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INTERVIEW

『八犬伝』で初共演、二人はどう表現と向き合っているのか

磯村勇斗×黒木華が思う才能の支え方 転機をくれた恩人の言葉とは

2024.10.28 18:00

2024.10.28 18:00

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男女かかわらず才能を持っている人には弱い

──馬琴は芸術家として後世に名を残すほどの成功をおさめましたが、お百を見ていると夫婦仲はあまり良いものではなかったように思います。時にプライベートを犠牲にすることもあるアーティストとその家族のあり方について、お二人はどんなことを感じましたか。

黒木 アーティストって、基本的に面倒くさい人たちが多いと思うんですよ(笑)。

磯村 あはは。

黒木 でも、本当に人によると思っていて。支えがあった方がうまくいく人もいるでしょうし、孤独に道を極める方が性に合っている人もいるでしょうし。馬琴に関しては、お百の支えがあったから、執筆に集中できたと思うんですよね。家のことは、全部お百がやってくれていた。お百がいなかったら、馬琴がどうなっていたかはわからないですよね。

『八犬伝』より ©︎2024 『八犬伝』FILM PARTNERS.

磯村 逆に、同じアーティスト気質な人同士だとうまくいってなかったかもしれないですよね。だから、こればかりは本当に難しいところだと思いますけど。自分自身を表現者として捉えると、僕も馬琴側なので、自分の世界に入っていく感じに共感はするんですけど、もし家族がいたならば、きっと悲しい思いをさせてしまう瞬間があるんだろうなと思う。だから、一緒にいる人がヒステリックになる前にちゃんと家族の時間をつくらなきゃいけないなって思いますよね。

黒木 家族ですからね。ちゃんとケアすることは大事だと思います。お百ももっと馬琴と過ごしたかったでしょうし。

磯村 そのバランスがちょっと不器用ですよね、馬琴は。

黒木 そうですね。もちろん時代もありますけど。ただ、お百は馬琴の才能のすごさもよくわかっていたんじゃないかと思うんですね。だから、あんなにブツブツ文句を言いながらも離縁しなかった。才能を持っている人ってやっぱり魅力的ですから。

──才能に惚れちゃうと、もう降参みたいな感じはあります。

黒木 何やられても「だって好きだし」と思っちゃいますよね。私自身が表現する側にいる人間なので、才能を持っている人に対しては男性女性かかわらず惹かれます。

磯村 僕も才能には弱いです。特にそれが自分の尊敬できる分野だと、その人がそれにのめり込んでいても、そっと見守っちゃうんじゃないかな。それか、自分にできることがあるならお手伝いもしたいし応援もしたい。周りにそう思わせてしまうところが、その人の才能であり魅力でもあるんですよね。

──では、そんなお二人は「仕事と私、どっちが大事?」と聞かれたらどうしますか。

黒木 私、ちょっと面倒くさいなって思っちゃうかもしれないです(笑)。

磯村 僕もその質問がいちばん嫌ですね(笑)。

黒木 仕事と私、同じ天秤に載せる? みたいな。だって選びようがないじゃないですか。

磯村 ないですよ。

黒木 そう思うなら、もう一緒にいるのをやめた方がいいのかなってなっちゃいますよね。でも、仕事を頑張る姿も含めて好きになってくれたはずだから、おざなりにしすぎてるんだろうなって。だからその言葉が出ないように努力はします。

磯村 僕はその言葉を言われたら何も言えないかも…。引いちゃうかもしれない。そういうふうに見てるんだって。

黒木 うん。

磯村 だから、そのまま言っちゃうかも。「あ、そういうふうに見てるんだ」って。

──お二人はどの役をやっても、その人にしか見えないお芝居をされます。撮影期間中はどうやって役と自分のバランスをとっているんですか。

黒木 あのシーンはどうしたら良かったのかなと考えることはありますけど、基本的にそんなに引きずらないですね。撮影が終わったらもうそのシーンは終わりなので。メイクをとって、よし帰ろう! みたいな(笑)。

磯村 いいなあ。

黒木 考えてはいますよ。考えてはいるけれど。高校演劇をやっていたときに、先生から「冷静な自分を持ってなさい」と教えてもらったことがあって。

磯村 素敵な言葉ですね。

黒木 常に第三者の目線を持ってやりなさい、ということを最初の頃に教えてもらっていたので、役を引きずるという時間が短いのかもしれないです。

磯村 僕は結構その日はずっと考えちゃう人間なんですよね。家に着いても、ご飯どうしようとか考えつつ、お芝居のことも考えてみたいな、わりと行ったり来たりしている感じで。

黒木 そうなんですね。

磯村 ただ、寝て次の日になったらスッキリするタイプです。そしたら新しいアイデアが浮かんできたり、悩んでいたことが大したことないなと思えたり。だから、寝るのがいちばん。あとは部屋の窓を開けたときに季節の匂いが風に乗って運ばれてくるのが好きで。よく窓を開けてボーッとしながら頭を休めるようにしています。

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二人の俳優人生を変えた“愛ある指導”

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作品情報

八犬伝

©︎2024 『八犬伝』FILM PARTNERS.

©︎2024 『八犬伝』FILM PARTNERS.

八犬伝

2024年10月25日(金)より全国ロードショー
配給:キノフィルムズ
2023/日本/G

公式サイトはこちら

スタッフ&キャスト

原作:『八犬伝 上・下』山田風太郎(角川文庫刊)
監督・脚本:曽利文彦
出演:役所広司、内野聖陽、土屋太鳳、渡邊圭祐、鈴木 仁、板垣李光人、水上恒司、松岡広大、佳久 創、藤岡真威人、上杉柊平、河合優実、栗山千明、中村獅童、尾上右近、磯村勇斗、大貫勇輔、立川談春、黒木華、寺島しのぶ
製作:木下グループ
制作プロダクション:unfilm

1992年、静岡県出身。高校時代から地元の劇団に入団し、2014年に俳優デビュー。2017年の連続テレビ小説「ひよっこ」(NHK)でお茶の間に広く知られると、「今日から俺は!!」(NTV)、「サ道」シリーズ(TX)、大河ドラマ「青天を衝け」(NHK)、「恋する母たち」(TBS)など話題のドラマに続々と出演。2022年には映画『ヤクザと家族 The Family』(21)『劇場版 きのう何食べた?』(21)で第45回アカデミー賞新人俳優賞を受賞する。『ビリーバーズ』(22)で映画初主演。『PLAN 75』(22)ではカンヌ国際映画祭のレッドカーペットも踏んだ。2023年は『最後まで行く』『波紋』『渇水』『月』『正欲』と5本の出演作が公開され、『月』で第47回日本アカデミー賞最優秀助演男優賞を受賞。今年はドラマ「不適切にもほどがある!」(TBS)の一人二役も記憶に新しく、秋には映画『八犬伝』(24)の公開も控える。

1990年3月14日、大阪府出身。10年にNODA・MAP番外公演「表に出ろいっ!」でデビュー。14年にベルリン国際映画祭にて『小さいおうち』で日本人女優最年少での銀熊賞、『浅田家!』(20)で第44回日本アカデミー賞最優秀助演女優賞を受賞。主な出演作は、『リップヴァンウィンクルの花嫁』(16)、『日々是好日』(18)、『先生、私の隣に座っていただけませんか?』(21)、『せかいのおきく』(23)、『ほつれる』(23)、『キリエのうた』(23)、『ゴールド・ボーイ』(24)、『青春18×2 君へと続く道』(24)など。待機作には主演作『アイミタガイ』がある。

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