2025.02.05 19:00
宮野真守(2025年1月26日LaLa arena TOKYO-BAY公演より)写真:山内洋枝(PROGRESS-M)・山下深礼(PROGRESS-M)
2025.02.05 19:00
「着飾る」とは、新しい自分を見つけに行くことと同義なのかもしれない。2024年はアーティスト活動15周年という節目で初のフルオーケストラコンサートを開催し、シングル『DRESSING』で新境地を見せるなど、精力的に活動した宮野真守。年またぎで5都市9公演を巡ったライブツアー「MAMORU MIYANO LIVE TOUR 2024-2025 ~DRESSING!~」は“DRESSING=着飾る”をテーマにし、様々な魅力を表現した。このレポートでは千葉県・LaLa arena TOKYO-BAYで開催されたツアーファイナル2daysより最終日の模様を記録する。
様々な国籍のモデルが顔を揃えるファッションショーの舞台裏が映し出されたオープニングムービー。宮野もその一員として黒で揃えたモードな衣装に身を包み、ランウェイへと向かった。そのムービーが止まるや否や会場には「DRESSING」のイントロが流れ、ステージ背面のLEDモニターが左右に割れるとムービーと同じ衣装を身に纏った宮野が現れる。映像から飛び出したようにそのまま花道をファッションショーのランウェイとして闊歩し、この日の幕を開けた。
次曲「BLACK OR WHITE BOYHOOD REMIX」でも4人のダンサーとともに憂いとエモーションが交錯するパフォーマンスを見せる。宮野はこのツアーに向けて10kg以上の減量などボディメイクをしたことを様々なメディアで明かしており、持ち前の長身と引き締まったボディラインが合わさることでスタイリングがより一層映えていた。ステージ装飾も3面のLEDモニター以外に目立つセットはトラスが4本ほど立つ程度で、極限までそぎ落としている。宮野にスポットが当たる、“引きの美学”が貫かれた非常にストイックな空間だ。
メインステージに戻り、ヘッドセットからハンドマイクにシフトすると「Magic」を、ダンサーが袖に下がりバンドが前に出てくると「Quiet explosion」を披露。緊迫感を宿しながら楽曲のポテンシャルを引き出し、アウトロではターンを華麗に決めてステージを後にする。そのままバンドは演奏を続け、迫力ある音圧で会場を包み込むなか最初のセクションを締めくくった。
ブリッジムービーでは再びファッションショーで様々な衣装を纏う宮野の姿を捉える。また映像と同じ衣装でステージに登場するかと思いきや、我々の目の前に現れた彼は素肌にガウンを羽織り、大胆に肉体美を見せた。その“着飾る”というテーマで“脱ぐ”という選択をする姿勢は、自分自身を追い込み高めることで内側から新たな魅力を生み出せる、進化できるというメッセージのようにも感じられた。「BODY ROCK」「WANNA LOVE」と隆々とした筋肉を活かしてワイルドにパフォーマンスし、「Dirty Orange REMIX 2024」と銘打ち「TRUST ME」など4曲のリミックスメドレーを届ける。スマートにステージを去ると、シームレスにバンドメンバーとダンサーの紹介セクションへ。ここまでほぼMCはなく、終始洗練されたステージが展開。それらを前面に出すという挑戦的なステージングは、年齢相応の大人の魅力を引き立てることに成功していた。
ブリッジムービーを挟んだ後は白で統一した衣装に身を包み、「AUTHENTICA」「未来」とバラードを歌い上げる。「苦しいときに僕とみんなをつないだ曲だと思っています。みんなにとっても特別な曲であればとてもうれしいです。思いを込めて歌います」と告げた「Sing a song together」では観客に熱く語り掛けるような宮野の歌声と、それを受け止める観客の柔らかい歌声が響き渡り、純粋で情熱的な光景を作り上げた。
ファニーでスウィーティーな「Apollo」を届けた後は、“ノンフィクショニング”と題したモキュメンタリーが放映される。今ツアーの衣装探しとして旧知の仲である俳優・髙木俊とともに古着屋へ赴き、髙木をマネキンにして奇抜なファッションを考案したり、お笑いトリオ・ロバートの秋山竜次が扮するファッションアドバイザー“YOKO FUCHIGAMI”が「(宮野は)声の仕事をしているから一番大事な“喉”をおしゃれにするのがいいのでは」と“NODO FUCHIGAMI”を提案するコメント動画が流れるなど、ユニークな内容で楽しませる。そのなかでYOKO FUCHIGAMIが話していた「ファッションに縛りはない。“DRESSING”とは自由」「彼には堂々とステージで好きなものを着てほしい」という言葉は、ファッションもとい表現の本質を突いていたと言っても過言ではない。
次のページ