映画『君の忘れ方』主演とヒロインが対談で明かす日々の素顔
坂東龍汰&西野七瀬は負の感情とどう向き合う?好対照な二人が語る大切な人・もの・時間
2025.01.21 18:00
2025.01.21 18:00
人生に悲しみはつきもの。みんなそれぞれに悲しみを抱えながら、だけど誰にもそんなことを感じさせないように平気な顔をして日常をなんとか踏ん張って生きている。
1月17日公開の映画『君の忘れ方』は、結婚式の直前に恋人を亡くした男が、悲しみの底からゆっくりと立ち上がる姿を描いた希望と再生の物語。主人公・昴を坂東龍汰、死んだ恋人・美紀を西野七瀬が演じている。
二人の悲しみの向き合い方は好対照。そこから垣間見えるのは、二人の飾らない素顔だった。
大切な人の死に耐えられるか想像もつかない
──『君の忘れ方』は最愛の恋人を失った男性の物語です。本作を通じて、大切な人を失うこと、あるいは大切な人を遺して逝ってしまうことについて、どんなことを考えましたか。
坂東 答えのないことだとは思うんですよね。死というものがもたらす痛みとどう向き合い、心を再生していくかって。もちろん時間もあると思う。だけど、それだけじゃない。周りの環境だったり、誰かからの言葉が影響を与えることもあるし。だからこそ、昴みたいな人に対して自分はどう接したらいいのか。台本を読みながら、ズドンと突き刺さるものがありました。
西野 私が演じた美紀は、どういうことを考えていたのかはほとんど描かれないまま昴の前からいなくなります。そのあと出てくる姿は昂の見ている幻影だということにしましょうと最初にみんなで決めたので、美紀を演じてはいるものの、美紀の心情について考えることはあまりなかったんですね。
坂東 考えようがないもんね。
西野 亡くなってから登場する美紀の服装も、あれは二人で一緒に行ったバリ旅行のときのものなんですよ。きっと昴にとっては、そのときの美紀がいちばん思い出深かったんだろうなって。私は、まだ身近な人を亡くしたことがないので、実際にそうなったときに自分がどうなるかはわからないですけど、岡田(義徳)さん演じる池内のあの感じはいいなと思いました。奥さんは姿がなくなっただけっていう。
坂東 ちゃんと自分の中にはずっといるんだってね。
西野 理想としては、ああいう明るい受け入れ方がいいなって。人はないんですけど、大好きだったワンちゃんを亡くしたことはあって。実家に帰ると今もワンちゃんのスペースがあるんですね。そこにはワンちゃんの好きだったものが並べられていて。家に帰ると、いつもお線香を上げるんですけど、手を合わせてももうそんなに悲壮感はなく。そう思えるのは、それだけの時間が過ぎたから。やっぱり時間の流れって大きいなとは感じますね。
坂東 僕はおじいちゃんとおばあちゃんを亡くしていて。あれ? おじいちゃんとかおばあちゃんも(死別の経験が)ないんだ?
西野 ……ある。でも、まだ小さい頃だったから。すっごい泣いたことくらいしか記憶になくて。
坂東 そっか。俺も小さい頃だったから、そんなに覚えてはいなくて。だから、今回撮影に臨むにあたって父親に話を聞いてみたりもしました。そのとき、どんなふうに思ったかって。当時はなかなか受け入れられなかったらしくて。実感がなさすぎるというのもあるし、葬儀だなんだで忙しくて、受け入れる時間がなかったと言ってました。
西野 今の自分の年齢で、大切な人の死を経験したとして、それに自分が耐えられるのかが想像もつかない。
坂東 わかる。想像するだけでキツい。
西野 そこは子どもの頃よりも深刻にはなるよね。
坂東 もしかしたら池内さんくらい時間が経っていれば、あんなふうに振る舞えるのかもしれないけど、昴は美紀を亡くした直後だから、やっぱり無理だよなって。祭壇に美紀の遺影が置かれているのを見たとき、現場で心にくるものがあった。だから、昴自身も朦朧としているというか、まだ受け止めきれていない状態でいいのかなと思いました。
──美紀の死から物語が始まるため、二人の背景を知らない観客からすれば本来はなかなか感情移入がしづらいのですが、そこで大きな効果を果たしていたのが、二人の写真です。結婚式で使うために昴がセレクトしていた写真がどれも恋人感があって、あの写真のおかげで、美紀が生きていた頃の二人の雰囲気を想像することができました。
坂東 あれを撮ったのは、お互い初めましての日だったんですよ。
西野 怒濤の1日だったよね(笑)。
坂東 時間がない中で何パターンも撮らなきゃいけなかったから。
西野 最初は探り探りなところもあったんですけど、たくさん撮っていくうちに、自然と打ち解けていったというか。終わる頃には、その日が初めましてとは思えない感じにはなっていましたね。
──撮影をしながら、お互いの人となりも見えてきましたか。
西野 すごくワンちゃん的なところがありますよね。
坂東 昴とは正反対の性格です。
西野 明るいなって思いました。
坂東 冷静沈着ではないですね(笑)。
西野 カメラマンさんが坂東さんと関係性のある方で。
坂東 なので、ずっとキャピキャピしてた(笑)。
西野 そこに私も参加させてもらっていました(笑)。
坂東 またすごいシームレスに入ってくるんですよ。そこがすごいなって。
西野 二人が受け入れてくださったおかげです。
坂東 写真はクランクインの前に撮ったんですけど、昴を生きる上で大事な時間になりました。その日の写真をデータでもらってケータイに保存して。何かあったら見返して、ちゃんと美紀との時間があったんだって自分に言い聞かせて。最終日まで、僕のお守りみたいになっていましたね。
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