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「全てを語りつくした」 監督引退示唆発言も

『ロリエ・ゴドローと、あの夜のこと』グザヴィエ・ドランが製作秘話を語る

2023.02.23 13:00

© Fred Gervais

2023.02.23 13:00

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Amazon Prime Video内「スターチャンネルEX」にて2月24日(金)より日本で初配信され、3月6日(月)からは「BS10 スターチャンネル」でも放送されるTVドラマ『ロリエ・ゴドローと、あの夜のこと』(全5話)からディレクターズ・ノートと日本版キーアートが公開された。

ケベック州の郊外を舞台に、30年前に起きた事件に時を超えてかき乱される家族の姿を、過去と現在を行き来しながら緊迫感たっぷりに描く本作。メインとなるのはそれぞれが問題を抱える4人の兄妹とその家族で、ラストの15分まで展開が全く読めないサスペンスとなっている。その一方で、ドランが今まで描き続けてきた家族の物語でもあり、キャラクターたちが事件に、お互いに、そして自分自身に向き合う姿を緻密な構成で映し出している。ホラーやスリラーといったジャンル映画の質感も持ちながら、家族を描いたヒューマンドラマでもあるという、ドランにしか描けない新たな世界感が生み出された。なお、本作はドランのTVドラマ初挑戦作となる。

キャストにはケベック州出身の実力派俳優が集結し、ドラン作品では母親役で常連のカナダを代表する名優アンヌ・ドルヴァルが、本作でも4兄妹の母親役で出演。主要キャストの4人は、原作となった2019年の舞台劇のオリジナルキャストがそのまま同じ役を演じており、骨太のキャスティングも見どころ。他にも『レ・ミゼラブル(2019年)』でセザール賞の有望若手男優賞を受賞したジブリル・ゾンガが、ジュリアンの大学の教員役で出演するなど、脇を固める実力派俳優陣にも注目。

初解禁されたディレクターズ・ノートでは、今まで母と息子の親子関係や家族間の確執、疎外された人々といったテーマを中心に物語を描いてきたドランが10年の月日を経て心境に変化があったことを語る。子どもの頃からホラーやスリラーといったジャンル映画に夢中になりながらも、新人時代はなかなか踏み出せなかったと言うドラン。2011年、ミシェル・マルク・ブシャールの舞台『トム・アット・ザ・ファーム』を観てジャンル作品の映像化に踏み切った。そして再び導かれたように2019年に同じブシャールの本作の原案になった同名舞台『La nuit où Laurier Gaudreault s’est réveillé(原題)』に大きな衝撃を受け、本作の映像化を確信した。

「『ロリエ・ゴドローと、あの夜のこと』はホラーとスリラーの要素が強く出ているように見えますが、ヒューマンドラマも描かれています。ラルーシュ家の幸せだった日々、憂鬱な日々、過去のいくつもの過ち、彼らの行く末を決めることになった数々の出来事が綴られています。登場人物たちがこれまで頑なに守ってきた秘密が暴かれることによって、闇に包まれていた悪夢も蘇ります。それは夜見る夢などではなく、彼らの心の傷をえぐり出し、たとえ明るい日差しの中にいても容赦なく付きまとう悪夢なのです」と物語の複雑性について語り、「このドラマには、人間の暴力性のほかに、逆境、恥、憎しみなどに直面した時、それらに屈したことで受けた惨い扱いなどが描かれています。しかし大部分に描かれているのは、我々もかつては子供だったこと、そして、惨い扱いに直面しどんな大人になったのかということです。そこには真実から目を背けるために受け入れてしまった歪んだ依存心、嘘、誤った信念などが描かれているのです」と打ち明ける。

さらにドランはフランスのメディアにて、「私は、映画よりもテレビの方が好きなんだと思います。TVシリーズを作る事の方が自分にとっては自然だと言ってもいいくらいです。時間をかけてシナリオを構築していくのは、とてもシンプルで気持ちのいいものでした。もしそうだとしたら、私は映画の監督というより、ショーランナーですね」(仏映画誌/Premiere)とTVシリーズとの親和性を率直に語り、一方で「『ロリエ・ゴドローと、あの夜のこと』は私にとって誇りです。ただ、今は同時に空虚さも感じています。この作品に全身全霊を捧げ、そしてついに私の全てを語り尽くしてしまったんです。だから今の私にとって必要なのは、長い休みと変化、それに静寂や休息、プライバシーだと思っています。」(仏国営ラジオ/France Inter)、「友人や家族との親密な時間を過ごしたいです」(Premiere)と、なんとまるで引退を示唆するかのような真情を吐露している。

『グザヴィエ・ドラン』ディレクターズ・ノート全文

私はずっとジャンル作品が大好きでしたが、これまではどちらかといえば母親と息子の親子関係、家族間の確執、疎外された人々といったテーマを中心にしてきました。人は自分が知っていることを描くものだと言われますが、10年の月日を経て、私自身も変わっていくのを感じていました。ですから、性的暴行を受けたひとりの少女が30数年後に家族のもとを訪れる姿を描いたミシェル・マルク・ブシャールの舞台『La nuit où Laurier Gaudreault s’est réveillé(原題)』を観劇した時、まさに自分のやりたいことが目の前に繰り広げられていると思いました。ミステリーとホラーが融合した家族ドラマを観ながら、1時間もたたないうちに私はすでにこの物語のシリーズ化をイメージしていたのです。舞台で描かれているすべてのエピソードや過去と現在の結びつけ方をスクリーンでどう描けばいいのか思い描いていたのです。さらに結末に大きな衝撃を受け、自分の次回作にこの作品以外は考えられないと確信したのです。

子供の頃に観ていたティーンドラマや初めてひとり暮らしをしたアパートで貪るように見ていた数々の映画の中でも、ホラーやスリラーはいつも私を夢中にさせてくれました。折に触れて自分も思い切って挑戦してみようかと思いましたが、当時の自分はまだ一歩踏み出す自信を持てずにいました。

しかし2011年、喪失の悲しみを機に出口の見えない世界に身を置くことになった青年のサイコセクシャルとストックホルム症候群を描いたブシャールの別の舞台『トム・アット・ザ・ファーム』を観て、私はついに舞台作品の映像化を決意しました。この舞台作品がまだ新人の私の挑戦を後押ししてくれたのです。まさにジャンル作品との出会いが私の人生を決める瞬間になりました。これ以後、私は再び映像化の機会を模索し続けていました。そのためミシェル・マルクの別の舞台作品を手掛けるというのは当然の流れのように思えました。

『ロリエ・ゴドローと、あの夜のこと』はホラーとスリラーの要素が強く出ているように見えますが、ヒューマンドラマも描かれています。ラルーシュ家の幸せだった日々、憂鬱な日々、過去のいくつもの過ち、彼らの行く末を決めることになった数々の出来事が綴られています。登場人物たちがこれまで頑なに守ってきた秘密が暴かれることによって、闇に包まれていた悪夢も蘇ります。それは夜見る夢などではなく、彼らの心の傷をえぐり出し、たとえ明るい日差しの中にいても容赦なく付きまとう悪夢なのです。

このドラマには、人間の暴力性のほかに、逆境、恥、憎しみなどに直面した時、それらに屈したことで受けた惨い扱いなどが描かれています。しかし大部分に描かれているのは、我々もかつては子供だったこと、そして、惨い扱いに直面しどんな大人になったのかということです。そこには真実から目を背けるために受け入れてしまった歪んだ依存心、嘘、誤った信念などが描かれているのです。

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作品情報

ロリエ・ゴドローと、あの夜のこと

ロリエ・ゴドローと、あの夜のこと

【配信】 Amazon Prime Video「スターチャンネルEX -DRAMA & CLASSICS-」
<字幕版>2月24日(金)より独占日本初配信開始
【放送】 BS10スターチャンネル
<STAR1 字幕版> 3月6日(月)より 毎週月曜23:00ほか

公式サイトはこちら

監督・脚本・製作・出演:グザヴィエ・ドラン
音楽:ハンス・ジマー、デヴィッド・フレミング
出演:ジュリー・ルブレトン、パトリック・イヴォン、アンヌ・ドルヴァル、エリック・ブルノー、マガリ・レピーヌ・ブロンドー、ジブリル・ゾンガほか

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