関根勤のマニアック映画でモヤモヤをぶっ飛ばせ! 第19回
これぞエンタメ!『RRR』監督の傑作『マガディーラ 勇者転生』にみるインド映画特有の魅力
2024.03.24 12:00
2024.03.24 12:00
日本はもっとインドの映画を買うべき
やはりダンスシーンですかね。まず映画の中の要素として、ああいうのは他にあまりないですからね。昔、クレイジーキャッツの「無責任」シリーズも急にミュージカルシーンが始まるとか、一応日本にもそういうのはあったんですよ。だけどあんなにね、色々な形で時間をかけたものではない。それに、映画のジャンルとしてはミュージカルとして作られていなくて、要するにストレートでまともなストーリーの中に挟み込まれてくるっていうのが面白くて魅力に感じます。
僕、実を言うとミュージカル自体そんなに好きな方ではないんです。『レ・ミゼラブル』みたいな暗いのがダメで、『雨に唄えば』みたいなのは好きなんですけどね。でもインド映画のダンスシーンとかって全然印象が違う。割り切っていて、中途半端じゃないから。だから突然始まっても、スッと観やすいのかもしれない。
あと、男女ともに役者が美しい!あの深みは欧米にも中国、韓国、日本にもあまりない。なんて言えば良いんだろう、黒真珠のような、吸い込まれてしまいそうな魅力ですね。この世のものではないような雰囲気で、女性も男性もすごいんです。そしてとにかく、映画全体に感じるエネルギー!インドって、ものすごい数の映画を撮っているじゃないですか。スターもたくさんいるし、切磋琢磨しているからパワーが日本映画は敵わないですよ。画面から滲み出る制作費がすごくかかっていそうな感じもね。『ムトゥ 踊るマハラジャ』が特にすごくて、CGを使わずに実際に色々な場所に行って踊っているのを撮影しているのが面白いと感じました。やはり、思い切ったところがあるんですよね。それが面白いし、そこに努力とお金をかけるのがすごいなあって思う。なんとも言えないコミカルさもあって、バランスがちょうど良い。「これぞ、エンタメ!」みたいな全部載せ感が好きです。
僕は韓国映画が好きですが、韓国映画ってもっと残酷で残虐で、酷い奴がいっぱい出てくるんですよ。最近観た『コンクリート・ユートピア』もすごく良かったんですけど、ああいう作品はインドでは作られない印象があります。救いがないし、韓国ならではな社会派作品だから。インド映画はハッピーエンドのものがほとんどですから。他に好きなインド映画だと、アミール・カーン主演の『きっと、うまくいく』とか『ダンガル きっと、つよくなる』とか良かったですね。
日本はもっとこれから、インドの映画を買うべきだと思います。『RRR』も大ヒットしたけど、まだ日本人全体を考えると皆インド映画観に行かないじゃないですか。『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』とか『ミッション:インポッシブル』を観に行くから。上映時間が長いっていうハードルがあるけど、『マガディーラ 勇者転生』とかも一切編集し直したい部分がないくらい、無駄がないんですよ。無駄のある2時間半超え映画と、無駄のない2時間半越え映画は意味が変わってきますからね。僕がインド映画を好きな理由は、やはりすごくドラマチックでアクティブで「これぞ、映画!」って感じがするから。小さい頃に映画館で観た東映映画に近いんですよね。だから色々な人に観てほしい。今回紹介した『マガディーラ 勇者転生』も、『RRR』を観た方には是非とも、そうでない人にもお勧めできる作品です。純然たる恋愛映画でありつつ、アクションもダンスもすごい。そしてコメディ要素もあるから、時間がある時に見る映画としてこれがハズレってなることは少ないと思います。誰もがどこかにハマれると思うので、是非。