2023.06.20 18:00
SHERBETS(2023年6月8日 Zepp Shinjuku公演より)写真:岩佐 篤樹
2023.06.20 18:00
浅井健一(Vo, Gt)と福士久美子(Key, Cho)による「知らない道」の♪Hoo Wooという掛け声は、SHERBETSが4月26日にリリースした『Midnight Chocolate』の聴きどころの1つだと思っている。その♪Hoo Wooをいつか生で聴いてみたいという願いがこの日2曲目で叶ってしまい、筆者はもう感無量だった、という個人的な感想はさておき、前掲の『Midnight Chocolate』を引っ提げ、5月18日の新潟公演から全国各地を廻ってきた「SHERBETS 25th ANNIVERSARY TOUR Midnight Chocolate」が6月8日、東京のZepp Shinjukuでセミファイナルを迎えた。
登場SEの「虹の彼方に」から繋げたインダストリアル風のノイズからなだれこんだ「カミソリソング」から一気に5曲をたたみかけ、渾身の演奏とともに見せつけた現在の彼らがオーラのように纏っている凄みをいきなり目の当たりにして、今回のツアーの充実ぶりを思わずにいられなかった。
刹那的な衝動も歌いながら、同時にこんな世界にもある綺麗なものにも浅井は光を当ててきたが、そんな彼らしいポジティブな思想が『Midnight Chocolate』にはこれまで以上に色濃く反映されていたことを考えれば、「25th ANNIVESARY」と謳ったツアーに臨む浅井ら、メンバー達の気持ちはそもそも最初から掻き立てられていたに違いない。その上で各地熱演を繰り広げながら、さらにバンドの演奏を研ぎ澄ましてきたことは、《何かをなくしたってゆうことか》と歌いながら、浅井の歌声が持つイノセントはこれっぽっちも失われていないことを印象づけた「知らない道」、そこから一転、浅井の激しいシャウトが空間を切り裂いたように思えた「HIGH SCHOOL」を含む、熱度と緊張感に満ちた序盤の演奏を見ただけでも容易に想像することができた。
しかし、重要なのはそこじゃない。いや、もちろん、そこも重要なのだが、このライブレポートが一番伝えなきゃいけないことは、この日のライブがツアーや25周年のアニバーサリーを締めくくるマイルストーンであると同時に25年を経てもなお、前進していこうというSHERBETSの新たなステートメントになっていたということだ。
その意味ではバンドの演奏もさることながら、ストーリーやメッセージに裏付けられているんじゃないかと想像させたセットリストも実に見事だったと思う。
浅井「SHERBETS、25年も経ってしまいました。その間、いろいろありました。去年は先輩の体が壊れてしまいましたが、スーパー・ベーシスト、仲田憲市(Ba)。復活しました!」
仲田「ただいま!」
浅井「最近は大丈夫?」
仲田「バリバリ元気」
浅井「本当に? 本当だよね?」
浅井と仲田の、そんなやり取りに加え、「みんなもぶっとんでいきましょう」「うちらはいい音楽をみなさんに伝えようと一生懸命、いままでやってきて、CDを聴いたり、こうやってコンサートに来たりしてくれるみなさんのおかげで続けてこられました。やっぱり一生懸命やることが何よりも一番いいことだとつくづく思います」「朝まで騒ごうぜ!」とそれぞれに語った福士、外村公敏(Dr)、浅井の挨拶を挟んでからの中盤は、SHERBETS流のレゲエ・ナンバー「セダンとクーペ」からテンポを落として、「勝手にしやがれ」「水」といったトラッド・フォーキーとも、幻想的とも言えるスロー・ナンバーを、福士の美しい歌声もフィーチャーしながら立て続けに披露。
SHERBETSの雄大とも壮大とも言えるスケールを見せつけると、今度は『Midnight Chocolate』からクールな「ROLL」、浅井が鳴らすタンバリンと仲田が奏でる跳ねるベース・リフに合わせ、観客が手を叩いたファンキーな「Spread City」というそれぞれに違う魅力を持ったロックンロールをたたみかけ、バンドの演奏は一気に白熱。そして、そこからさらに一転、緊張感に満ちたトラッド・フォーキーな魅力もあるバラード「星空の方があったかい」に繋げるというジェットコースターを思わせる感情のアップダウンを味わわせながら、バンドは観客を思う存分、翻弄する。曲と曲の間はもちろん、演奏中も上がる歓声からは観客の興奮と熱狂が窺えた。
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