FUJIROCK FESTIVAL'24特集 #5
庄村聡泰のフジロック’24滞在記──歴史と今を思い出に焼き付けたDAY3
2024.09.12 17:30
TURNSTILE ©︎ Taio Konishi
2024.09.12 17:30
3日目ヘブンは音楽の時間旅行
ホワイトへ向かう道中のグリーンではクリープハイプが演奏中。いつもより少しだけほろ苦いビールは「社会の窓」のコーラスに合わせ“フッフッフ~”と鼻歌まじりに飲み干してやった。何だかすごく「ありがとう」と思った。
そんなセンチメンタルにしてポエティックな気分はヨレヨレのジザメリによるヨレヨレのロックで鳴らされるヨレヨレのギターノイズが全部台無しにしてくれる。ちなみにこちらに対する感謝の念は、ない(笑)。というわけでTHE JESUS AND MARY CHAIN、自身のイメージにぴったりな辛気臭い曇り空を従えてホワイトへ登場である。勿論往年の名曲も聴きたいしそちらのプレイもちゃんとやってくれるのであるが、今年リリースの新作『Glasgow Eyes』の出来がとっても良く、そちらの楽曲と新旧織り交ぜる形でのライブ運びであった。創設者であるJim Reid(Vo,Gu)とWilliam Reid(Gu,Vo)の御兄弟にベースはよく見りゃPRIMAL SCREAMのSimone Butlerではないか。サマソニ2022のプライマル以来なので意外に早いお帰り、ちょっと嬉しい。なんて気分も最終的には定番ラストの「Reverence」でひたすらに「I wanna die」の連呼を聴かされるため、やっぱり台無しにされてしまう。感謝の念は変わらずないが、そんなジザメリが僕は好きです(笑)。
ダウナーな気分を上げるためにヘブンでYIN YINをお代わりしようかとも思ったのだが、ここは余裕を持ってマーキーへ戻り、より良い位置の確保に勤しむ方が賢明だろう。次のアクトもダウナーであるがジザメリよりは随分マシである。先頃本国で数万人規模での公演も発表されたFONTAINES D.C.だ。かつてない上昇気流に乗らんとする彼らの今を見逃す手はあるまい。先に言ってしまえば世界待望の新作『Romance』の発売が控える中(当日時点)で先行配信中だったあまりにも多幸感溢れる「Favourite」とあまりにも挑戦的な「Starburster」の新曲2曲でライブを終え、オープニングはアルバム1曲目である「Romance」から始められるという旧曲を新曲で挟むセットリストであった。アルバムへの多大なる自信が窺い知れよう。
終演後薔薇の花をオーディエンスに投げる姿が実に絵になるGrian Chatten(Vo)の求心力ももはやとどまる所を知らない無双っぷりであり、月並みな言い方にはなってしまうのだがステージ上のメンバーたちのオーラがビンビンに尖りまくっており、決して激しいアクションをとるバンドではないものの、それは完全にマーキーではない規模感でのライブであったように思う。そんな“今”のモードで余裕たっぷりに鳴らされる「Jackie Down the Line」や「A Hero’s Death」に漂った甘く危険な香りは今思い出しても強烈だ。そしてPAさんと思われるスタッフが着用していたTシャツがRANCIDだったことは確実に“オレでなきゃ見逃しちゃうね”案件でした。
そろそろ、そしていよいよ、フジロック2024最終日の締め方を考えねばならない時間帯となってきてしまった。他の参加者の諸兄諸姉はどう締めたのだろう。筆者はここでタイムマシンに乗るべく一路ヘブンへと向かう。
ライトアップされたボードウォークの美しさに今年も見納めなのかねえなんて少し寂しくなりながらの移動を経てたどり着いたヘブン。こちらはトリ前のCELEBRATION OF THE METERSがプレイ中だ。最終日ヘブンラスト2組はアメリカ南部の伝説であり実は元々ほぼ同期(正しくはその息子たちが率いるバンドではあるが)である2組が配置されている。ほぼ同時代のほぼ同地点で生まれ、その後全く違った形で世界中へと波及していったファンクとサザンロック。ルーツミュージックの出発点から現在地点を同時に探訪できるだなんて、これぞまさしく、音楽のタイムマシンなのだ。
話を戻してCELEBRATION OF THE METERS、THE METERSオリジナルメンバーであるGeorge Porter, Jr(Ba)は2019年のGeorge Porter, Jr&Friends名義での来日以来5年ぶりのご帰還。そんな御大が此度率いるのはThe Neville Brothersの息子たちが結成したDumpstaphunkの面々。こりゃあこちらも盛大に祝って、騒いでやらねば、である。挨拶がわりのジャムセッションから幕を開けたこちらのステージ。名曲「Hey Pocky A-Way」や「People Say」に「A Message from the Meters」といった伝説の名曲の数々が時代を超えて鳴らされていく。度々差し込まれるメンバー各人の火を噴くソロ回しも実に見応えがあったが、やはり御大George Porter, Jrのソロは格別。ラストの「Fire on the Bayou」までバンドもオーディエンスも踊りっぱなしの極上ファンク体験を提供してくれた。
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