映画『僕の月はきたない』が6月15日に公開されるのを記念して、ヒロインを演じた架乃ゆらの本人執筆による期間限定コラムがスタート!
その名も「架乃ゆらの二日月」。この夏から人生の新たなスタートを迎える彼女の、「これからまた満ちていくぞ!」という決意と夢が込められた本人命名タイトルです。第1回はまず自己紹介を兼ねてこれまでと現在地、そしてサブカル感強めな趣味の話も。夏まで毎回ボリュームたっぷりにお届けします。
演じる楽しさを知った中学時代の話
Bezzy読者の皆様初めまして。架乃ゆらと申します。
まずは自己紹介をさせていただきます。もしかしたら「架乃ゆら」という名前をどこかで見たこと聞いたことがある方もいるかもしれませんが、それは多くの場合アダルト媒体でのことでしょう。
そうなんです。2017年にAVデビューし、S1というメーカーに専属という形で活動してきました。ご存知でしょうかS1。正式名称はS1ナンバーワンスタイルというなんとも仰々しい名前です。このメーカーにはかつて三上悠亜さんや明日花キララさんなどその名を聞くだけでも血が滾ってしまうような大スターばかり在籍していました。
ここで一旦「架乃ゆら」で画像検索してみて下さい。
しましたか?見ましたか?わたしのビジュを。驚きましたか?わたしも驚きました。これからAVでやっていくぞと決めて今の事務所へ入り、マネージャーが汗水垂らしていろんなメーカーへ営業に回ってくれて、ついにデビューするメーカーが決まりました!と一報が。どこのメーカーですか?とわくわくしながら聞きます。S1ですと返ってきます。絶句です。
嘘じゃないかしらと思いました。だってだってS1といえばおっぱいも大きければ顔面も非常に美しく、オーラを纏ったような人しかいないじゃないか。わたしと言ったらそのへんのコンビニなんかでアルバイトしていそうな見た目ですし、確かに地元ではそこそこ、まあまあ、よく見たら可愛い子として過ごしていましたがS1という輝かしいメーカーとわたしの存在はあまりにかけ離れているように感じました。でもせっかく敏腕マネージャーの手腕で専属ということになったなら、とりあえずいっちょやってみっか!…このような流れでわたしのAV人生はスタートしました。
そこからは非常にありがたいことに作品もまあまあ売れて、ファンの数もどんどん増えて、イベントなんかもやらせていただくことになり、恵比寿マスカッツに加入したり卒業したり、映画や舞台やVシネマのお仕事もやらせていただいたり、バラエティにもたまに呼んでいただいたりとたいへん充実した日々を送ってきました。
そして現在地。2024年の7月をもってAV女優を引退することを決めました。ここまでいわばとんとん拍子で活動していたのに、どうして引退なんかするんだろうかと思う方もいるかもしれません。理由はとってもわがままで、もっとお芝居をしたいからです。役者を目指したいというふわふわな理由ひとつで引退を決めました。
急にお芝居というワードが飛び出てきましたが、わたしは元々お芝居をするのが好きでした。元を辿れば中学生時代、部活動を決めあぐねていたわたしはふと目にした演劇部のポスターを頼りに公演を観て、感激しました。
当時から人前に立って目立つのが好きな人間だったわたしは、演劇部の体育館という大きなステージを大胆に使ってめちゃくちゃに目立つ様を見て、これだ!とピンと来てそのまま入部を決めました。
部員も変わり者が多く、台本はネットで拾った既存のものを使っていたのですが、ラストを我々らしくアレンジしてみないかと全員で意見を出しあって脚色してみたり、地区大会で賞をもらう他校の演劇部はほとんどミュージカルのように型にはまった大きなお芝居が主流だったのですが、我々が目指すところはあくまで自然な、お芝居じゃないようなお芝居だよなあ!と部員全員で我流に走り、賞など取れなくても学内公演でいかにウケるかをやりがいとしているような変わった演劇部で3年間を過ごしました。
そこで自分ではない者を演じることの楽しさを知り、部員一丸となって一つの舞台を作り上げる一致団結感もたまらなく楽しく、高校に入っても演劇を続けるつもりだったのですが、たまたま同じ高校に入った一番嫌いな奴が入学するや否や演劇部への入部届を出したことでわたしの高校演劇への道は閉ざされ、そのまま気がついたらAV女優になっていました。
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