2023.02.10 20:30
2023.02.10 20:30
アクションを際立たせる“白黒の世界”
アクションシーンの派手さと対象的なのが、舞台セットのシンプルさ。演出をつとめた堤幸彦は、この作品を描くに当たって「白黒の世界」を選択した。舞台背後に置かれたLEDには水墨画のような線がゆらめきつつ現れ、それがときに荒寺となり、荒野となり、場面の情景を表していく。しかしそれはあくまでも最小限で、なんともシンプル。そのソリッドさが武蔵が追い求めた「剣の道」と通じ、彼の心象風景のようにも思える。
脚本はマキノノゾミ。堤幸彦とは『真田十勇士』や『魔界転生』といった作品でこれまでタッグを組んできたが、今回も彼の脚本の真骨頂とも言える「男同士の関係性と生き様の格好良さ」が堪能できる作品となっている。映画『七人の侍』オマージュか、と思えるような前半のケレン味あふれる展開が、武蔵と小次郎の立ち位置、そして関係性が変わっていくにつれてじわじわと効いてくることとなる
なぜ武蔵と小次郎は巌流島で戦ったのか? いや戦わなくてはいけなかったのか? これまで多くの人の心を惹きつけ、数多の作品の題材となった「巌流島の決闘」だが、「もしかしてこうだったのでは……」と思わせてしまうような「新解釈」。その答えはぜひ、劇場で確かめて欲しい。