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関根勤のマニアック映画でモヤモヤをぶっ飛ばせ! 第16回

もし自分だったらと考えるだけで怖い、エンディングのハードさが随一の『オールド・ボーイ』

2023.09.18 12:00

2023.09.18 12:00

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秀逸な心理描写と気になるストーリー展開

『オールド・ボーイ』のすごいところは主人公が狂わなかったところなんですよ。監禁部屋は汚いし、定期的にガスで眠らされて髪を切られるでしょ? 洗脳されて餃子ばっかり食わされて。最初の頃は手を出して「助けてくれ助けてくれ」って言いながら「ここを出たらお前を絶対ぶっ殺す」と悪態をつくんです。でも言った直後に「ごめん今の嘘だった」って謝る(笑)。追い詰められた人間の心情が本当によく描かれています。ただ、よく気が狂わなかったですよね。普通、無理ですよ。だって例えば刑務所だったら、自分が罪を犯して、裁判を経ていろんなインタビューを受けたり検事のところに言って供述書みたいなのを作らされたりして「15年です」って判決を受ける。受刑までに1年近く覚悟を持つ時間があるじゃないですか。加えて、自分が何をしたから刑務所に入るってこともわかっている。それに対してオ・デスは罪の意識すらないから、身に覚えがないわけです。それでも狂わなかったのは、そういう精神の持ち主だから。繊細じゃない男だからこそ、逆に強かったんです。

映画『オールド・ボーイ』より(写真:Photofest/アフロ)

もし自分が彼の立場になって、ある日あんな目に遭ってしまったら……って考えるのが怖い作品ですね。毎日何だったら食べられるかなあ。酢豚とか青椒肉絲、餃子は嫌だけど、薄味チャーハンとかだったらいけるかな。でも、何でも毎日食べるのって辛いですよね。主人公は15年間も監禁されるわけですが、観ているとなぜ監禁されているのか興味が湧くんですよ。その後は、どうやったら彼が脱出できるのか気になる。そしてある日突然解放されると、今度はその理由が気になる。常に観客に興味を持たせるのが上手いんですよね。

そして、あのクライマックスシーン。すべてが明かされた時、びっくりしました。スクリーンを観る顔が歪んだと思います。あの後味の悪さと言ったら。この前観返して、一番印象に残っているのはイ・ウジンが言っていた「お前は忘れている。自分のことじゃないから覚えていないんだよ」という趣旨のセリフ。これが結構深いんですよ。された側は覚えているってこと。本作は、結局デリカシーのないことがどれだけ大きなことになってしまうかを教えてくれる作品です。ちょっとした食い違いとか、本当に気をつけて欲しい(笑)。すごい脚本と演出とキャストの演技をもってして、デリカシーのないことが大きな問題に繋がることを忘れた頃にもう一度教えてくれる。映画史に残る作品なので、映画ファンでまだ観ていない方はぜひ観て欲しいです。まあ、本当にひどい映画ではありますが、あくまで他人事として。そして「これは絶対に作り物、フィクションなんだ」って思いながら安心して観てほしいです。

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作品情報

オールド・ボーイ

『オールド・ボーイ』DVDパッケージ

『オールド・ボーイ』DVDパッケージ

オールド・ボーイ

2003年製作/120分/R18+/韓国
原題:OLDBOY
配給:KADOKAWA

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スタッフ&キャスト

監督:パク・チャヌク
脚本:ワン・ジョユン イム・ジュンヒュン パク・チャヌク
原作:『ルーズ戦記 オールドボーイ』(原作:土屋ガロン 作画:嶺岸信明)
製作:キム・ドンジュ
撮影:チョン・ジョンフン
音楽:イ・ジス チェ・スンヨン シム・ヒョンジュン

出演:
チェ・ミンシク
ユ・ジテ
カン・ヘジョン
チ・デハン
オ・ダルス
キム・ビョンオク
イ・スンシン
チ・デハン
ユン・ジンソ
オ・テギョン
ユ・ヨンソク

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