2023.02.08 18:00
「RETURN TO THIRD MOVEMENT!」Vol.4(写真:Rui Hashimoto)
2023.02.08 18:00
君たちが喜んでくれたらなんでもいい
そして後半は、アルバム『GOOD DREAMS』のセット。ひねくれたコード感がポップでサイケデリックな「xavier」、そして馬力をあげて「WALKIN’ ON THE SPIRAL」と続けていく。「あまりライブではやっていないけれど、実は自慢の曲なんだ」と紹介されたのは、「フロンティアーズ」。リリースからは20年近い時を経て、こうした再現ライブのような機会があるからこそ知れる、ファンに嬉しい新事実だろう。「天使みたいにキミは立ってた」では、「いま、新曲として書くことはないだろうストレートなラブソング。これを54歳の俺が思い切り歌う」と言って痺れるような歌声を響かせ、かと思うとワイルドなビートとリフがスリリングなデッドヒートを繰り広げるインストナンバー「BAD DREAMS」では山中、真鍋、有江のフロント3人がネックの振りを揃えたシアトリカルなプレイでフロアの興奮をあげる。「このツアー、「BAD DREAMS」がいちばん楽しんだよね」(山中)。だそうだ。
後半のMCではメンバーそれぞれから今ツアーへの思いが語られた。有江は、「僕個人はこのツアーで初めて演奏する曲もあったので。これから普段のライブのセットリストにもまたひょっこり入っていたら嬉しい」と、再発見があった喜びを語る。佐藤は、ツアーファイナルを横浜で迎えることは初めてだというが、じつはthe pillowsとしてはこの会場の近くの公会堂で初のライブをしたことを明かしてくれた。そして真鍋は、「過去の曲しかやっていないのにみなさんが楽しそうで何よりです」といい、このツアーで色褪せない曲たちを作ってきたことを証明できたという。山中は「ひと昔前、この2枚のアルバムを作った。その未来が今だ」と言って、「その未来は今」へと繋いでいく。
ライブシリーズとしてファンは毎回、楽しみにしているツアーだと思うが、バンドにとっても得るもの、再確認できるものが多いのだろう。1989年にバンドをスタートし、オリジナルアルバムの数は20枚を超えるthe pillows。会場には新旧のファンが集っていた感じだったが、このツアーこそ新たなファンに見てほしい、またロックの入口となってほしいライブだと感じた。ラストの「Rosy Head」の、ぶっきらぼうで、それでいて最高なロックンロールを浴びてそう思った。
本編を終えて、最初のアンコールに応え会場には明かりがついたが、観客は一向に帰る気配はなし。手拍子が高鳴るばかりの中、缶ビール片手に2度目のアンコール、さらに3度目のアンコールにも応えたthe pillows。本編のMCで山中が「最近は、君たちが喜んでくれたらなんでもいいんだ」とぽそりと言ったのが個人的にとても印象的だったのだが、the pillowsといえばその音楽性も世の中と向き合うバンドのスタンスもひねくれとイコールのイメージが強いが、思えばずっとリスナーとは正面から向き合ってきた。そのひとつの結果がこうしたツアーが実現することだと思うが、ステージで何度も快哉を叫ぶその姿にロックバンドとして走り続ける矜持を感じた。
セットリスト
the pillows「RETURN TO THIRD MOVEMENT!」Vol.4
2023年1月29日(日) KT Zepp Yokohama
1. Dead Stock Paradise
2. Freebee Honey
3. ターミナル・ヘヴンズ・ロック
4. ファントムペイン
5. モールタウン プリズナー
6. スーパートランポリン スクールキッド
7. ロンサムダイアモンド
8. 昇らない太陽
9. ムーンマーガレット
10. I know you
11. 傷跡の囁き 誰もいないパラダイス
12. Xavier
13. WALKIN’ ON THE SPIRAL
14. フロンティアーズ
15. ローファイボーイ, ファイターガール
16. New Year’s Eve
17. 天使みたいにキミは立ってた
18. オレンジフィルムガーデン
19. BAD DREAMS
20. その未来は今
21. GOOD DREAMS
22. Rosy Head
EN.1
1. Sick Vibration
2. BOON BOON ROCK
EN.2
1. ぼくは かけら
EN.3
1. Blues Drive Monster