関根勤のマニアック映画でモヤモヤをぶっ飛ばせ! 第10回
天才ジム・キャリーがとにかく羨ましくなる『マスク』
2023.02.05 12:00
2023.02.05 12:00
ジム・キャリーらしさを感じさせる若手芸人
初めてキャリーを見た時は衝撃的でしたよ。ものすごい人だなって。今までのコメディアン俳優でいうと僕はスティーブ・マーティンが大好きでずっと見ていました。ちなみにマーティンの前はピーター・セラーズが好きでしたね。そしたらキャリーという、もっと動く人が出てきたので「あっ、ニュータイプだ!」って思ったんですよ。僕もコメディアンとして影響を受けましたが、キャリーの後を継ぐ人はいなかったように思えます。今は彼らのように「この人が面白いから映画を見に行こう」って人があまりいないですね。
ただ、今の若手だとジェラードンやネルソンズとかは結構キャリーくらい動きますね。ちょっと違うかもしれないけど、ランジャタイはキャリーっぽい。ネタはぶっ飛んでいるし、動けるし、狂っているし、しつこい。ジャルジャルもうまいですね。だからそう考えるとキャリーの芸当のコメディアンはなかなか生き残っているんですよね。あとはハリウッドザコシショウとか。芸人のみんなも『マスク』は観ているし、好きだと思いますよ。本当にびっくりしましたなあ……こういう台本でいいの?って(笑)。ご都合主義だけど、ああいう映画ってツッコまなくて良いんですよね。『大統領の陰謀』みたいなシリアスな映画だとリアルじゃないと駄目だからツッコむけど、『マスク』は最初からリアルじゃないから良いんです。
僕は映画館には娯楽を楽しみに行くわけですよ。だから、人によって違う考えをお持ちだと思いますが、例えば男女が不倫をしてお互いの家庭が駄目になるって映画を名優が演じていたとしても、それを見せられると「ちょっと待ってくれよ、それ俺の周りの友達の家であったよ」ってなる。もう一回現実を見せられても、って……そういうの嫌なんですよ。だから『マスク』や『アイアンマン』、『ミッション・インポッシブル』ような、“異空間”っていうのかな、自分にない世界がある映画が好きです。僕、あんなところには行けないから。『007』シリーズもそう、美女を抱いたりしてね。我々美女なんて抱けないからさ。日常じゃないところに連れて行って欲しいんですよ。ところがそんな暗い日常のよくある話を映画でされても「勘弁してください」ってなるんです。
キャリーの引退については、燃え尽きちゃったのかな。主演を張る俳優だから、抱えているプレッシャーが違いますよね。それに、年齢的にも昔の動きや自分の満足のいく動きができなくなってくるのでしょう。あと、今は時代があまりコメディ映画を求めてないようにも思います。生粋のコメディって少ないですよね。僕は観たいんだけどなあ。キャリーには、歳もとったからこそ、思い切って渋い作品にも出てほしいです。息子との確執がある不器用な父親で、最終的には息子と分かり合える……みたいな。引退前にそういう彼も見てみたいなって気持ちもあります。ジム・キャリーの作品は映画好きにはぜひ見てほしい。全盛期の作品だと、『マスク』と同じ年に公開された『エース・ベンチェラ』も良い映画だけど、『マスク』の演技よりオーバーなので、拒否反応を起こす人がいるかもしれない(笑)。まだ『マスク』を観ていない方は、ぜひこちらからキャリー作品を楽しんでほしいです。