本間昭光のMUSIC HOSPITAL 第11回 wacci橋口洋平
wacci橋口洋平と考える音楽家の人生、さらに世界を広げるために40代からすべきこと
2023.07.06 20:00
2023.07.06 20:00
どういう言葉をかけるかで作品力が全然変わる(本間)
橋口 本間さんの歌詞のアドバイス、具体的で的確ですよね。「大丈夫」のときもDメロ部分を変えるように言われて、一生懸命考えて、めっちゃよくなったんですよ。「もうちょっとここはちゃんといいこと言ったほうがいい」みたいなことをおっしゃっていて。
本間 言いましたっけ?(笑)
橋口 言ったんですよ(笑)。「世界は涙じゃ変わらない でも君は変わってゆけるさ」っていうフレーズがあるんですけど、もっと情景的な感じだったんですよ。でも、そうじゃなくて核心的なことを言ったほうがいいっておっしゃってくれて。結果それを直すとめちゃめちゃよくなるっていうのを僕は知ってるんで(笑)。また本間さんとご一緒させていただくことがあったら、歌詞の面の本間ホスピタルを……(笑)。
本間 すみません、生意気に(笑)。歌詞って本当に大事ですよね。アレンジしてても「もうちょっと歌詞がこうならないかな」とか、歌を録っているときは特に思います。歌っているのが、もし書いてる人だったらオーダーすることもあるんですけど。
橋口 本間さんは言葉とメロディの組み合わせみたいなことよりも、歌詞の内容をおっしゃっていて。それって結構珍しくないですか?
本間 長いこと槇原くんをやってたのは大きいかもしれないな。歌詞のところも学んだし、槇原敬之のプロデューサーをやってた木﨑賢治さんが、作詞ディレクションの大家(たいか)みたいな方だから、追い込み方や伝え方の表現がレコーディングを見ててものすごく勉強になりました。どういう言葉をかけてあげるかで作品力が全然変わるのね。一瞬で花開くぐらい歌がよくなることもあるし、ここでこれ言っちゃうとまずいなみたいな発言を誰か投げちゃったりすると、そこから何時間か深みにはまって抜け出せなかったり。リクエストするときに抽象的でも具体的過ぎてもダメ。具体的な例えを出して、問いかけるみたいな感じにするのが一番いいと思う。
橋口 絶妙な距離感というか。
本間 サウンドプロデュースとはちょっと違うんですよね。歌詞とかに踏み込んで意見を投げてみる。それでも違うと思ったら、それはアーティストの意思だからそっちに行こうって当然なるわけだけどね。ところで、wacciは今年下半期の目標とかはある?
橋口 最近すごく曲が広がって新しいお客さん増えてるんで、そういう人たちに曲だけじゃなくてwacci自体を好きになってもらえるようなライブをすることが直近の目標というか、絶対やらなきゃいけないことというか。
本間 フェスにもいろいろ出ますもんね。
橋口 フェスも曲を知ってるからか、たくさんの人がステージには来てくれるんで、ちゃんとその人たちをつかまなきゃって気負うことも多いんですけど。
本間 楽しみですね。演奏面でメンバーと話すことってあるの?
橋口 僕以外の4人は、そこに対してはひたすらディスカッションしてやってます。
本間 どんどんスタジオミュージシャンのような巧さに向かってると思う(笑)。
橋口 僕以外がどんどんうまくなっていて(笑)。そろそろ外からの仕事がどんどん来てもいいプレイヤーになってると思います。この歳になってきたら、各自楽器でもちゃんと仕事できるはずなんで、ぜひ機会を与えてやってください(笑)。
本間 今後の方向性をメンバーがどう考えてるのかがすごく気になってて。うまい人が集まってやってるバンドはたくさんあると思うんですけど、wacciの今後のサウンドの志向として、4人が織り成す音をどういう感じにしたいなとかある?
橋口 どんどんアレンジの幅が広がってきた中で、うちみたいなバンドの音楽スタイルってあんまりいないと思うんです。バンドならではのまとまりみたいなのは音でも表れているし、たまにシンガーの人とツーマンとかやったときにみんな「すごい鳥肌が立った」って言うんです。「橋口くん、普段ものすごい素晴らしい音を背負ってやってるんだね」ってほぼ100%の確率で言われるんで。そこは感謝していかないとなとは思うんです。
本間 本当に、そういうバンドいないですよね。みんなちょっと演奏が乱暴であったりとか、完全にロックに特化した方向性だったりとか。サポートを従えたバンドのスタイルにも近いように見えるんだけど。
橋口 そういう意味では“いなたさ”もあるし(笑)。
本間 替えのきかないメンバーになるかもですね、より一層。
橋口 こういうスタイルをあえてバンドでやり続けていった先で、いつか“おもしろみ”として届けばいいですよね。さらに広がる曲を作るしかないですね。今2発屋なんで、3発屋いきたいです(笑)。やっぱり最初に「大丈夫」があったからこそ、今があると思います。
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