2023.04.28 17:00
2023.04.28 17:00
はじめてアドレナリンを感じた作品
──石井さんご自身が、身を削りたいほど堕ちたものや「推し」たいものはありますか?
仕事ですね! 仕事モードの自分に「頑張れ!」という「自分自身を推す」感覚なんですけど。これはもう、とにかく身を削ってます。今回の作品でも、怒鳴ってるシーンでは周りの音が聞こえなくなったりするんですよ(笑)。そういうときは「ああ、身を削ってるな」と思うのですが、もうそれすら嬉しいといいますか、やはりこのお仕事が、お芝居が大好きなんだなと。特にこういう爆発する感じの演技のときは特に、あまり寝てない、たくさんの台詞を覚えなくてはいけなくて疲れてるなど、自分自身を追い込んだほうがいい演技ができるというのがありまして(笑)。なのでこういった体力勝負は今しかできないんでしょうけど、頑張れ自分! と思いながらやってます。
──グループでの活動と並行して俳優としてのキャリアを積まれてきましたよね。俳優という仕事の魅力を実感されたのはいつ頃だったんでしょうか。
ずっと演技のお仕事は「楽しいな」と思っていました。でもはっきりとアドレナリンが出る感覚……何もかも忘れて「今この瞬間が楽しい」と思える、例えるならE-girlsでライブのステージに立っていたときのような感覚になったのを実感したのは、映画『ソロモンの偽証』(2015年公開)のときでした。
──1万人もの候補者の中から1年かけて選考・研修期間を経て中学生役33人を選出したりと、かなり特殊かつハードな現場だったとお伺いしました。しかも14歳の役ですから、皆さん多感な10代ですよね……。
私はいじめられる役だったので、稽古では輪になってみんなに実際に悪口を言われたりしました。もう本当にきつくて。でもそれを経て、本番の撮影のときには「ここまでやったから、好きにやってくれ」と成島出監督に言われて……本当に撮影中は何も言われず、助言だけだったんです。それが「認められた」という感じもしましたし、演じていてさっき言った「アドレナリンが出るような感覚」を初めて味わった気がしたんです。そして作品も評価されることで、自分のやりがいにもつながるということを知りました。そこから「演じる」ということがもっと楽しくなった気がします。実はそれまでは、自分の声も顔も大嫌いだったんですよ。試写などがあったらずっと目を瞑っていたいというくらい(笑)。
──そうだったんですか!? 当時はNHKのドラマ『LIVE! LOVE! SING! 生きて愛して歌うこと』(2015年)に主演されたり、大きな作品への出演が立て続いていた印象でした。プレッシャーなどはなかったのでしょうか?
もちろんありましたよ! 自分なんかでよかったのか、こんな大作で自分がこの役をできるのか……今でもそうで、今回のドラマでも主演という肩書きを自分が担えるのか、原作ファンの方々を裏切らないお芝居ができるのかなど、常にそういうプレッシャーと戦っています。それでも、そういったものを乗り越えて最後には「楽しい」が勝つんですよ。
──ちなみにどんな時が一番「楽しい」と思いますか?
例えば怒鳴るシーンや、一人だとどうしても練習しづらいような演技ってあるじゃないですか。現場で初めて自分の怒鳴り声を聞いて「私、こんな声が出るんだ!?」という発見になったり、それがまた自分の演技の幅を広げてくれたり。またそういう場面だと、ある意味自分が「無双状態」みたいになる瞬間があるんですよ、それがたまらなくて(笑)。そういった毎回の積み重ねがとにかく楽しいです。
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