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REPORT

英米最大の音楽賞をW受賞した直後の“超貴重”な初日本ツアー

Wet Legがもたらした熱狂空間、圧倒的多幸感とバンドの真価を見せたO-EAST公演

2023.02.17 21:50

Wet Leg(2023年2月15日 Spotify O-EAST公演より)Photo by Kazumichi Kokei

2023.02.17 21:50

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生きる活力をくれた50分弱

ライブは2曲目で早くもキャッチーなシングル曲「Wet Dream」が演奏され、「え? もう?」となったが、この掴みの早さはその後の展開にも効いていた。もちろんこの曲では合いの手の「パンパン」という手拍子をみんなで一斉に。手にロブスターのハサミをつけているファンは……いなかったかな。

「Wet Dream」の演奏が終わると、「コンニチワー、トウキョウ。元気ですか?」と日本語で呼びかけるリアン。照れ気味の声のトーンがかわいい。そしてユルいテンポ感の「Supermarket」に続き、4曲目は唯一ヘスターがメイン・ヴォーカルをとる「Convincing」。ヘスターの歌声はリアンよりも低めなのだが、話すとなるとリアンよりも小さな乙女声になる。リアンにも増して照れ屋な彼女だが、歌って弾く姿はクールで、次のアルバムではもう何曲か彼女のヴォーカルが聴けるといいなと思ったりした。

続いてはスローの「Obvious」。アルバムには収録されていないが、以前からライブで演奏されていた曲で、途中まではほぼリアンの弾き語りに近い形。歌詞も含めて彼女のシンガー・ソングライターとしての資質がよく表れた曲だ。が、終盤近くでドラムが入ると一気にラウドになる。素朴さも味だが、それだけで終わりたくはないのだろう。

そのラウドさを引き継ぎながら、次の「Oh No」でオルタナ感を前面に。この曲では特にバンド力といったものを感じられた。また、次の「Piece of Shit」からは彼女たちがメロディを大事にしていることも伝わった。こういう叙情的なメロの曲が挿まると、ライブに奥行きが生まれる。

日本の印象などを一言二言話し、ベースのエリスが「さっきモスバーガーに行ったんだ」とかなんとかを話し終えると、次の曲はデヴィッド・ボウイ「世界を売った男」のリフを想起させる……というか引用したのであろう「I Don’t Wanna Go Out」。その演奏が終わるとドラムのヘンリーがこう言った。「次の曲は君らに手伝ってほしいんだ」。始まった「Ur Mum」は「I get up」のところでリアンが腕を高く挙げる。そして後半、リアンの「1、2、3……」の掛け声でピタっと演奏がやみ、彼女と観客みんなが大声でスクリーム。叫びながらリアンはステージに膝をつき、ヘスターはというとドラムの傍でステージに横たわっていた。心に抱えた日々の鬱憤を晴らすように思い切り「わぁ~~~~~~~っ」と叫んだ観客たちは、さぞかしスッとしたことだろう。

次の「Too Late Now」ではリアンとヘスターが向き合って、ギターを弾きながらクルっと回る。長い髪がわさっとなびく。ギター音は次第に激しくなり、それでまた楽しそうに笑顔でクルっ。何にも縛られず、自由に音楽を楽しんでいるその感じが本当に最高だ。観客たちの拍手もこの曲の終わりで一際大きくなった。

続いての「Angelica」は、レコードよりもだいぶ激しく、ラウドで、ダイナミックだった。シューゲイザー的な轟音ギターに、力いっぱいのドラム。誰もが曲のなかに引き込まれて恍惚となってしまうほどのバンドアンサンブルだ。そしてその興奮のままに、ラストはデビュー曲にして代表曲の「Chaise Longue」を。「待ってました!」の思いはみんな一緒だっただろう。リアンの「Excuse me」に、観客全員が「What?」と大きく応える。曲の終盤で荒れ狂った大波のように演奏がうねると、フロア全体が横に揺れた。とてつもない熱狂空間。ギターのノイズがひとりひとりの耳とカラダに痺れを与えるなか、5人はステージを去ったのだった。

時間にして50分足らず。アンコールなし。あっというまに終わってしまった感がある。しかし「短すぎるじゃねーか!」という不満の声は恐らく誰からも出なかったはずだし、自分は大満足だったし、会場を出るみんなの顔も火照っていて、幸福そうな表情の人ばかりだった。Wet Legのライブはこれでいいと、そう思えた。この短さも、言うなれば彼女たちのアチチュードであり、方針であり、つまり本気で楽しむための丁度いい尺はこれくらいなのだという主張のようにも感じられた。

無理してプロっぽく振舞うではなく、無理に盛り上げるでもなく、自分たちらしいやり方と温度感で、みんなと一緒に楽しむ/遊ぶ。そんなWet Legのライブを観ていて、仲良しの誰かとバンドをやりたくなった若い子も少なくないんじゃないか。バンドじゃなくても何かしらの表現をしたくなった子は多いんじゃないか。そんなことも考えながら会場をあとにした。


All Photo by Kazumichi Kokei

セットリスト

Wet Leg Japan Tour 2023
2023年2月15日(水) Spotify O-EAST

1. Being In Love
2. Wet Dream
3. Supermarket
4. Convincing
5. Oh No
6. Piece Of Shit
7. I Don’t Wanna Go Out
8. Ur Mum
9. Too Late Now
10. Angelica
11. Chaise Longue

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作品情報

Wet Leg 1stアルバム『Wet Leg』新装盤

『Wet Leg』新装盤ジャケット

『Wet Leg』新装盤ジャケット

Wet Leg 1stアルバム『Wet Leg』新装盤

NOW ON SALE
発売元:Domino/Beat Records
国内盤CD BRC694Z/¥2,200(税込)
国内盤特典:ボーナストラック2曲追加収録
解説・歌詞対訳封入、特典マグネット2種類付属

購入はこちら

収録曲

01. Being In Love
02. Chaise Longue
03. Angelica
04. I Don't Wanna Go Out
05. Wet Dream
06. Convincing
07. Loving You
08. Ur Mum
09. Oh No
10. Piece Of Shit
11. Supermarket
12. Too Late Now
13. It's Not Fun (Bonus Track)
14. It's A Shame (Bonus Track)

Wet Leg 1stアルバム『Wet Leg』

『Wet Leg』ジャケット

『Wet Leg』ジャケット

Wet Leg 1stアルバム『Wet Leg』

NOW ON SALE
発売元:Domino/Beat Records
国内盤CD BRC694/¥2,200(税込)
国内盤特典:ボーナストラック2曲追加収録
解説・歌詞対訳封入

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収録曲

01. Being In Love
02. Chaise Longue
03. Angelica
04. I Don't Wanna Go Out
05. Wet Dream
06. Convincing
07. Loving You
08. Ur Mum
09. Oh No
10. Piece Of Shit
11. Supermarket
12. Too Late Now
13. It's Not Fun (Bonus Track)
14. It's A Shame (Bonus Track)

イベント情報

Wet Leg Japan Tour 2023

Wet Leg Japan Tour 2023

※全て終了
●名古屋公演 ※中止
●大阪公演
2023年2月14日(火) 梅田 CLUB QUATTRO ※Sold Out
OPEN : 18:00/START : 19:00
●東京公演
2023年2月15日(水) SHIBUYA O-EAST ※Sold Out
OPEN : 18:00/START : 19:00
●東京追加公演 
2023年2月17日(金) SHIBUYA O-EAST ※Sold Out
OPEN : 18:00/START : 19:00

Wet Leg Japan Tour 2023

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