『Love Will Tear Us Apart』で刻んだ人生の新たな一幕
「正しさから外れた愛は幸福か?」青木柚が価値観を超越して広げたキャパシティ
2023.08.19 12:00
2023.08.19 12:00
昨年はドラマ『カムカムエヴリバディ』『モアザンワーズ』、映画『はだかのゆめ』などに出演。今年に入ってからは、見上愛とのダブル主演ドラマ『往生際の意味を知れ!』での名演も記憶に新しい青木柚。今後も主演映画を多数控えており、今まさに名優街道を真っしぐらに進んでいる。
8月19日公開の映画『Love Will Tear Us Apart』には久保田紗友演じる主人公・真下わかばと深い因縁があるキャラクターで出演。ロマンス×サスペンス×スラッシャー×コメディを謳う本作で挑んだ“かつてない”役に彼はどう向き合い、解釈し、それを体現したのか。憧れの名優達とも共演を果たし、刺激的だったという撮影の記憶を辿ってもらった。
⾃分だったら……という倫理感を全部壊した
──映画『Love Will Tear Us Apart』ですが、インタビューする側としても……。
難しいですよね!
──率直に、出演していかがでしたか?
オーディションで「このシーンを演じますよ」と渡された台本が、ホラー要素はなく、主⼈公ともう⼀⼈が張り詰めていてお互いの愛が爆発するみたいなシーンだったので、そういった愛を突き詰めることがメインのお話なのかなと最初は思っていたんです。出演が決まってから脚本を読むと、思っていた以上に突き抜けていたのと、シリアスなだけじゃない可笑しさがあって驚きました。印象としてはいろんなジャンルが⼊り混じっていて、テーマパーク感がある作品かなと思いました。
──オーディションでは全容をまだ知らないまま……?
僕の記憶が正しければ、全容は知らなかったはず。オーディションで演じる台本だけを読んでいたので。大まかな方向性はなんとなく感じ取れていたんですけど、細かいユーモアのあるシーンとか他の役者さんが達する境地の描写までは知らなかったので、最初に感じたイメージとはいい意味で違いました。
──観客もそうだし、演者の皆さんも一種のブラフを楽しむような。こういった作品は好きで見られていましたか?
この映画がどんなジャンルなのかっていうのもあまり分かってないんですけど、でもこういうインパクトのある、⾎が出たりする映画は観ることがあります。映像の中で⾒る暴⼒って、どこか魅⼒的に感じちゃう部分があって。もちろんそれが正しいとかではなく、⾒るものとしての好みで。『Love Will Tear Us Apart』は、何かが炸裂している場⾯が多くて⾯⽩いなと思いました。
──映像の中の暴力って、やってはいけないことだからこその魅力だと思うんですが、演じる上でもメーターを割り切って楽しんだ感覚なのでしょうか?
⾃分⾃⾝が演じた役や、作品の根底にある“ポジティブじゃない⾯”にはすごく共感できました。でもそこから起きることには⾃分の中にない感情や状況が多かったので、メーターを振って割り切ったという感覚はないですけど、⾃分だけはその事柄と感情を信じてあげなきゃなと思いました。個⼈としての「いや、これはよくないよ」という考えは撮影中はあまり気にしないようにしていました。
──面白いですね。このキャラクター自身は自分で役を降ろしたのか、それとも現場で監督とやり取りするなどして作っていったのでしょうか?
役を降ろすって感覚は全くなくて。⽇頃感じる怒りや憎しみ、寂しさの向こう側まで⾏ってしまった役柄ということは⾃分でも想像できていました。だから、⾃分が演じた役柄と同じ道を、誰もが途中まで歩んだことがあるんじゃないかなと思います。撮影では、そういった道を⾃分と照らし合わせて、⾃分の価値観だったらこっちを優先するという倫理感などを全部壊して、誰かを傷つけたかったというより“そうせざるを得ない状況に追い込まれた”ということを⾃分の中で敏感に強く感じ続けることで、役や作品を⾃分の中に落とし込みました。もちろん監督ともいろいろ話し合いました。
──監督が考えているキャラクター像もはっきりしている印象を持ったのですが、役者さんが入ることによって、さらに増幅させているような感覚もありますね。
個性豊かなキャラクターがたくさん出てきて、僕自身、観客としても楽しんでいましたね。
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