2023.08.23 18:00
ⓒ2023「ほつれる」製作委員会&COMME DES CINÉMAS
2023.08.23 18:00
9月8日(金)より全国公開される門脇麦主演映画『ほつれる』から、本編映像と著名人の方からの推薦コメントが公開された。
本作は、ある出来事をきっかけに夫や周囲の人々、そして自分自身とゆっくりと向き合っていくひとりの女性の姿を追う物語。綿子と夫・文則の関係は冷め切っており、綿子は友人の紹介で知り合った木村とも頻繁に会うようになっていたが、あるとき木村が事故に遭って帰らぬ人となってしまう。心の支えとなっていた木村の死を受け入れることができないまま変わらない日常を過ごす綿子は、揺れ動く心を抱え、木村との思い出の地をたどる。
門脇麦は主人公・綿子役として、全シーンを通してカメラが捉える綿子の揺れる心の機微を繊細な佇まいで演じ上げる。夫・文則には、舞台・映画・ドラマとマルチに活躍する田村健太郎。さらに、その存在が大きな転回点となる木村を染谷将太、綿子の親友を黒木華が演じ、絡みあう深甚な人間模様を描き出す。監督を務めるのは、『もはやしずか』『ザ・ウェルキン』で第30回読売演劇大賞優秀演出家賞するなど演劇界で注目を集める気鋭の演出家・加藤拓也。音楽は『ドライブ・マイ・カー』で第16回アジア・フィルム・アワード最優秀音楽賞を受賞した音楽家・石橋英子が担当する。
公開された本編映像は、木村と綿子が食事を終え、別れるシーンから始まる。「じゃあ俺タクシーあっちで拾ってくから」「うん、木曜日ね」小さく手を振りお店の前で別れ、背を向けて歩きはじめる綿子。すれ違いの続く夫・文則へ電話をする最中、背後から衝突音が響き渡る。夫の会話を止めて振り返ると、路上に倒れ込む木村の姿が見える。とっさに通報し「救急車をお願いします。車と人です。場所は……」と話したまま言葉を詰まらせ電話を切る。事故現場での倒れる木村を目前にしながら、その場から立ち去る綿子の複雑な心情をワンカットで捉えている。
吉田羊(俳優)コメント
見て見ぬフリをするのも向き合うのも、どちらも体力がいる。
いっそ忘れられたらいいのになぁと、記憶の片隅に追いやっていたあのことを思い出した。あちこちに横たわる饒舌な沈黙とひた走るラストが、胸に迫って印象的。
広瀬アリス(俳優)コメント
「結婚」が現実的になってきた世代としては、結婚に対して、色々な考えを知ることで選ぶ範囲がさらに縮まってしまう、と思っていました。少し余裕のある生活をしてても、優しい言葉をかけてくれても、思いやりをもって寄り添ってくれても、周りからこれ以上の幸せがなさそうに見えても、満たされない”何か”が自分でちゃんと分かった時、本当の幸せを見つけられるんだと思いました。でもそれはきっと綺麗事では、終わらないこともあったりするはずです。良くも悪くも人間の本質、欲望をシンプルに描いた作品だったと思いました。
伊藤沙莉(俳優)コメント
気付かなかったり
気付かないふりをしたり
あとまわしにしたり
そんなことで修復が難しくなる。
そうとわかっていても
そうなってしまう。
だけど、それはとても人間らしい。
辞書の「ほつれる」の意味の
最後らへんにこの映画を書いてほしい。
そのくらいしっくりきた。
木竜麻生(俳優)コメント
静かに、ゆっくりと、でも凄い速さで揺らいでいく。
加藤さんの作品をみると、いつもそこにいるひとの内側が、
じわじわとぬるい毒のように沁みてきます、それも自分や自分の隣にいるひとのことのように。
言葉で形容し難い感覚を、繊細な言葉たちと演出で立ち上げ、わたしたちに手渡してくれます。
中田クルミ(俳優)コメント
ふとした言葉や目線のひとつひとつによって、
人々の人生は簡単にほつれたり解けたりしてゆく。
生活の中にあるリアルな言葉を紡ぐ圧倒的な脚本の力、
淡々と過ぎる生活の中の最低限の音楽、
そして俳優を信じている抒情的な画の数々。
加藤拓也さんの世界に浸ることは、自分の人生との対話のような気持ちになる。
戸塚純貴(俳優)コメント
加藤拓也が書く日常は、いつももはやしずかではない。
この映画の登場人物の誰にもなりたくはないが、どこか全員に共感はできる。
会話は軽快でも切ない、そんな現実と洞察の生々しさが憎らしい。
長井短(演劇モデル)コメント
愛するってことを自分自身に誓った時、心の中に玉結びができる。ほどけほつれてしまわないように、何度も何度も玉結びをするうちに、その玉は愛するに充分な大きさになってしまって、だからもっと玉結び。あなたを愛する分だけ大きくなってしまう玉を、私たちどうしたらいいんだろうね綿子さん。
尾崎世界観 (クリープハイプ)コメント
誰かがやってるテトリスの、ゲームオーバー直前の悪あがきを観てるみたい。
綿子が追い詰められていくのを他人事だと思っていたら、ブロックみたいに、今の自分にピタリとはまった。
こんなにもザラザラした物語で埋まる自分の心が怖い。
NON STYLE 石田明(芸人)コメント
修復できそうでできないのがほつれ。
時間が経てば経つほどどうすることもなくなるのがほつれ。
人はそのほつれを埋めるために、また新たなほつれを生んでしまう。
人間の弱さと浅はかさと情けなさが詰まりながらも愛おしく思えてしまう作品。
ちなみに僕は彼女が車を運転するシーンがすきだ。彼女の生き方全てを表しているようで・・・。
山崎ナオコーラ(作家)コメント
その場、その場、をなんとかすり抜けて生きていって、あふれる後悔をどうしたらいいのか。人間の浅さと深さをつまびらかにする。
環ROY(音楽家)コメント
コミュニケーションという観念には、軋轢や衝突が内包されている。むしろ軋轢や衝突こそがコミュニケーションの核心なのかもしれない。コミュニケーションによって見出されたほつれを、断続的に改修し続けることが、密接な人間関係には不可欠だ。このことを心に刻み、覇気を持って生きていきたいと感じた。
児玉美月(映画文筆家)コメント
加藤拓也監督は、すでに確固たる自らの映像表現を築き上げた。
この現実世界に存する人間の感情と会話が”生”のままスクリーンに投げ出されてもたらされる異化に、創造的果実が十全と実っている。
SYO(物書き)コメント
日常ですれ違う、澄ました顔とスカした態度の富裕層。
身につける服も、暮らす空間も洗練されている勝ち組。
本作はかれらの痛々しく空疎な心を解剖し、公開する。
それを見て哂う自分も大概ほつれてる。もう繕えない。