『ゼンブ・オブ・トーキョー』の舞台裏では何が起きていた?
熊切和嘉監督が見た日向坂46四期生、自由だから撮れた“二度と戻れない瞬間”とは
2024.10.25 18:00
2024.10.25 18:00
「熊切和嘉×日向坂46四期生」この組み合わせに驚いた映画ファンも多いだろう。
『私の男』『#マンホール』『658km、陽子の旅』など、多彩なフィルモグラフィで知られる熊切和嘉監督の最新作でメインキャストを務めたのは、演技初挑戦にして映画初出演となるアイドルグループ・日向坂46の四期生11人。10月25日(金)に公開された『ゼンブ・オブ・トーキョー』は、彼女たちが東京を訪れた修学旅行生を演じる青春群像劇だ。
この異色とも言える組み合わせが誕生した経緯とは、そして本作で監督が撮ろうとした“戻れない時代”とは。「あくまで俳優として接した」という、四期生メンバーとの裏話も織り交ぜながら語ってくれた。
正直最初は誰が誰だかさっぱりでした
──多彩なフィルモグラフィで知られる熊切監督ですが、改めてアイドルの映画と向き合うことになった経緯を教えてもらえますでしょうか。
『#マンホール』を以前一緒にやった松下プロデューサーから、「熊切さんらしくないびっくりするような企画があるんですけど」と話をいただいて、それがこの日向坂46の映画だったんです。『#マンホール』まであんまりアイドルの方に興味はなかったんですけど、Hey! Say! JUMPの中島裕翔くんと仕事して、彼がすごくプロフェッショナルだったので、現場でもそうですし、その後の舞台挨拶とか全部含めて、アイドルという仕事をしている人のプロ意識の高さにすごく感銘を受けました。それがあったので、もしアイドルの映画の話が来たらやりたいなっていうのはあったんです。
それと、青春映画も実はやりたいというのがあってですね……若い頃はそんなに思わなかったんですけど、年取ると明らかに「もうあの時代には戻れない」というのがあるので、その感情を掴みたいというか、今回すごくいい機会だなと思ってオファーを受けさせていただきました。
──個人的には大学生の頃に観た『鬼畜大宴会』が今でも大好きです。あの作品も若さが暴発してっていう意味では青春映画ですよね(笑)。
ありがとうございます。そう言われるとそうですね(笑)。
──熊切さんは女性アイドルだとだいたいどの辺の世代ですか?
世代的には……(笑)僕は永作博美さんがいたribbonとか、CoCoとかあの世代です。でも僕はそういう道を通ってこなかったので、日向坂46の名前は知ってましたけど、正直最初は誰が誰かさっぱりわからずでした。
──今作は日向坂46としての彼女たちとオーバーラップさせるような、メタフィクションとも言える手法も盛り込んでいたのが印象的でした。
最初は日向坂46で映画を撮ろうってだけで何も決まってなかったんです。そのうちに四期生で撮ると決まって、映画デビューさせるっていうのは面白そうだなと思いました。何度かプロデューサーと脚本家とでいろんなパターンのストーリーを考えていく中で、最初はいわゆる部活もので、『リンダ リンダ リンダ』じゃないですけど、最後に文化祭で何かやるみたいなので行こうかと思ったんですけど、ちょっとありがちだなって。どこかから修学旅行に来た地方の女子高生が東京をさまよう話ができてきて、面白そうだなと思いました。
それを大きな軸として、彼女たちの実際のエピソードも織り交ぜていきたいなっていうのがあったので、事前にプロデューサーと脚本家で彼女たちに面談をしてもらって、日向坂46に入る前のエピソードだったりを聞き出して、そこから選んで作っていったような感じです。それがちょっとメタフィクション的なところになったのかなと思います。脚本の福田さんがすごくうまく織り込んでくれたと思いますね。
──ラストはいつか彼女たちにも訪れるであろう“卒業”にも収束していくような流れがあったように感じました。
途中でやっぱり「あ、これは卒業に向かう話なんだな」っていうのは、自分の中にあって。それはもちろんアイドルとしての卒業も重なってくるとは思いますし、自分としてはまさにあの時に戻れない感じというか。この年になると、卒業式の日に「明日また会うんだろうな」と思ってたやつと30年以上会ってないなとか、実感としてあるので、最終的には自分の中で二度と戻れない瞬間を撮るみたいなテーマでやっていましたね。
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