2023.11.09 17:00
脚本・倉持裕掛、演出・杉原邦生という注目のタッグが実現したKAAT神奈川芸術劇場プロデュース『SHELL』が11月11日(土)に上演初日を迎える。テーマは「貌=かたち」。現代を舞台に年齢も性別も違ういくつもの人生を、いくつもの顔をもって生きる特異な人々が登場する不思議な世界を描く。
本作で石井杏奈と共に主演を務めるのが、今年20歳を迎えた秋田汐梨。稽古真っ只中だった10月下旬、意気込みを聞こうと取材場所に向かうと、そこにはぱっつん前髪となった秋田の姿が。この日のメイク中に切ったと笑う彼女に、朗らかさと人懐っこさ、そしてどんなヘアメイクでも自分のものにしてしまえる柔軟性としなやかさを見た。
すごく“みんなで作っている”感じがする
──前髪が随分と短くなりましたが、今日、撮影前のメイクの際にカットしたそうですね。
はい。メイクしながら寝ていたら、いつのまにか短くなっていました(笑)。本当に眠たかったので記憶が断片的なんですが、マネージャーさんが「前髪、ちょっと重たくしようよ」みたいなことを言っているのは聞こえていて。「前髪の量、増やすんだな」と思っていたらいつのまにか眉毛の上になっていました。
──短い前髪はいかがですか?
眉毛の上は一度やったことがありますが、ひさしぶりで。最近ずっと髪型を変えていなかったのでうれしいです。
──新しい髪型も楽しんでいただきながら、舞台『SHELL』のお話を聞かせてください。本作は、年齢も性別も違ういくつもの人生を、いくつもの顔をもって同時に生きる特異な人々が登場する摩訶不思議な物語ですが、脚本を最初に読んだときの感想を教えてください。
すごく不思議な世界観で「これを舞台でどう表現するんだろう?」と思いました。映像だったらなんとなくイメージできますが、人格が入れ替わったりするのをどう舞台で表現するんだろうって。想像がつかないぶんすごくワクワクしました。お話もすごく不思議ですけど、私が演じる未羽(みう)は、その不思議な世界観をこの物語の中で知っていく役。観てくださるお客さんに一番近い立場で演じられる気がしたので、不安は全然なく、ただただ演出が楽しみだなと思いました。
──お稽古をしていて、実際にこの作品を作りはじめていかがですか?
毎日、杉原さんの演出に圧倒されてばっかりです。新しいアイデアが次々出てきて、どんどんブラッシュアップしていくという感じで。別のお仕事などでちょっと稽古を抜けていたりすると、帰ってきたときにはすごく壮大なものになっていたりして。毎日どんどん良くなっていくのを、稽古しながら私自身もすごく実感しているので、本番はさらに良いものになっていくんだろうなと思います。あとは、俳優同士でもアドバイスをし合うカンパニーで。「ここ、こうしたらどうかな?」とか「このシーン、やりにくい?」とか、そういうことをお互いに話しやすい環境に皆さんがしてくださっていて、すごく“みんなで作っている”という感じがします。これまでは、アイデアを思いついても「これは受け入れられないかも」と思って踏み出せないこともあったんですが、そういうことも言い出しやすい雰囲気で、いろいろトライしやすい。それも良い作品を作っていくための大事な要素だと思うので、すごくいい環境でお稽古できているなと思います。
──良い雰囲気なんですね。
はい、本当に笑顔が毎日絶えないです。杉原さんが盛り上げ隊長のような感じで。もちろんピリッとする瞬間もあるし、真剣なときもありますけど、みんなで爆笑するときもあったりして、メリハリがあって居心地がよくて、お稽古に行くのが毎日楽しいです。
──本作で秋田さんは石井杏奈さんとダブル主演。石井杏奈さんにはどのような印象がありましたか?
石井さんとの共演は2度目ですが、前回は私が1話分のゲストという形での出演だったのであまりお話もできなくて、今回が実質初めましてくらい。勝手に、落ち着いていて静かな方なのかなというイメージがあったのですが、共演してみて思ったのは、もちろん落ち着いていらっしゃるんですけど、自分の意見を持っていて、カッコいい性格なのかなと。あと朱里役の水島麻理奈さんが結構おふざけをされる方なんですけど、そのおふざけを一緒にやっているのが石井さんなので、実はおふざけ好きなのかも?(笑) みんなをまとめてくださいますし、「みんなでご飯行けたらいいね」と声をかけてくださったりして、劇中での同級生としての関係性を作ってくださったりするのも石井さん。いてくださるだけで平和な時間が流れる感じがしますし、頼もしいです。
──そんな中で、秋田さんはご自身の演じる未羽をどのように演じたいと思っていますか?
未羽はすごく正義感の強い女の子。だから弱い部分はあまり見せず、セリフの一つ一つにちゃんと意味を持たせられるように強く発言しようと心がけています。あとは感情に素直な女の子でもあって。だから感情を素直に表現したいなと思っているんですが……会場がものすごく広いので、感じたままの感情を出すんだけど、それをちゃんと見ている人にわかってもらえるように、感じたままの感情をどう大きくすればいいのかというところが難しくて。稽古を通して、素直な気持ちを大きく表現できるようになっていけたらいいなと思っています。
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