2023.02.08 18:00
「RETURN TO THIRD MOVEMENT!」Vol.4(写真:Rui Hashimoto)
2023.02.08 18:00
the pillowsが、2017年に第1弾を開催したアルバム過去作を再現するツアー「RETURN TO THIRD MOVEMENT!」の第4弾を昨年10月にスタート。2023年1月29日にKT Zepp Yokohama(横浜)で最終日を迎えた。
今回のツアーでは、2003年リリースの11枚目のアルバム『ペナルティーライフ』と2004年リリースの12枚目のアルバム『GOOD DREAMS』が全曲披露される。約3ヵ月と長きにわたって全国を沸かせ、そのうち首都圏でも何公演か行なっているが、この最終公演もフロアは満員だ。
SEと同時に大きな手拍子が起こり、山中さわお(Vo/Gt)、真鍋吉明(Gt)、佐藤シンイチロウ(Dr)、サポートの有江嘉典(Ba)が登場すると、歓声も巻き起こる。ライブでのガイドラインも徐々に変化して、声出しも可能になってきた現在。やはりこの、興奮を伝える心からの声があるのとないのではライブのムードも変わるし、バンドはもちろんのこと観客も自ずと高揚する。
アルバム『ペナルティーライフ』から、まずは「Dead Stock Paradise」で幕を開け「Freebee Honey」では山中がギターのネックを客席に向けて勢いよく撃ち放つように快音を響かせ、イントロで歓声が沸いた「ターミナル・ヘヴンズ・ロック」は、キュッと背を丸めて佐藤がタイトなビートを刻み、間奏でステージ先端へと躍り出てロックンロールなリフとフレーズで魅せる真鍋にフロアがコブシを築き上げた。まずはこの3曲を連投して山中が挨拶をすると、フロアから大きく長い拍手や歓声が返ってくる。その景色を嬉しそうに眺めるバンドに、止むどころかどんどんと音量を上げる拍手が、とにかく熱い。「こんなの久しぶりじゃないか」(山中)と口角を上げる姿に、長かったコロナ禍のその先がようやく見えてきたことも感じる。
改めて山中は、今回のツアーが2作のアルバムからの全曲を聴いてもらうライブとなること、また「今夜が終わったら、通常のライブでなかなかやらない曲もあるだろう」と告げ、「1曲、1曲楽しんでいってくれ」と高らかに放って、リズミカルな「ファントムペイン」へと突入していく。ライブ前半はアルバム『ペナルティーライフ』の全曲披露。前もってアルバムを復習してライブに臨んでいる観客もいたと思うが、アルバムでの曲順ともまた違い、さらに2003年当時のバンドのモードとも違うだろう、より大人の余裕というか戯れが感じられるバンド・アンサンブルや佇まいが新鮮に映る。
爆裂なインスト「スーパートランポリン スクールキッド」でコブシや掛け声をあげ盛り上がる観客に、「この曲で盛り上がれる人たちなんだね」(山中)と感心していたが、とにかくバンドのノリが気持ちがいいのだ。メロウなコーラスとともに白昼夢的なメロディを会場に響かせる「昇らない太陽」では、当時のツアーよりもうまく歌えていると思うとも語る。前半のラストはアルバム『ペナルティーライフ』同様に、叙情的でミディアムなロックナンバー「傷痕の囁き 誰もいないパラダイス」で締めくくった。山中は、「『ペナルティーライフ』はしばらくやりたくないな。ギターが俺にしちゃ難しいんだよ」とぼやきつつも楽しそうだ。
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