2024.05.27 17:30
2024.05.27 17:30
ときに鬱屈した青年を演じていたかと思えば、キラキラした恋愛ドラマで「憧れの存在」として登場し、一方で凶悪な犯罪者役も。観るたびにその役柄は幅広くクルクルと代わる今注目の若手俳優、果たしてどんな人なのだろう?……そんなこと思いながら対峙した俳優・坂東龍汰は、軽快な口調でオープンにいろいろと話してくれる“好青年”で。二ノ宮隆太郎監督の新作『若武者』で彼が演じた、日常に疑問と鬱屈した感情を持っている「渉」という役とのギャップに驚かされ、同時に俳優としての技量をまざまざと実感させられる。
現在、そして今後も出演作品の公開が相次いでいる彼が、俳優として直面していることとは? 坂東龍汰の“今”を聞いてみた。
二ノ宮監督が“陽”ではない部分を見てくれた
──今作の『若武者』はどういった経緯で出演することになったのでしょう?
二ノ宮隆太郎監督が僕と同じ事務所の所属で、お会いする機会が以前あったんです。それがきっかけで監督が「若者3人の青春物語を撮りたい」と思ってくださったみたいで。5年くらい前の話なんですが。
──そう聞くとかなりの時間がかけられたプロジェクトですし、脚本は「当て書き」ということですよね。最初に脚本を読んだ時はいかがでしたか?
共感できる部分もありましたし、共感できない部分ももちろんあって。渉は僕でもあり、二ノ宮監督を投影したキャラクターでもあるんですよね。そこを自分の中で解釈して、渉という1人のキャラクターにできたらな、と思いました。でも面白かったのは、僕って基本的には「陽」の人間なんですよね。でも渉という役を当ててくださったということは、監督は僕と会って、僕の陽ではない部分……人はそういう部分だけでは作られていない、というのを見てくださったんだなと。もちろん難しそうだなとも思いましたけど、純粋にそれまでやったことのない役でしたし、面白い役をくださったなという点で、すごく楽しみでしたね。
──監督とはどういうお話をされたんですか?
実は、二ノ宮監督と(髙橋)里恩は、以前岩松了さん演出の舞台で共演をしていて、そのときに2人で色々話したことが今回の役柄に投影されているらしいんですよね。でも僕の場合は最初に「坂東君とだいぶ違うキャラクターなので、頑張ってね」の一言ぐらいで、そこから脚本が完成してクランクインするまで2年くらいほとんど喋らず(笑)。多分、事務所の集まりとかで一緒になったときに、僕の立ち振る舞いとか、いろんな人と話してる姿とかを見てくれていたんじゃないかなと。そのうえで実は家に帰ったらこうなんじゃないか……とか、監督の妄想の部分も渉には反映されているんじゃないかな、と思いました。
──渉という役には共感できる部分もあると言われましたが、一番共感できると思った部分は?
具体的に「ここ」ということではないんですけど、誰しも生きていく中で、家族や親友、近い人間の死だったりとか、そういう経験ってあると思うんですよね。それは一生抱えていかなくてはいけないことで、それを負の感情と捉えるのかどうかはまた別として、何かしら心にそれが残り、とらわれている瞬間ってあると思うんですよ。それは何年経ってもそうですし、そういうことを意識せざるをえない瞬間というのは、26年間生きてきたなかで僕の中でもあるんです。
だから自分の人生を振り返ってみて、その当時感じていたことにもう1度向き合うというか……そういう「普段向き合いたくないようなこと」に一度目を向けてみる、そうすることで渉が直面していることにより近づけられるかな、と思いましたね。僕なりにそういう感情を消化して、頑張って変えていこうと思うんですけど、そうできないことはたくさんある。共感できたのはそういう部分でした。
──セリフも少なく、すごく繊細な演技を要求される役柄だったのではと思います。
そうですね。セリフがないからといって、表情とかで説明するようなことは極力省くように意識しました。すごくエネルギーを持った言葉が多いので、そのセリフを受けた渉という人間がどう感じるか、ということだけにフォーカスしようと。だから表面的に何かをしようとか、こういうふうに動こうとか、目で芝居しようとか、そういうことは一切考えなかったです。静止画に見えるくらい動きはないけれども心の中はしっかり動かして、本当に触れて欲しくない部分に触れられた瞬間だけ体が衝動的に動く。その動くスピードや流れも、他の2人とは違う時間が流れている……そういうことを意識していました。
次のページ