なんでしょうね。「どこでそのスイッチ入れたの?」って感じで、衝撃でした。いきなり感情をあれだけ上げるのって難しいじゃないですか。それをサラッとやっていて。あんな役者さん、見たことないです。
──このリレーインタビュー企画で吉野さんの前に髙石さんにお話を伺ったのですが、髙石さんは吉野さんのことを涙もろさ“1位”だとおっしゃっていました。
え。そうなのかな。
──クランクアップの日に涙を流されているのが印象的だったと。
あ〜(照)、そうですね。頑張ったなという思いがこみ上げてきて、ちょっと泣きました。確かに最近映画とか観るとすぐ泣いちゃうかもしれない。人が亡くなるものに弱いんですよ。だから、髙石あかりさんの言う通りかもしれません(笑)。
──池永って難しいんですよね。他の方みたいに発散型の演技ではないので。
常に教室の端っこにいるような地味な子で、台詞もそんなに多いわけではなかったので、その中でどう見せるかというのはすごく考えました。今回、表情を(カメラに)抜かれることが多かったんですね。なので、なるべく一つ一つの表情にこだわって、まるでお化けを見たようなホラーチックなリアクションというのを意識して入れるようにしました。
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──もし自分が俳優なら池永の役をもらうのがいちばん嫌な気がします。難しすぎて。
むずいっす(笑)。やりすぎると変だし、抑えすぎると地味だし、そのさじ加減がすべてにおいて絶妙で、ずっと難しいなと思いながらやっていました。
──だからこそ、俳優として得られたものもありましたか。
やっぱりこれだけ大勢の同世代のお芝居を近くで見られたことがいちばんの刺激になったと思います。みんなそれぞれ自分の遺書を読むシーンはすごく集中していて。僕が一人で台本を読んだときに、たぶんこの台詞はこういう感じで来るだろうなと予想したものとは全然違う感じで来た子がたくさんいたんですよ。
それはみんなが役を研究してきた結果だと思うし、これだけキャストがいるから他の人とかぶらないように、それぞれ自分の個性を大事にしながら細かい工夫をしていて、すごく勉強になりました。
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