2024.05.31 18:00
2024.05.31 18:00
一人でいることは「自分といる」ということ
──今、本当にいろんな作品に出られていて、しかも役の振り幅も広い。そうすると、なかなか自分をフラットな状態に戻すことが難しいと思うんですけど、奈緒さんの心を保っているものがあるとしたら、それは何でしょうか。
自分の中で「挑戦」と「信頼」と「成長」という3つをキーワードとして大事にしていて。どんなに忙しくても、その3つのどれかにふれることだったら結構頑張れるんですね。これもノートを書きはじめて気づいたことで、自分が今大事にしたい3つって何だろうと考えたときに浮かんできたのが、挑戦と信頼と成長でした。
生きていると、毎日いろんな選択をしないといけないじゃないですか。その選択をするときに、自分が大事にしたい軸ができたことで、いろんなことを選びやすくなった。おかげで、あまり迷わなくなりましたし、悩んだりもしなくなりました。
──忙しいと、どうしても自分をおざなりにしちゃいがち。やっぱり自分と向き合うことで、ちょっとずつ豊かになっている感覚はありますか。
あります。いちばんは、一人でいることを一人でいると思わなくなりました。
──というと?
自分といるって思うようになったんです。そう捉えると、あ、自分との時間が少ないなと気づけるようになって、意識的に自分との時間をつくれるようになりました。そこも、自分への見方が変わってよかった部分の一つですね。
──きっと年齢を重ねていくことって、自分を育んでいくことなんだろうなと思います。奈緒さんは、今年が20代ラストイヤー。振り返ってみて、20代はどういう時間でしたか。
お仕事にしても、友人にしても、きっとこれからずっと続くであろう大切な人たちとの関係を育めた20代でした。そこだけは自信があります。振り返ってみれば、すごく幸せだった20代でした。
──ご苦労もあったと思いますが、振り返ると幸せだったがいちばんに来るんですね。
そうですね。やっぱり21歳のときと29歳の今を比べてみたら、元気があるのは圧倒的に21歳のとき。だから、元気があるうちに多少辛いことを経験しておいて良かったと思います。
20代を一生懸命頑張った分、あの頃のしんどさはもう30代ではない気がしていて。結婚とか出産とか、そういう環境の変化がこれから自分に起こるかどうかはわからないですし、そういう変化があったときは、また違った悩みや大変さが生まれてくるんでしょうけど。少なくとも仕事に関しては、20代のうちに辛いことをいっぱい経験したおかげで、いろんなことをまあいいかと思えるようになりました。この先も、20代の自分を裏切らないような30代にしたいです。
──『告白 コンフェッション』は絶体絶命の状況下で繰り広げられる攻防が見ものです。奈緒さんが20代で経験した絶体絶命の出来事といえば?
20代のうちにどうしても海外の映画祭が見たくて、プライベートで釜山国際映画祭に遊びに行ったことがあったんですね。でも、初めてすぎてチケットを買わないといけないことすら知らなくて。一泊だったから、ほとんど手ぶらで、パジャマみたいな格好で行ったら、チケットがないと入れませんと言われて、もうどうしようって。
──どうしたんですか。
私の出ていた映画が出品していたので、そのチラシを見せて、「この映画に出てる!」と言って入れてもらいました。と言っても、そのチラシに私の写真も載ってなかったので恐る恐るでしたが……映画祭のスタッフさんが日本からわざわざ来たんだからと背中を押してくれたんです。もし入れなかったら、私、韓国に何しに行ったんだってなるところでした。あのときが、私の絶体絶命の大ピンチ。ちょっと背筋が凍りました(笑)。
『告白 コンフェッション』場面写真 ©︎2024 福本伸行・かわぐちかいじ/講談社/『告白 コンフェッション』製作委員会