映画『ありきたりな言葉じゃなくて』で秘密抱えるヒロインに
役は“そうだったかもしれない自分の人生”、小西桜子が演じる上で大切にしていること
2024.12.27 18:00
2024.12.27 18:00
演じることが生きがいなので抵抗なく入り込める
──他のインタビュー記事で、この作品に関しては「現実との地続き感を大切にした」と話されていたのが印象的でした。それはこの作品でも、他の作品でも役や作品へのアプローチは変わらないですか?
そうですね……だいたい物語ってフィクションではあるんですけど、見てくださる方はやっぱり現実を日々生きているわけで。今回の作品も、りえと近いような状況に立たされている人が観客の方にも少なからずいるような気がしたんですね。そういう方たちが観たときに傷ついたりしないよう、なるべく想像力を働かせ、寄り添って演じたいなと思っていました。
──「見る方が傷つかないように」という発想があるんですね。それはいつ頃から持っている気持ちですか?
お芝居を始めてから、何かしら背負っていたりとか、抱えている役を演じさせていただくことが続いたからかもしれません。役と向き合っていったり、ときにはトレーナーさんとかにも教えていただいたりする中で、その物語をフィクション、「自分と切り離した世界」として演じるのではなく、「そうだったかもしれない自分の人生」という風になるべく考えよう、と思うようになったんです。それが本当に実在する人ではないとしても、自分の中で「思ってあげる存在」を持ちながら演じる。このことをいつも意識していますね。
──でもその演じ方は、いわゆる「型」では演じられない分、たくさん考えなくてはいけないし、ときには何か想像していく中で、精神的に辛くなったり、自分も傷つくこともあるのでは?
そうですね……でも、そういうアプローチが“性に合っている”気がするんですよ(笑)。大変ですけど、自分としては楽しくできているというか……楽しいと言ったら語弊がありますけど、自分としては演じることが生きがいというか、自分の中で設定をして、瞬間的に集中してその役を演じるということに全く抵抗なく入り込めるタイプなので、苦ではないといいますか。
──そのスタイルを見つけていったのはいつ頃ですか?
お芝居を始めた頃は周りが気になって集中できないときもありました。でも以前ドラマで大変な役……死を扱うようなテーマのドラマに出演したときに、なかなかうまく行かなくてOKが出ない時があったんです。そうしたら監督さんが「このことだけを思ってあげればいい」と言ってくれて。そのあとは周りが気にならなくなって、お芝居に集中できたんですね。その経験があってからは、演技のときに集中できるようになった気がします。
──そうなると、演じることがより面白くなっていたんじゃないですか?
それはあります。でも実際に本番でどこまで持っていけるかは最初は探り探りで、だんだんと経験を重ねるうちに、そこまで緊張しなくても自然といろんなことを忘れて、すっと集中できるようになっていった感じです。そこからは、演じることがもっと楽しくなっていきましたね。
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