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INTERVIEW

舞台『みわこまとめ』主演と演出家が目指すエンタメ像とは

山西竜矢×大西礼芳の同世代トーク 新しくも古くもない、自分たちだからできること

2024.08.29 17:00

2024.08.29 17:00

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人として厚みを感じられる役者になりたい

──大西さんはお笑いはどういうものをご覧になるんですか。

大西 昔のものばっかりです。(恥ずかしそうに)ドリフとか。

山西 昔やな。

大西 モンティ・パイソンとか。

山西 昔やな。

大西 漫才だったら、いとしこいし(夢路いとし・喜味こいし)とか(照)。たぶんお決まりみたいな形の出来上がった笑いに面白さを感じるのかな。

──大西さんの面白さがちょっとわかった気がします(笑)。文字では伝わらないんですけど、インタビューでもずっと訛りが出ていて(大西さんは三重県出身)。こんなに訛る俳優さんは少ないので。

大西 そうなんです。直せないんですね。これが私のアイデンティティみたいな感じで(笑)。

──お二人は30代半ば。もう若手ではないし、かといってベテランのような味も経験値もない。この微妙な世代ならではの戦い方や、自分たちにしかできない表現について考えることはありますか。

山西 10歳下の俳優さんたちと喋ってると、いい意味で世代間の差を感じることが多くて。たとえば、奥さんと言わずにパートナーと言うみたいなことを下の世代の子たちは結構サラッとやれてるんですね。それを見て、なんて素晴らしいんだって思ったり。その世代の子たちがつくってるものを見ると面白いなって思うし、先輩たちに対してもまた違う面白さを感じるし、リスペクトしてます。そういう意味では僕たちは、新しい良さも古い良さもない世代なのかなあって。でも、だからこそできる中庸な美しさがある気がしていて。そういうミドルラインの面白さを突きつめていくことが自分にできることなのかなとは思ったりします。

大西 お芝居って上手い下手とかももちろん重要だと思うんですけど、やっぱり人として何を考えてるかとか、こういう人間でありたいというものを、30歳を越えるとしっかり固めていかなきゃいけないなと思っているんです。ベテランになったからと言って、それは自然に形づくられるものじゃない。私は趣味で漫画も描いてるんですけど、お話をつくるときに、自分がどういうことを大事にしているのか考える瞬間が多くて。そういう作業を繰り返すことで、人としての厚みが生まれてくる。だから、今のうちにちゃんと自分と向き合って、ベテランになったときにその積み上げを感じられる役者でありたいです。

──では最後に。お二人が今すごいと思っているアーティストやカルチャーを教えてください。

大西 ビートルズです。実はずっとビートルズに興味があったわけではなくて。去年、「ナウ・アンド・ゼン」という最後の新曲を出して。ジョン・レノンが残したデモテープをもとにAIの力を使って完成させた楽曲なんですけど、それを聴いてすごいなと思って。しかもそのMVに遊びが見えて、すごく垢抜けてるように思えたんです。そこから興味を持ってビートルズの歴史を調べてみたら、ずっと昔からそういうことをやってきている人なんだなというのがわかったんです。たとえば、『ザ・ビートルズ: Get Back』というドキュメンタリー映画では、メンバー同士がモメているところとか、カッコ悪いところも全部さらけ出している。自分たちのすべてをエンタメにできてしまうのが、ビートルズの面白さ。今改めてビートルズのファンになれて幸せだなって噛みしめています。

山西 僕も過去の作品になるんですけど、矢沢あい先生の『NANA』を最近読み返したらめちゃくちゃ面白いなと思って。もちろん高校の頃ものめり込んで読んでいましたけど、こんな大人な漫画だったんだって改めて感じたんですよね。矢沢あい先生は人間の悪いところもちゃんと描く。『NANA』も人間模様はすごくリアルでヘビーじゃないですか。でもそれをあの美しい絵でショーアップすることで、一大ムーブメントを巻き起こした。映画でも演劇でも、僕は会話劇だったら会話劇、エンタメだったらエンタメと一色に振り切っているものより、いろんな要素が複合しているものが好きで。矢沢あい先生の作品はまさにそれで、やっぱりすごいなと思いました。

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作品情報

ピンク・リバティ『みわこまとめ』

『みわこまとめ』メインビジュアル

『みわこまとめ』メインビジュアル

ピンク・リバティ『みわこまとめ』

日程:2024年8月29日(木)~9月8日(日)
会場:浅草九劇

公式サイトはこちら

スタッフ&キャスト

作・演出:山西竜矢
音楽:渡辺雄司(大田原愚豚舎)
出演:大西礼芳 三河悠冴 村田寛奈 うらじぬの 長友郁真 大石将弘(ままごと/ナイロン100℃) 池岡亮介 稲川悟史(青年団) 斎藤友香莉 山本真莉

1989年香川県生まれ。同志社大学法学部卒。
数年の俳優業を経たのち、独学で脚本・演出を学び、2016年演劇ユニット ピンク・リバティを旗揚げ。映像作品も手がけ、21年に初の長編映画『彼女来来』を公開。同作は若手監督の登竜門MOOSIC LABにて準グランプリ含む三冠を達成したほか、北米最大の日本映画祭 JAPAN CUTSで新人部門最高賞の「大林賞」を受賞するなど、高い評価を得る。その後も短編映画『テン・ストーリーズ』『母と牛と』監督・脚本、メイキングドキュメンタリー『生まれゆく日々』監督・構成、ドラマ『今夜すきやきだよ』『SHUT UP』脚本、KAAT神奈川芸術劇場プロデュース『ジャズ大名』脚本など、ジャンルの垣根を超えて精力的に活動している。

1990年6月29日生まれ、三重県出身。
2013年に演技未経験ながら高橋伴明監『MADE IN JAPAN―こらっー』で主演でデビュー。
その後、土屋貴史監督『花と雨』では東京国際映画祭 日本映画スプラッシュ部門正式出品、
鈴木卓爾監督『嵐電』では第11回TAMA映画祭最優秀作品賞/高崎映画祭最優秀作品賞を受賞した。
主な出演作品は、BS時代劇『あきない世傳 金と銀』(2023/NHK)、『夜明けまでバス停で』(2022)、映画『鯨の骨』(2023)『めぐる未来』(読売テレビ/2024)、映画『見知らぬ人の痛み』(2024)、映画『初級演技レッスン』(2024)。

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