アメリカ東海岸最大のアニメコンベンションの3日間
Cö shu Nieのニューヨーク滞在記 米ファンを魅了した「Anime NYC」密着レポート
2023.12.18 19:00
Photos by Kaz Skelllington
2023.12.18 19:00
3日目 サイン会&ライブ本番
3日目はついにライブ本番。メンバーは朝からサイン会に参加し、限定Tシャツを購入したファンにサインを応じた。夕方から軽くサウンドチェックを経て、イベントMCが会場を盛り上げた後、ついにCö shu Nieが登場。ダークなオープニングSEに合わせてメンバーがステージに登場すると観客からは歓声が上がる。
今回のAnime NYCでのライブは、Cö shu Nieにとっても特殊なシチュエーションだったと言えるだろう。前回のロサンゼルスのAnime Expoでは「Anime Summer Fes」のヘッドライナーを務め、別途チケットが必要だった公演を見事ソールドアウトしてみせた。特に出演したライブハウスThe Novoは、最近では私が最も好きなアーティストであるジョージ・クリントンとPファンクも出演していたような規模の箱だ。3000人近くを見事ソールドアウトした前回と違い、今回のAnime NYCは参加者であれば無料で入場できるライブで、Cö shu Nieがイベントのオープニングを務めることもあり、いつもよりも緊張感が伝わってきた。
このようないつもと違う環境で、かつイヤモニの音量バランスもサウンドチェックとはかけ離れていることが多い状況では、バンドの“地力”が試される。そんななか、Cö shu Nieは長年インディーズで培った経験と音楽力で、徐々に観客のボルテージを上げていく。“全員がCö shu Nieを見に来たわけではない”という状況でも、アニメタイアップ以外の曲で最も場を盛り上げることができるスキルを持っている。もちろん「絶体絶命」「asphyxia」「give it back」「bullet」のような曲はまるで叫び声のような歓声が上がるが、Cö shu Nieのライブは毎回インディーズ時代の曲「永遠のトルテ」で最高潮に達しているように感じる。音源からもブラッシュアップされ、ライブ用にアレンジされた同曲の「テンション爆上げ要素よくばりセット」のようなライブバージョンも是非音源化してほしい。
Cö shu Nieのライブの面白さの1つは、中村未来がカバーする幅広さと、松本駿介の職人芸のような凄腕ベースプレイのコントラストだ。特に現在の編成でサポートメンバーとして参加している氏木大地(通称:べじゃ)がピアノとキーボードを行き来するなか、中村未来もギターとピンボーカルとキーボードを行き来する。クラシックピアノというバックグラウンドを持った2人、凄腕ロックベーシスト松本駿介、そしてどんな機材トラブルでも動じない経験と信頼を持ったサポートドラマーの大津資盛の4人が奏でるロックは、まさに1つのジャンルの箱に入り切らないほどの手札を見せてくれる。他の、厳しく言ってしまえば“ジェネリック”になってしまいそうなロックバンドとは違い、本人たちの音楽に対する吸収力の強さをライブでも見ることができるのも、Cö shu Nieのライブの醍醐味と言えるだろう。
「iB」ではヒップホップやR&Bのようなグルーヴ感を見せ、「病は花から」ではハイパーポップスに影響されたような強いシンセサウンドが炸裂。最新曲「Burn The Fire」はどストレートなロックリフかと思いきや、ブレイクビーツやジャングルビートがロックとかけ合わさり、ラストにはポストハードコアバンドのようなブレイクダウンで観客を驚かせる。観客はメンバー2人に倣い拳を突き上げ、「永遠のトルテ」では全員がペンライトを振り、まるでスタジアムライブを見ているかのような感覚になる。
ライブ会場にはロサンゼルスのAnime Expoだけではなく、日本でのCö shu Nieのライブも見に行ったというファンもおり、ライブは大盛況に終わる。ラストにはお祝いにステーキとロブスターをご馳走してもらい、ニューヨークでの滞在を終えた。
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