ヒップホップで社会を生き抜く! 第20回
ファンクのパイオニア、ジョージ・クリントンのレガシーから学ぶ “次世代に繋げる精神”
2023.05.28 16:00
ジョージ・クリントン
2023.05.28 16:00
次世代を愛することで永遠の存在になった
また、彼は「サンプリングされたいし、そうやって次の世代をインスパイアするために音楽を作る」という旨を語っており、若い世代を認めることによって常に最先端の音楽と関わってきた。特に1992年にドクター・ドレーとスヌープ・ドッグが『The Chronic』にて作り上げたGファンクというジャンルは、名前通りPファンクにインスパイアされたものであり、『The Chronic』ではPファンク関連の曲が8曲サンプリングされている。スヌープ・ドッグのデビューシングル「Who Am I (What’s My Name?)」では、ジョージ・クリントンの「Atomic Dog」、ファンカデリックの「(Not Just) Knee Deep」、パーラメントの「Tear the Roof Off the Sucker (Give Up the Funk)」が使用されている。
スヌープ・ドッグはジョージ・クリントンを幼い頃から尊敬しており、過去に何度も彼から受けた影響を語っている。以前彼はローリング・ストーン誌のインタビューで、ジョージ・クリントンの長いキャリアの秘訣についての考えを述べている。
「ブーツィ・コリンズのように、ジョージ・クリントンは才能を世に出す手助けをしてくれるんだ。俺もその精神を彼から引き継いで、スタジオでリーダーを務めるようになった。
ヒップホップが出てきて、過去の音楽をサンプリングするようになったときでも、ジョージ・クリントンはヒップホップを敵対視することはなかった。逆に彼は自分の音楽を快く使用させてくれた。それだけではなく、一緒にコラボもしてくれたんだ。彼は俺らに居場所をくれたんだ。ヒップホップ・コミュニティを敵対視して、仲違いするベテランも多くいたし、そうやって消えていった人たちも多い。でもジョージ・クリントンやジェームズ・ブラウンはサンプリングの許可をくれた。次世代を愛することによって、彼らは永遠の存在となったんだ。“お前らは自分のやるべきことをやれ”って後押しをしてくれた。俺は彼のことを一生愛すよ」
ジョージ・クリントンに大きな恩を感じており、感謝をしていると語ったスヌープ・ドッグ。ジョージ・クリントンに大きく感謝をしたのはスヌープ・ドッグだけではなく、「Super Thug」「Nothin’」などのヒット曲で知られているラッパーN.O.R.E.も「俺はヒップホップを通してキャリアを作った。人生もヒップホップを通して作れたし、人々を救うことができた。でもあなたがいなければ、そしてあなたのことをリスペクトした先人たちがいなければ、俺たちはここにはいないだろう」とコメントをし、ヒップホップカルチャーにとっていかにジョージ・クリントンの功績が大きいかを語った。
チャイルディッシュ・ガンビーノ「Redbone」の作曲者の一人であり、ケンドリック・ラマーの名作『To Pimp A Butterfly』のオープニングトラック「Wesley’s Theory」にも参加しているジョージ・クリントンは次世代にクリエイティビティを提供し、共に音楽を作ることにより、何度もメインストリームに復活をしている。団結と自由を示したジョージ・クリントンのファンク精神は今でも受け継がれているが、彼らが提唱したファンクは数多くの音楽のDNAとなっている。
「ファンクは踊りたくなって腰が動く音楽のDNAだ。スライ・ストーンはロングテール効果と呼んでいる。エレクトロニック音楽、ヒップホップ、ロックンロールでもファンクを聴くことができる。クラシカルのように、永遠に残る音楽だ。でも当時はそのインパクトを残すとは思われていなかった。当時、ミュージシャンたちは見下しながら“ファンキーだな”って言っていたけど、尊敬をせざるを得ないほど重要なものにしたかった。私たちは成功したと思うよ」