2023.10.20 19:00
2023.10.20 19:00
2023年2月にメジャー1stフルアルバム『超』をリリースし、3月には初のワンマンライブを行い、初めてアニメタイアップを担当するなど、精力的な活動を続ける2001年生まれの歌い手・超学生。そんな彼が新たな試みとして「超学生×ボカロPプロジェクト」を始動させた。
同プロジェクトは超学生がVOCALOIDクリエイターと「ヴィラン(※悪役キャラクターの総称)」をテーマに楽曲制作をするというもの。第1弾楽曲「ファントム」は長年にわたりヒット曲を発信し続けるDECO*27が作詞作曲を手掛け、超学生はボーカルミックスとマスタリングを担当している。これまで培ったスキルを発揮しながら新しい挑戦をするこのプロジェクトは、彼にどんな影響を及ぼしているのだろうか。始動の経緯と彼がミックスに魅せられる理由を探った結果、彼が感じている自身のアーティストとしての現在地が浮かび上がってきた。
主人公と相反する悪役ならではの深み
──超学生さんは今年の9月、とうとういわくつきのお家からお引越ししたとのことで。
皆さんに協力いただきながら、いろんなものが壊れる家から引っ越しました(笑)。部屋が1個増えたので、音楽の作業だけをする部屋が作れたのが大きいですね。音作りがしやすくなりました。「ファントム」は前の家で録音とミックスをしたんですけど、この後リリースする楽曲からはちょっと違った音になっているんじゃないかなと思います。
──「ファントム」は今年8月から始まった「超学生×ボカロPプロジェクト」の第1弾楽曲ですよね。ご自身の原点と挑戦がブレンドされた企画ではないでしょうか。
去年から「新しい挑戦をしよう」ということで、作家さんを含めいろんな方に楽曲を提供していただいたので、またボカロPとたくさんやりたいねという話が、今年の頭ぐらいからチーム内で出ていたんです。そういう原点回帰に近いものもありつつ、同じテーマをいろんなボカロPの皆さんに作っていただけたら面白いなと思ったんですよね。
──そこで出てきた共通のテーマが「ヴィラン」であると。
2、3年前のダークな曲調ブームを経て、今は「可愛い」ブームだと思うんですよね。ちょっとポップな曲調が流行っているから、そこと若干逆行するものを作りたかったんです。自分に合うものでありつつ、今の流行りには添いすぎないものがテーマだといいなと思っていました。
──「ほかの人がやっていることなら、超学生がやらなくてもいいんじゃない?」という理論ですね。
歌ってみたも含めて、そういう考え方で活動していますね。それで何をテーマにしようか考える期間が続いていたんですけど、ある日パッと「ヴィランがいいんじゃないか?」と思い立って提案しました。ヴィランのイメージが映えるボカロPにお願いして、そのボーカルミックスとマスタリングを僕がやって。オリジナル曲ではあるんですけど、歌ってみたの音源を作るのと同じ手順で進めていきました。
──超学生さんが「ヴィラン」に抱いているイメージとは?
昨今のアニメや映画のヴィランには、根元から全部真っ黒みたいなキャラクターがあんまりいないなと思っていて。ヴィランは過去や生い立ちがあって、主人公と相反する正義を持っているから悪として映ってしまうだけだなと思うんです。いろんなボカロPと話していても「あいつには絶対負けない」みたいな気持ちを素敵に変換する方が多い印象があったので、そういう悪役ならではの深みは、ボカロPなら詩的にかっこよく曲にできるんじゃないかなと思ったんですよね。
──先ほどおっしゃっていたように、今回のプロジェクトではボーカルミックスとマスタリングを超学生さんが担当しています。超学生さんはもともとミックスなど音作りへのこだわりが強いですが、ミックスのどんなところが面白いですか?
ミックスはメイクと同じだと思うんです。自分の声を自分の意志でこんなにかっこよくできるんだ!という感動があるんですよね。録り歌がいいのは大前提なんですけど、声ってミックスによってガラッと変わるなと僕は思っていて。自分でボーカルミックスとマスタリングをやると、ソングライターの方とのやり取りもエンジニアさんを介すよりスムーズですし、何よりかなり僕の勉強になるんです。楽しみつつ、新しい研究をしているみたいな感覚です。本当はパラミックスごと僕がやっても良かったんですけど、ボカロPの個性や意思をより反映していただきたかったので、僕はボーカルに集中することにしました。
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