“奇跡の作品”と語る集大成作が1月20日に全国公開
小沢仁志が還暦に誓う過去へのリベンジ 『BAD CITY』で目指した究極のエンターテインメント
2023.01.20 17:30
2023.01.20 17:30
昔あった映画の姿だから響くんじゃないかな
──濃密なぶつかり合い、拳だけじゃなくて言葉をもって拳を振るっている感じがしました。
観ている人たちが、「あの殴り合いすごいけど、殴り合いながら会話してるみたいだ」って言ってくれるとうれしいよね。役者も、これだけのメンバーで集まって殴り合いする映画とか、経験が無かったりするから。本作では、演者がものすごく生き生きとして喜んでそれをやっている。しかも吹き替えなく。そういう息遣いとか、想いが画に表れて、役に乗っかってるんじゃないかなって。
──言ってわからないから、その先にある肉弾戦というか。
そこまでの持っていき方がすべて乗らないと、観てて拒否しちゃう人は拒否しちゃうから、そこまでの物語の展開とかが大事だと思うし。フルボッコにしたのは、この映画が公開されて同業者が観て、プロデューサーとかが皆「やっていいんだ……」となって欲しい。わかる?(笑)コンプライアンス関係ないし、セーフティーないじゃん。テレビ局主導のキャスティングだと、もうちょっとメジャーなのが来て、怪我したら困るから全部アクションは吹き替えじゃん。それじゃこんなの生まれないもんね。まず、やらしてくれないだろうね、どこも(笑)。
──だからこそ、ワクワクしながら拝見させてもらいました。
今はもうコンプライアンスとかうるさすぎて。こういうのが響くんじゃないかな。昔あった映画の姿だから。テイストも昭和感満載じゃん。
──(『マンハント』、『ベイビーわるきゅーれ』などのアクション監督である)園村(健介)さんが監督とアクション監督を務められ、得体の知れない強敵としてTAK∴さんが佇んでいる。アクションをやるとなると、園村さんとTAK∴さんにはお声がけしないと、という意思があったんですか。
園村はヤマ(山口祥行)の紹介で。俺が脚本を書いたから、「小沢さんが監督やればいいじゃん」って言われたけど、それじゃ意味がない。「誰かいないか」って言ったら紹介されて。アクション監督としては知ってたけど、それから園村が監督として初めて撮った『HYDRA』も観て。こういうところばっかりにアクション出来る奴らがいる。やっぱりテレビ主導だと名前優先で、動ける奴らは裏のスタントで雇われる。でも、動ける奴がやればいいだけの話じゃん。だからでかい祭りを打ってあげて、その中でメジャーで勝負していくのがいいんじゃないって。三元(雅芸)も、TAK∴も。
──この映画、コンプラを気にしてなくて素敵だなと思ったんですが……まさにその一つとして、誰にとってもサービスではない冒頭の入浴シーンが。
はは!(笑)自分で台本書いてて、冒頭でメインタイトル出るまでがすごい好きで。タイトル出るまでに誰が悪いか一発でわかる(笑)。「映画開始16分目でメインタイトルが出るまで主役出てないけどいいの?」 って言われたけど、「これが面白いからいいんだって」って言って。誰が主役なんだろうって忘れたころに、檻から出てくる獣みたいな(笑)。そういうのもいいと思って。説明いらないじゃん。で、刑事たちが現場検証やりに来てさ、この捜査をやっていくんだなって、めっちゃわかりやすくない? 余計なことは考えないで、単純でかつ明快で、ちょっと笑えて泣けてすげえっていうのが究極のエンターテインメントだと思ってるから。
──満を持して虎田誠の登場の時は、諸手を挙げる喜びというか。あそこまでの引っ張り方は、映画好きの涎を垂らさせる、うまい作り方だなと思いました。虎田の名前は寅年とかけてのネーミングですか?
キャラの名前考えるのが一番めんどくさいんだよ。ひどい時は、俺の監督作品で「男」「女」「殺し屋」みたいな、役名なかった時もある。名前ってなくても成立するでしょ。なのにキャストがいっぱいだと名前で詰まる。(リリー・フランキー演じる)五条亘だって、最初は「さとる」だったの。でも「五条悟」って漫画の『呪術廻戦』でしょ。だから、「小沢さん名前変えたほうがいいよ、思いっきり『呪術廻戦』だよ」って言われて(笑)。俺が虎なんだから、勝矢は熊で、新人はウサギで、三元は猿でいいんじゃない?って。監督が、「それはあからさまなんで自分が考えます」って言ってきたから、「じゃあどうぞ」って。
──虎、熊、ウサギ、猿って構想もあったんですね。
あったんだけど、最終的な名前は監督の趣味だね。
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